放送局: CBS

プレミア放送日: 4/9/2000 (Sun) 21:00-23:00

製作: Maysville Pictures/メイズビル・ピクチャーズ

製作総指揮: ジョージ・クルーニー、パメラ・オース・ウィリアムス、ローラ・ジスキン

共同製作総指揮: ウォルター・バーンスタイン、ハーヴィ・ホイーラー

製作: トム・パーク

監督: スティーヴン・フリアース

ライヴ監督: マーティ・パセッタJr.

脚本: ウォルター・バーンスタイン

撮影: ジョン・アロンゾ

出演: ジョージ・クルーニー(グレイディ大佐)、ノア・ワイリ(バック)、リチャード・ドレイファス(大統領)、ハンク・アゼリア(グロテシェル教授)、ブライアン・デネヒー(ボーガン将軍)、ハーヴィ・カイテル(ウォレン・ブラック将軍)、ドン・チードル(ピアース中尉)、ジェイムス・クロムウェル(ゴードン・ナップ)、サム・エリオット(トム・ラスコブ議員)、ジョン・ディール(カシオ大佐)、ノーマン・ロイド(スウェンソン防衛庁長官)、ウィリアム・シミトロヴィッチ(スターク将軍)


物語: 60年代の冷戦時代。国境を越えて侵入してきた未確認飛行物体 (UFO) の偵察のために飛び立った米空軍爆撃機に、システムの故障によりモスクワを攻撃せよとの指令が下る。その機に格納されているのは、一発でモスクワを破壊することのできる超強力の水爆だった。2人のパイロットは一路進路をモスクワに取る。緊急連絡を受けた大統領は機の撃墜命令を下すが、しかし航行継続距離の限界まで追った友軍機は、機をとらえきれないまま燃料を消費しきって海に落ちてしまう。大統領はホットラインでクレムリンを呼び出すが、ソ連はこれをアメリカのなんらかの策略と見ていた。


機を撃墜するためにソ連はアメリカの最高機密である爆撃機の性能の公開を求め、今度はアメリカが、これはソ連が情報を入手するためになんらかの妨害工作を行っているのではないかと疑い始める。今こそがソ連を叩く絶好の機会であるというタカ派が口を出し始め、穏健派と衝突する。ソ連の譲歩により、ソ連領域内での妨害電波が解かれ、大統領は直接パイロットに連絡をとるが、敵の撹乱戦法に対処するため、パイロットはいったん指令が下った後はすべてのどんな連絡をも無視するように教育されていた。米大統領はソ連と戦火を交える意志のないことを証明し、事態が壊滅的な第3次世界大戦に進むことを防ぐために、もしモスクワが破壊された場合、その代償としてニューヨークに水爆を撃ち込むと約束する。今や爆撃機は帰還可能な地点(フェイル・セイフ)を超え、人類史上最悪の事態が目前に迫っていた‥‥


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Fail Safe 「未知への飛行」は、1962年にハーヴィー・ホイーラーとユージーン・バーディックが上梓した軍事スリラーのベストセラーである。64年にシドニー・ルメット監督、ヘンリー・フォンダ主演で映画化され、同じ年に製作されたスタンリー・キューブリックの「博士の異常な愛情」と共に、この時代を代表する、冷戦を主題とした映画のクラシックになっている。今回のTV版「未知への飛行」はその映画のリメイクとなるわけだが、本家と同じく白黒撮影を使用し、上下に黒枠を入れたレター・ボックス・ヴァージョン、その上それを生放送するということで注目を浴びた。TVドラマの生放送というのは、時に単発でないこともないのだが、基本的に60年代以降はほとんど例を見ない。CBSとしては61年の「プレイハウス90」以来39年ぶりである。


他局に目を移すと、97年(98年だったかな?)に、現在TVドラマとして最強の人気を誇るNBCの「ER」のシーズン・プレミアで1時間の生放送があった。この時は東海岸と西海岸で3時間の時差があることを考慮して、生放送を2回するというスタント放送が行われた。日本とかの外国で放送した時は、いったいどっちの方を放送したのだろうか。因みに今回の生放送では、東海岸向け放送が生放送で、西海岸向けの放送ではその時の録画が放送されている。


