放送局: NBC

プレミア放送日: 8/31/2004 (Tue) 21:00-21:30

製作: ドリームワークス・アニメーション、NBC

製作総指揮: ジェフリー・カッツェンバーグ、ジョン・ポラック、ジョナサン・グロフ、ピーター・メールマン

製作: ロン・ワイナー、メアリ・サンデル・ケン・ツムラ

クリエイター: ジェフリー・カッツェンバーグ

監督: マーク・リスリー

脚本: シェリル・ホリデイ

編集: C. K. ホーネス

音楽: ハリー・グレッグソン-ウィリアムス

アート・ディレクター: マイケル・ヘルナンデス

声の出演: ジョン・グッドマン (ラリー)、シェリル・ハインズ (ケイト)、カール・ライナー (サーモティ)、オーランド・ジョーンズ (スナック)、ダニエル・アンドレア・ハリス (シエラ)、ダリル・サバラ (ハンター)、ジュリアン・ホロウェイ (ジークフリード)、デイヴ・ハーマン (ロイ)、リサ・クドロウ (フー-リン)、アンディ・リクター (ネルソン)


物語: ライオンのラリーは愛する妻のケイト、娘のシエラ、息子のハンターと共に、マジシャンとして著名なジークフリード&ロイがラス・ヴェガスに建てた人造ジャングルで暮らしている。ジークフリード&ロイのマジック・サーカスで働くなど、勤勉で義理堅いラリーだが、時にショウ・ビジネスを引退した義理の父のサーモティがふっかける難癖や、友人のスナックとの騒動に巻き込まれ、さらには教育問題など、心休まる時がないのだった‥‥


_______________________________________________________________


今春のUPNが編成して失敗した「ゲーム・オーヴァー」以来のネットワークによるプライムタイム・CGIアニメーションは、「シュレック」のドリームワークス製作による、ライオン一家が主人公のお話だ。とはいえこれは「ライオン・キング」の焼き直しではない。そうではなく、ヴェガスでのホワイト・タイガーを使ったマジック・ショウで知られる、ジークフリード&ロイのマジシャン・ペアと同居するライオン一家の話なのだ。


最初この番組の話を聞いた時は、いったいどういう番組なのか想像もつかなかった。夜8時台のアニメーション、しかもライオンが主人公というのだから、当然子供/家族向けアニメーションと誰もが考えるのは当然だろう。誰だって真っ先に連想するのは、「ライオン・キング」に決まっている。しかし製作はディズニーでなくドリームワークスだ。ということは「ライオン・キング」の真似はできないだろうから、まあ、少しくらいひねってはいるだろう、とまあ、せいぜいがそれくらいにしか考えていなかった。


そしたら、その後続々と入ってくる新しい情報によると、このライオン一家、なんでもショウ・ビジネスの片棒を担ぎ、ラス・ヴェガスであのジークフリード&ロイのマジック・ショウに出演し、金持ちの二人がヴェガスに建立した人造ジャングルで生活しており、その中に住むその他諸々の動物たちとの交流を描くという、なにやらよくわからないとんでもない話らしい。それにしても、なぜジークフリード&ロイなのか。


実は、ジークフリード&ロイは、アメリカではかなり人気があるのだ。昨年、ロイがヴェガスの舞台に出演中、お馴染みのペットのホワイト・タイガーに噛みつかれ緊急入院、一時は命にかかわるという惨事になった。その時のニューズ報道を見て、私はジークフリード&ロイが私が思っていたのよりも全然人気があることに気づいた。多くのファンが手に手に蝋燭を持って彼らのショウがかかっているホテル前でヴィジルを行っているし、ニューズ、特に芸能ニューズ関係での時間の割き方が他のニューズなんかとは全然較べものにならない。ロイはその後退院したけれども今だに後遺症が残り、結局ヴェガスの定番ショウであった二人のマジック・ショウは、公演を続けていくことができずにキャンセルされた。


「ファーザー・オブ・ザ・プライド」では、そのジークフリードとロイがなぜだかキャラクターの一人として登場する。主人公のライオンのラリー一家が住んでいるところが、ジークフリード&ロイが建設した人造ジャングルということだから、よく考えれば別に彼らが出てきたって不思議はないのだが、それにしたってこの舞台設定はよくわからない。第一この番組はアニメーション・シットコムであり、誰もが大怪我をしてまだリハビリ中と知っているロイを笑い飛ばすには無理があるような気がする。また、だったら当然本人たち、少なくともジーグフリードの方は本人が声を吹き替えてもいいだろうに、ちゃんと声優が彼らの声を担当しているのだ。


とまれそのジークフリード&ロイの人造ジャングルには様々な動物たちが住んでいる。ここでも、だったら人々がすぐに思い浮かべるのはライオンではなく、彼らのショウにも登場するあの有名なホワイト・タイガーだろうに、なんで主人公はライオンなのか、その辺もよくわからない (ホワイト・タイガー自体は自惚れ屋の脇役として登場する。) 要するにこの番組、舞台設定に関しては、なんか疑問だらけの番組なのだ。イメージとしては、ジークフリード&ロイの舞台に出演する「ライオン・キング」ってな感じか。


さて、その主人公のライオンのラリー一家は、優しい妻のケイト、年頃の娘シエラ、やんちゃな息子のハンターで構成される。ラリーの声を担当するのはジョン・グッドマンで、どこから見ても適役。ケイトはHBOの「カーブ・ユア・エンシューシアズム」で最近とみに評価の高いシェリル・ハインズで、ケイトの父で、昔舞台でかなりの評判をとり、今では気難しい老いたライオンというサーモティをカール・ライナーが吹き替えている。ラリーの親友スナック (たぶんイタチだと思うが確証はない) を担当するのはオーランド・ジョーンズ、ホワイト・タイガーの気取り屋のヴィクトリアにはウェンディ・マリック、パンダのフー-リンにリサ・クドロウと、なかなかキャスティングのポイントは高い。


プレミア・エピソードでは、もてないメス・パンダのフー-リンがカン違いしまくって、同じパンダのオスで、フー-リンに気はあるが冴えないネルソン (声はアンディ・リクター) は歯牙にもかけず、異人 (動物) 種間恋愛に目覚めてしまうという、なかなか際どいシチュエイションを描く。実際この番組、見ていると果たして子供が理解できるかどうかという微妙なギャグや危ないギャグ、あるいは意図的にピンぼけのギャグがかなりある。子供にはちと難しすぎるんじゃないのか。


つまり、「ファーザー・オブ・ザ・プライド」は、表向き子供/家族向けアニメーションの装いをまとってはいるが、実はそうではなく、これを本当に面白いと思えるのは大人の方だろう。視聴率がちと低迷しているのは、この辺のマーケティング/プロモーションに失敗しているからじゃないのか。この番組は午後8時台ではなく、10時台に編成された方がコアのファンを獲得できたんじゃないかというのが私の意見だ。まあ、確かに「ザ・シンプソンズ」も午後8時台の放送だが、こちらの方がかなり際どいという気がする。


それにしてもラリーの声を担当するグッドマンは、このほど放送が始まったCBSの新シットコム「センター・オブ・ザ・ユニヴァース」でも主演している。かけもちだと忙しいだろうに、両番組共続いてもやっていけるのか、他人事ながら気になったりしていたのだが、その「ユニヴァース」のプレミア・エピソードを見て、少なくともこちらが生き延びる可能性はないことを確信した。グッドマンには「プライド」の方で頑張ってもらいたい。





< previous                                    HOME

 

Father of the Pride

ファーザー・オブ・ザ・プライド   ★★1/2

 
inserted by FC2 system