Fight Club

ファイト・クラブ  (1999年10月)

実は「Fight Club」を見る予定はまったくなかったのである。まず2時間15分という上映時間。私は余程のことがない限り2時間を超える映画には距離をとることにしている。だいたい2時間を余る映画のほとんどは監督が編集で切りきれないだけで、観客の目から見ると、長い、ここはいらない、あそこもいらない、切れよ、と思うものばっかりでうんざりしているのだ (私は「タイタニック」も1時間は切れると思っている)。


それにデイヴィッド・フィンチャーの新作は見てみたいが、頭の悪そうな役をやるブラッド・ピットを見るのはうんざりだ。だいたい、「12モンキース」のピットを見たファンは、全員ファンをやめて然るべきだと思うのだがどうだろうか。「カリフォルニア」とか「トゥルー・ロマンス」もそうだったが、ワルぶるピットはただ阿呆に見えるだけで、「汚い」という印象しかない。「リバー・ランズ・スルー・イット」のピットなら応援したいと思うし、「セブン」も悪くないと思うのだが、どうも本人はタフ・ガイや汚れ役にどうしようもなく惹かれているようだ。それともあと10年もすればそういうのが身について見られるようになるのだろうか。


そう思っていたら、公開前から雑誌に載る評がこれまた悪い。ほとんどぼろくそに言われているのである。これでほとんど見る気が失せた。それで昨日は今やっている侯孝賢特集を見に行こうと思って、わざわざマンハッタンのリンカーン・センターにあるウォルター・リード・シアターまで足を伸ばした。そしたら、切符が売り切れなのである。単館上映だからその可能性を考えなかったこちらが甘いといえば甘いわけだが、しかし、そんな‥‥と愕然としてしまった。劇場に向かいながら、直前の回が終わって出てくる客が異様に多いな、とちょっと不安にはなったのだが、混みはしても売り切れになるとはまったく考えていなかった!そういえばニューヨークにはチャイニーズは多いし、彼らが見にきても不思議はないか、予約しておけばよかった‥‥と思ったのも後の祭り。泣く泣く3回もサブウェイを乗り継いで家に帰ったのだった。侯孝賢は「非情城市」以来見てないので、とても期待していたのに‥‥とにかくがっかりである。


というわけで、とにかく週末映画を見る、という気分になっていた私は、何を見るか選択を迫られることになった。それで今週始まったマーティン・スコセッシ監督、ニコラス・ケイジ主演の「Bringing Out the Dead」を見に行こうとしたら、女房が私も見たいから別のにしてと言う。「Bringing...」を上映している映画館は車でないと行けないので、運転ができない彼女は、それは来週見に行くことにして、今回は一人で別のを見に行ってくれというわけである。私が「Fight Club」を見に行ったのは、以上のような偶然が重なった結果なのであった。でもなければ見ずに終わっていただろう。


ところで、ではどうだったかというと、それが結構面白いじゃないか。ブラッド・ピットの方が注目されているが、実質上の主人公はエドワード・ノートンで、彼の方が多く画面に出てくるので、タフガイ・ピットにあまり苛々せずにいられる。不眠に悩まされるコーネリアス(ノートン)が、セラピー・グループに中毒し、ヘレナ・ボナム・カーターに出会ってまた不眠に悩まされるようになるまで辺りの次にどうなるかわからない展開は、話が本筋に入るまでのマクラとしては長過ぎる嫌いがあるのを除けば、非常によくできていると思う。


セラピー・グループで会うロッカーのミートローフも、おなかに詰め物をして怪演しており、楽しめる。飛行機の中でのピットとの出会いは普通すぎるかなとも思ったが、その二人が「ファイト・クラブ」を立ち上げていくまでの展開は面白い。そして最後の捻りも、途中で読めてしまったがなかなかのできである。効果的なCGの使い方も私の好みである(最後のシーンを別にして)。特に「一人ファイト」(見た人ならわかる)で頑張るノートンには頭が下がりました。総評: あと30分切ってくれ。そうすればもっと面白くなったのは間違いないだろうに。


実は今回、「Fight Club」と同じくらいかそれ以上、予告編が粒揃いで一番エキサイトした。ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演の中世ホラー「Sleepy Hollow」、リュック・ベンソン監督、ミラ・ジョヴォヴィッチがジャンヌ・ダルクを演じる「The Messenger」、SFXの使い方が「Haunted」より印象的に見えるホラー「The House on Haunted Hill」、次いでにちょっと太ったレオナルド・ディカプリオの新作「The Beach」と、予告編はどれも皆面白く見えて当たり前なのだが、今回に限っては本当に面白そうだった。いや、年末にかけて期待大だな。






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