今回「未知への飛行」で製作総指揮を務めているジョージ・クルーニーが、自身が主演していた「ER」の生放送を強力に推したことはよく知られている。両親が芸人のクルーニーは、幼い頃から両親の手伝いを通じて生放送主体のTV放送をよく覚えていて、ドラマの生放送が将来のTVを救う唯一の鍵であると公言して憚らない。製作費と出演スターに雲泥の差があるTVドラマが映画に対抗するには、TVができて映画にはできないこと、つまり生放送しかないというのである。TVと映画の両方をよく知っているクルーニーのことだから発言に重みがある。そして、この時の「ER」の生放送が失敗であったといって憚らないのもまた、クルーニーである。カラー・バランスとかなってなかったし、とにかく「単純にうまくいかなかった」と言っている。


実際、私は結構「ER」を見ているのだが、この時の「ER」が一番面白くなかった。TVで久しぶりの生放送ということで話題にもなり、期待して見たのだが、クルーニーの言う通り、ただすべての点においてうまく行ってなかった。どこぞのドキュメンタリー製作グループがERの日常を取材しており、画面に映っているものはその取材グループが撮った映像であるという設定で、万一失敗した時のために逃げの口実を作っておいたのがそもそもの間違いである。おかげでそのために、生放送をする時の醍醐味である緊張感や臨場感といったものに乏しく、ただのつまらないドラマになってしまった。これに一番がっかりしたのが、他ならぬクルーニーであっただろうというのは想像に難くない。それ以来クルーニーは、汚名挽回の機会を虎視眈々と狙っていた。それがこの「未知への飛行」である。


クルーニーはモスクワを爆撃する戦闘機のパイロット、グレイディ大佐として出演も兼ねている。新作映画「パーフェクト・ストーム」の撮影やこの番組の製作にかかりきりだったクルーニーは到底出演までこなせるほど余裕はなかったのだが、CBSの社長レスリー・ムーンヴェスが番組製作を許可する交換条件として出したのがクルーニーが出演するということだったため、役の大きさの割りには最も出番の少ないパイロットということで落ち着いた。副パイロットのピアース中尉に扮するのは、クルーニーの親友であり、現在ブライアン・デ・パルマの「ミッション・トゥ・マーズ」が公開中のドン・チードル。


実力を試すいい機会であり、やり甲斐もある生放送というのは俳優にとって堪えきれない魅力であるようで、その他にも多くの知名度のある実力派俳優が、ギャラを度外視してこの番組に参加している。ほとんどが映画では100万ドルのギャラを要求する主演級の俳優ばかりだが、この番組ではほぼ一律5万ドルという当人の感覚から言うとお小遣い程度のギャラで出演を承諾している。


米大統領に扮するのはリチャード・ドレイファスで、彼のセリフが最も多い。元々おしゃべりな人のようなので、願ってもない役か。その通訳バックに「ER」のノア・ワイリ。「ER」以外では昨年のTV映画「パイレーツ・オブ・シリコン・ヴァレー」以来の仕事である。ほとんど座ったままで動きの少ない役なのに、結構印象に残るなかなかの好演。良識派のウォレン・ブラック将軍に扮するのは、「U-571」が公開中のハーヴィ・カイテル。ここでは最もヒロイックな役を演じている。コンピュータ技師のゴードン・ナップにはジェイムズ・クロムウェル。この人は「ベイブ」以来、「L.Aコンフィデンシャル」での警察署長、「RKO281」での資産家、「ヒマラヤ杉に降る雪」での裁判官等、見る度に役柄ががらりと変わり、それでもいつも役にはまっている印象を与えるのには感心させられる。


その他、タカ派のボーガン将軍にブライアン・デネヒー、政治家バスコブにサム・エリオット、グロテシェル教授にハンク・アゼリア、カシオ大佐にジョン・ディールと、他の映画や番組では主役級の面々がずらりと脇を固めている。また、基本的に男のドラマであるこの番組で、登場する女性は冒頭とラストに数ショットだけ出番のあるブラックの妻ベティに扮するシンシア・エッチンガーと、その娘の二人だけである。大統領とクレムリンを繋ぐ女性オペレータは最後にちゃんとクレジットされており、出番も多いと言えるが、それとて声だけの出演である。


