Final Destination

ファイナル・デスティネーション  (2000年4月)

「X-ファイル」出身のジェイムス・ウォンが演出する新しいタイプのホラー。高校でフランス語を習っているグループが、引率の先生と共にフィールド・トリップ (要するに、実地のフランス語の研修と題した修学旅行のこと) に出発する。しかし今まさに飛行機が飛び立とうとした瞬間、飛行機が爆発炎上するのをリアルに感知したアレックスはパニックを起こし、結局彼と騒ぎに巻き込まれた親友のトッド、引率の先生ら総勢7名をJFK空港に取り残したまま、飛行機は離陸する。


そして‥‥もちろん飛行機は爆発炎上するわけだが、不思議なことはこれで治まらない。一人、また一人と残された7人も次々と異様な事故に巻き込まれて死亡する。アレックスはこの理由を、彼らは元々死ぬ運命にあったから、とにかく何があろうと彼らは死ぬことを運命づけられているのだと結論する。そして彼らの死ぬ順番が、彼らが飛行機の中で座っていた位置に関係していることを発見する。しかし一度は死ぬ運命だったものを免れたわけである。アレックスは死を騙し通すことができるに違いないと確信、何としても生き延びようと決心する‥‥


まったくホラーというジャンルも大変だ。次から次へと新しい悪役を発明しないといけない。今回その大役を担ったのは、なんと「死」そのもの。姿形の見えないその死を相手に生き延びようとする主人公たちを描く。無茶苦茶な設定に見えてこれがある程度説得力を持っているのは、パリに向けて飛び立った飛行機が爆発炎上、乗客乗員全員死亡するという事件の発端が、実際にパリに向けてJFKより飛び立ったが、不慮の事故により爆発炎上、フィールド・トリップのために乗り込んでいた高校生を含め全員が死亡したという、2年前のTWA800便の事故の記憶がまだ人々の頭の中にこびりついているからだ。本当の事件の関係者はこの映画を見ることに耐えられないと思うが、実際に起こった事故というこのマクラがあるから、映画が支離滅裂になる印象を防いでいるのも事実である。


おかげで製作陣は「死」という後ろ盾を得て、どんな常軌を逸した死に方/殺し方であろうとも理由付けが得られるという大義名分を獲得してしまった。それから後はやりたい放題、だって相手は「死」なんですからね、どんな手段だって使えるわけだ。そのおかげで映画はメリットとデメリットを両方得ることになったと言える。まずデメリットは、どうしてもここである程度の嘘臭さを導入してしまうこと。いくら実際の事故を冒頭に持ってきて観客に現実味をアピールしても、この「犯人」はリアルさという点ではやはり説得力に欠ける。一方のメリットとしては、なんといっても登場人物がいつどこでどういう理由で死んでも構わないことから来る緊張の持続が挙げられる。もちろんすべてのホラーはそれが怖さの大元になっているわけだが、今回は本当にいつどこで登場人物が死ぬかわからないため、年季の入ったホラー・ファンでもあっ、と声を出してしまうシーンがあることを受けあっておこう。


登場人物がどこでどういう風に死んでもいいわけだから、こちらとしてはどうしても先を読もうとする。誰かがレコードをかけると、このレコードが唸りを上げて飛んでいって首を掻き切ってしまうんじゃないかとか(これが現実に飛行機事故で死んだジョン・デンヴァーのレコードというのも念が入っている)、キッチンに立つと包丁が飛んでくるんじゃないかとか、ガス・コンロの火を点けようとすると爆発するんじゃないかとか、とにかくいつ死が襲ってくるかわからないため、結構始終緊張して画面を見ていた。ほとんど強引と言えなくもないが、観客をはらはらさせることを持続させるという点では、この映画は成功していると言える。いやあ、本当は登場人物がいつどこで死んでしまうかを大声で喋って、そのシーンをつぶさに説明したい誘惑に駆られるのだが。まあ、それはルール違反だから見てのお楽しみということにしておこう。


主人公アレックスに扮するデヴォン・サワは、「キャスパー」、「Dearフレンズ」でクリスティーナ・リッチと共演している。私としては96年のファミリー・チャンネル(現FOXファミリー)が放送したTV映画「ナイト・オブ・ツイスター」以来なのだが、その時は本当に美少年という感じで将来が楽しみだったのに、残念ながら別に格好よくも何ともない普通の少年になってしまった。






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