Fantastic Four


ファンタスティック・フォー  (2015年8月)

ファンタスティック・フォーは、マーヴェルやDCコミックスその他のスーパーヒーローたちと較べ、微妙に立ち位置が違う。「アベンジャーズ (The Avengers)」や、「X-メン (X-Men)」のように、他にもそれぞれが特殊な力を持つスーパーヒーローたちの寄せ集め集団は存在しており、その点ではファンタスティック・フォーも特殊な存在ではないようにも思える。しかし彼ら、正確にはリーダー格のリードが手に入れる、手足が自由に伸び縮みするという視覚的にけったいな能力が、彼らを一般的なスーパーヒーローと呼ぶのをためらわせている。


要するにリードのスーパーパワーは、「ONE PIECE」のルフィと同じだ。マンガとして見ると、ある程度はギャグの「ONE PIECE」において、ルフィの手足びよーんは効果がある。これはマーヴェル・コミックスにおいても同様だろうと思う。要するに、手足びよーんは一瞬の絵で状況を現すマンガではそこそこの視覚的インパクトがあって話に貢献するが、連続映像媒体として見せるTVや映画では、その異形さが前面に出過ぎてしまい、どうしても格好いいとは形容しづらくなる。どう見ても正統派のスーパーヒーローとは言えないのだ。既に前シリーズで、リードはその能力を気持ち悪いなと仲間から言われていた。


そのため、10年前の2005年に公開されたその前回の「ファンタスティック・フォー」は、このヴィジュアルの違和感を逆手にとって、この手のジャンルではほぼ唯一と言える、コメディ・タッチのスーパーヒーローものになっていた。トビー・マグワイアが主演した「スパイダーマン (Spiderman)」も笑わせるシーンがそこそこあったが、とはいえその頻度は「ファンタスティック・フォー」の比ではない。現アンドリュウ・ガーフィールド版の「スパイダーマン」では、コメディ・タッチはほとんど消えている。


さらに旧「F4」シリーズの第2作目「銀河の危機 (Rise of the Silver Surfer)」では、エイリアンがサーフボードに乗っているという奇抜な設定があまりにも常軌を逸していたため、いくらなんでもこれはあんまりだと思って、劇場では見なかった。後でTVで見たらギャグでもなんでもなく、まともなエイリアンだったのだが、いずれにしても、「F4」は一般的なスーパーヒーローものとは一線を画する。通常この手のスーパーヒーローものは三部作になるのが一般的だが、それが二作で終わったのも、なんか尻切れとんぼみたいな感じがする。


今回の新「F4」は、ほぼ一切のギャグを排した作りになっている。ということは、作品をシリアスなスーパーヒーローものとして提出するためには、主人公格のリードがスーパーパワーを披露するシーンを減らさなければならないことを意味する。手足びよーんをやり過ぎると、ギャグにしかならないからだ。しかしそれは彼が活躍する機会を減らすことになる。結果としてリードは、あまり活躍しないリーダーという位置に甘んじることになった。それが話としてはあまりうまくないのは言うまでもない。演じているのが、「セッション (Whiplash)」のスーパーシリアスなドラマーを演じたマイルズ・テラーであるだけに、なおさら手足が伸びると、ギャグでもない、かといってスーパーパワーとも言い難い、収まりの悪い違和感がつきまとう。


透明人間になるスーも、前作ではジェシカ・アルバが演じてほんのりお色気的なコメディ・タッチが印象的だったが、今回はあまりコメディとは縁がなさそうなケイト・マラが演じることで、まったくコメディの印象を排している。要するに今回は、そういうシリアスなスーパーヒーローものの確立を目指している。


私としては、手足びよーんをいつかは出さざるを得ないのなら、ここはシリアスなスーパーヒーローものを目指すというよりも、「ゲゲゲの鬼太郎」の一反木綿みたいな、ホラー的な乗りを狙った方がよかったのではないかと思う。透明人間や燃える男、岩石男等、「F4」はどう見てもスーパーヒーローものというよりも、妖怪ヒーローものに近い。あるいは「妖怪人間ベム」か (これまた我ながら古い。)


「F4」がなんかイマイチ、と思っていたのは私だけではなく、興行成績の不振という形でも現れている。一方、それでも「F4」は既に再来年公開予定で続編製作が決まっている。要は本編公開前からもう一本作ると決めてたんだろう。またシルヴァー・サーファーみたいな奇抜なキャラクターを出すのなら、それこそ思い切った改革案で、逆にこちらの度肝を抜くような作品が作れないものかと期待する。











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リード (マイルス・テラー) は幼少のみぎりからテレポーテーションの実現に取り憑かれており、幼馴染みのベン (ジェイミー・ベル) と共に、ガレージで研究を重ねてきた。しかし個人の設備と資金力には限界があり、どうしてもあと一歩というところで実験は成功しない。しかしある時、研究の発表会に訪れたストーム教授 (レグ・キャセイ) が援助を申し出る。ストーム教授の二人の子供スー (ケイト・マラ) とジョニー (マイケル・B・ジョーダン)、そしてチーム・リーダーのヴィクター (トビー・ケベル) らと共に、実験は一挙に前進する。サルを使った実験ではどうやら異次元へのテレポートに成功する。次は自分たちがテレポートする番だとリードは興奮するが、しかしスーパーヴァイザーのアレン博士 (ティム・ブレイク・ネルソン) は、人間を使う最初の実験にはNASAの宇宙飛行士を使うつもりでいた。リードたちはどうしても自分たちが開発したマシンを一番最初に利用したくて、こっそりとマシンをスタートさせる。リードたちが飛ばされた異次元の世界では、何やらよくわからない緑色の流動体のようなものが周りにエネルギーを満たしていた。その世界が振動を始め、リードたちは元の世界に帰ろうとするが、ヴィクターは間に合わず、その世界にとり残される。しかもリード、ベン、スー、ジョニーの4人は、それぞれに身体的に大きな変化が生じていた‥‥


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