監督は「危険な関係」、「グリフターズ」のスティーブン・フリアース。どんなに演技指導しても最後の仕上げは俳優に任せるしかないので、結構歯がゆい思いをしたのではないか。ライヴ監督という初めて聞く職名もあるが、これは演技をつけるというより本番の時のカメラ切り換えの責任者というくらいだろう。映画で脚本のウォルター・バーンスタインが今回も脚本を書いている他、クルーニーと共に製作総指揮に携わっており、原作の一人ハーヴィ・ホイーラーも同じく共同製作総指揮にクレジットされている。番組の冒頭では、60年代のCBSの顔と言えるウォルター・クロンカイトが口上を述べている。


基本的に今回の「未知への飛行」は、映画とほとんど同じである。映画と同じ白黒映像でもある。これなら後でカラー・バランスのちょっとした狂いを気にしなくてもよいわけだ。もちろん撮影はオール・セットであり、5つか6つの基本セットの中だけですべての物語が進行する。流石にドラマの生放送を天候や予定外のアクシデントに左右され、時間が限定される屋外で撮影するわけには行くまい。昼に放送する「真昼の決闘」のリメイクでもない限り。オール・セット撮影ではあるが、例外として飛行機の出撃シーンやミサイル発射シーン等にニュースからのフッテージが用いられている。登場人物の動きが完全に予測できないため、セット全体に均一に光が当たる、ややもすると単調なライティングになったのはしょうがないところか。それとも50-60年代の往年のドラマを意識して、それにわざと似せているのか、その辺はよくわからない。


どんなに入念にリハーサルを繰り返してもすべてのシーンが秒単位でいつも同じ時間でぴしゃりと終わるとは限らないから、必然的に音楽は使用できない。音楽の力を借りないドラマというものを見たのはいったいどれくらい振りか、よくわからないくらい久し振りである。音の点から言えば、当然幾つかのマイクを同時に使用して音を拾っているわけだが、場所や人によってセリフや効果音の大きさが微妙に異なる。マイク/カメラが切り替わった途端、これまで聞こえていたさーっという微かなノイズが消えたりして、技術的なものの統一というのは非常に難しそうだ。


俳優の動きを完全にとらえるために、クロース・アップ、ミディアム・ショット、ロング用等全部で18台のカメラが同時に作動、さらに予期できない事態でスタッフが画面に写ってしまった時のことを考慮して、スタッフにも最初から登場人物同様、軍服を着させて本番に臨んでいる。俳優は映画と違い、事前にすべてのセリフを完璧に覚え込んでおかないといけないから、リハーサルもほぼ二月以上にわたって行なわれ、万全が期された。特に後半、緊張感が高まって見せ場となるシーンで喋りまくりとなる大統領を演じたリチャード・ドレイファスは大したもんだ。私は見ながら、よくこんな長いセリフを覚えきれるもんだな、今にも間違えないか、つかえないかと、結構はらはらした。これが生放送なんだよ、うん。


ただし、番組全体の印象から言うと、やはり映画には及ばないというのが私の意見である。俳優はよくやっているし、結構はらはらどきどきさせるのだが、その緊張感は、ストーリー自体よりも俳優がいつとちるかわからないという部分でのはらはらの方が大きかったように思う。それにどんなにリハーサルを重ねても、時々一瞬にせよ、(たぶん) セリフが続くはずのところで一瞬間が開いたり、誰かが喋っているシーンでいきなり他の誰かの咳払いが異常に大きく聞こえてきたりする。どうしてもこらえられなかったのだろう。CG等を挿入する余裕もないので、盛り上がるべきクライマックスでのちゃちさ加減は、ほとんど犯罪的とすら言える。いかに俳優が頑張っていようともだ。


これはあくまでもよくできた芝居、臨場感が命の劇場で見るべき芝居なのであって、よくできたTVドラマではない。たまさか起こる小さなミスは、クロース・アップが多いTVでは命取りだ。TVドラマの将来はこの方向にはないと私は思う。もちろん俳優を筆頭に製作者の努力は買うし、時折生放送のドラマを楽しむという点に関してなら私も応援するのに吝かではないが、生放送がこれからのTVドラマを背負って立つという事態には今後もならないだろう。


ただしCBSは来シーズンでジュリー・アンドリュースを起用して「黄昏」のリメイクを生放送すると発表している。クルーニーも今後もう一度ドン・チードルを起用して「いつか見た青い空 (65)」のリメイクを製作したいと言っている。製作のリスクの大きい生放送番組が既に評価が確立している作品のリメイクばかりになるというのはしようがないかも知れない。果たして今後定期的に生放送ドラマが編成されるようになるだろうか。






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Fail Safe

未知への飛行   ★★1/2

 
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