Face Off   フェイス・オフ

放送局: SyFy

プレミア放送日: 1/26/2011 (Wed) 22:00-23:00

第6シーズン・プレミア放送日: 1/14/2014 (Tue) 21:00-22:00

ジャパン・エピソード放送日: 3/4/2014 (Tue) 21:00-22:00

製作:  ミッション・コントロール・メディア

製作総指揮: ドワイト・スミス、マイケル・アグバビアン、デレク・アータートン

ホスト:  マッケンジー・ウエストモア

ジャッジ: ヴィ・ニール、グレン・へトリック、パトリック・タトポロス、ネヴィル・ペイジ


内容: SF映画、TV番組におけるSFXメイキャップ技術を競う勝ち抜きリアリティ・ショウ。優勝賞金は10万ドル。


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Face Off


フェイス・オフ  ★★1/2

SF番組専門のケーブル・チャンネルSyFyは、スペシャル・エフェクツ、それもコンピュータ上のCG技術ではなく、実際にフィジカルな製作技術を競う勝ち抜きリアリティ・ショウをいくつか製作放送している。SF的な舞台を製作する「ホット・セット (Hot Set)」、新たな生命体、クリーチャーを製作する「ジム・ヘンソンズ・クリーチャー・ショップ・チャレンジ (Jim Henson's Creature Shop Challenge)」、そして今シーズンで第6シーズンを迎える、この中では最もヴェテラン番組である、メイキャップ技術およびトータルなキャラクター造型を競う「フェイス・オフ」だ。


こういうクリエイティヴ系の勝ち抜きリアリティは、見てて飽きない。昨年もAMCで剥製技術の優劣を競う「インモータライズド (Immortalized)」が始まった他、種々のクッキング・コンペティション・リアリティは今でも人気だ。ファッション・デザインのブラヴォー-ライフタイムの「プロジェクト・ランウェイ (Project Runway)」は、さすがに私自身は今でこそあまり見てないが、うちの女房はファッションに関心の強い女性ということもあって、いまだに熱心によく見ている。巷で特に人気のあるわけではない家のリニューアル・コンペティションのNBCの「アメリカン・ドリーム・ビルダーズ (American Dream Builders)」だって、我が家ではわりと見ている。


とはいえ、それらの番組を毎回見ているわけではない。「フェイス・オフ」だって、第1シーズンを見た後は、特に追っかけて見ていたわけではない。それを今回久し振りにわざわざチャンネルを合わせたのは、ケーブルのニッチ・チャンネルの一つに過ぎないSyFyが、参加者を全員わざわざ日本に連れて行って、課題を課して勝負させたというニューズを小耳に挟んだからだ。


リアリティ・ショウが日本を舞台にするというのは、何もこれが初めてではない。なんといってもABC の「アイ・サヴァイヴド・ア・ジャパニーズ・ゲーム・ショウ (I Survived a Japanese Game Show)」という、最初から最後まで日本で撮ったアメリカ製リアリティ・ショウすらある。東京放送の「SASUKE」にNBC/G4が毎回アメリカから刺客を送り込む「アメリカン・ニンジャ・ウォリアー (American Ninja Warrior)」は常態化しているし、CBSの「ジ・アメイジング・レース (The Amazing Race)」でも何度か日本を通過している。昨年見たシーズンでは、参加者は渋谷のスクランブル交差点で動く自販機を探し当てるという、なんともビミョーな課題を課されていた。


それでも、バックにネットワークという強力な後ろ盾があるそれらのリアリティ・ショウとは異なり、たとえNBC傘下とはいえ基本的に予算は自分たちだけで組まないといけないはずの、それも視聴者層がかなり限られたニッチ・ケーブル・チャンネルのSyFyが、わざわざ参加者を海外ロケ、それも中南米やヨーロッパという近場ではなく、太平洋を越えた日本まで連れて行って撮影するという。これはちょっと興味をそそられた。


そのエピソードでは、日本行きを告げられた参加者は、次のシーンではもう東京にいて、お決まりの築地市場、渋谷スクランブル交差点を見学した後は六義園に連れて来られる。そこで与えられた最初の課題は、「鬼」の製作だ。その場で限られた時間内にモデルを使って自分なりの鬼を造型する。


スペシャル・ゲストは日本人SFXアーティストのツジ・カズヒロで、これまでに「トータル・リコール (Total Recall)」「ルーパー (Looper)」のメイクを手がけているそうだ。今回IMDBでフィルモグラフィを見て、その燦然たるキャリアに驚いた。超一流じゃないか。「ルーパー」の、ブルース・ウィルスにまったく似ても似つかないジョゼフ・ゴードン-レヴィットを歳をとったらウィリスのようになるように見せたメイクや、「ソルト (Salt)」でアンジェリーナ・ジョリーを男性にしたあの職人メイクは、日本人がやったのか。彼はLAでもゲスト・ジャッジとしてコメントしていたが、他のジャッジができたものの手触りや製作のテクニックに言及することが多いのに対し、ツジは「プロポーション-ワイズ」という言葉を多発して、全体的に見た時のバランスを重要視しているのが印象的だった。和洋の違いというのはやはりあるようだ。


さて、我々が鬼と聞くと、だいたい誰も似たようなイメージを想像すると思うが、アメリカ人が好きに造型する鬼は多種多様で、あまりに意外で面白いっちゃあ面白い。この課題に勝ったのはダランで、実際でき上がった鬼は、緑の皮膚、赤い髪、四つの目を持つ、日本人がは想像しそうもないオリジナリティ溢れる鬼だった。それにしても六義園なんて、東京にいた時一度しか行ったことがないが、静謐な場所だったと記憶している。それが太鼓どんどん叩いてセレモニーさせるなどしていた。規則を緩くして外国人観光客を取り込む政府戦略の現れだろうか。


今回のメインとなるスポットライト・チャレンジは、自分の分身でもあるアニメ・キャラを製作するというもので、参加者の面々は秋葉原に連れて行かれる。AkihabaraもしくはAkibaは、世界に通用する固有名詞となっている。世界中のアニメ・ファンの聖地なのだ。そこのメイド・カフェでメイド相手に歓談した後、アニメ・アートの第一人者天神英貴 (ヒデタカ・テンジン) からアドヴァイスを受け、それぞれのアイディアを形にする。


その後、ほとんどトンボ返りでLAに戻る。本格的なマスクを製作するのに必要な道具はLAのステュディオにしかない。せっかく浮かんだアイディアが萎まないうちに製作にとりかからなくてはいけない。遊びで日本に来ているわけではないのだ。それにしてもこいつら、若いとはいえ本当にタフだな。時差ボケしている暇すらない。そしてでき上がったオリジナルのアニメ・キャラたちはいかにもオリジナルで、納得するかどうかは別として、なるほどとは思わせられる。


そして勝ったのはまたもやダラン。六義園の池の鯉をモチーフにしたと思われる鯉顔のカラフルな造型で、なぜこれが自分の投影かというと、社会のしがらみを破る生き物は鳥か魚で、日本では魚だからと、わかったようなわからないような説明だったが、私の目から見てもこれが一番よくできていると思わせられた。一方、こちらもなかなかいいと思っていたグレアムのマッド・サイエンティストは、逆に総スカンを食って最下位になった。所詮素人とプロとでは、見ているところが違う。グレアムは本来なら追放されるはずだが、それまでのポートフォリオが認められて、番組初となるスペシャル・イミュニティを適用され、首の皮一枚繋がった。


番組の第6シーズンは先頃終了しており、勝ったのは黒人のラシャド。特に最後のペアのエイリアンを製作するというチャレンジにおいて、顔の両サイドが明るく光るあの造型は確かによかった。ラシャド以外も、皆自分の得意分野では非常にできがよく、正直言って誰が勝つかは最後までわからなかった。やっぱりこの手のクリエイティヴ系の勝ち抜きリアリティって、見始めると面白い。今度はそろそろ第1シーズンが佳境に入ってきた「ジム・ヘンソンズ・クリーチャー・ショップ・チャレンジ 」でも見てみようかな。










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