多作のプロデューサー、ディック・ウルフは、かつてNBCでニューヨークを舞台とするリーガル・アクション・ドラマの「ロウ&オーダー (Law & Order)」フランチャイズで一時期を画したが、それも今では「ロウ&オーダー: 性犯罪特捜班 (Law & Order: Special Victims Unit)」ただ一つを残すのみになってしまった。現在ではウルフの製作する番組は、シカゴに場所を移して「シカゴ (Chicago)」フランチャイズとして定着している。
そのウルフがまた勝手知ったるニューヨークを舞台に新しい番組をプロデュースするという。ただしさすがにまた「ロウ&オーダー」の焼き直し的な番組を作るという発想はなかったようで、今回はFBIエージェントを主人公にした、どちらかというとアクション重視の番組のようだ。いずれにしてもヒットメイカーのウルフがどのような番組を作るのかは気になる。また、「ロウ&オーダー」および「シカゴ」フランチャイズはすべてNBC番組だが、「FBI」はライヴァル・ネットワークのCBS番組で、その辺もどう影響するか気になるところだ。
番組第1回では、冒頭、ブロンクスのアパート・ビルで爆発が起きる。ビルの前にいた少年少女が爆風で吹き飛ばされてクルマにぶち当たる。すぐさまFBIエージェントのベルとズィダンが現場に駆けつけるが、すぐさま第2の爆発が起きる。特に最初の爆発シーンはなかなかのできで、いきなり何の前触れもなく爆発が起きて人が爆風で飛ばされる。
第2の爆発はさらに大きく、アパート・ビルが全倒壊してしまう。こちらの方が派手な爆発なのだが、ビルの倒壊は明らかにCGだ。近年ではABCの「クアンティコ (Quantico)」でも、そもそものプレミア・エピソードのオープニングでNYのグランド・セントラル・ステイションが爆破された。それはそれでそのくらいやると目を見張るのも確かではあるが、しかし個人的には、ビル全壊よりも一階部分だけを破壊した描写の方がリアルで印象的に思えた。確かにTV番組でNY撮影で両側にビルが隣接しているのに囲まれたビルだけを倒壊させるというのは、実写では無理だったろうというのはわかるが。
その部屋に住んでいたのがドラッグ・ディーラーの男だったということから、事件はドラッグ絡み、引いては後ろで、今、世間を賑わしているギャングのMS-13が疑われる。しかし起爆に使われた装置がかつてエルサルバドルで使われた古い軍事関係のものだったことから、さらに事件は二転三転する。いったい黒幕は誰か? というのがプレミア・エピソードのストーリーだ。
主人公のFBIエージェント、ベルとズィダンに扮するのが、ミッシー・ペレグリンとズィーコ・ザキ。ベルはどうやら最近夫を事故かなんかでなくしたばかりらしい。一方ズィダンはアラブ系で、そういう出自でFBIエージェントを勤めるのは色々と障害や難題もあるだろう。一方で他のエピソードではイスラム系被疑者にコーランを唱えて供述を求めるなど、アラブ系だからこその利点もあるだろうと思われる。
ザキはほとんど知らなかったが、ペレグリンはABCで放送されていたカナダ産警官ドラマの「ルーキー・ブルー (Rookie Blue)」で主演していた。ヒラリー・スワンクとアマンダ・ピートを足して割ったような顔立ちで、二人共内面に抱えるものを持っているという感じで、なかなかいい。アナリストのシャザルに扮するのがエボニー・ノエル、二人の上司ヴァレンティンを演じるのがジェレミー・シスト。さらにその上司を、プレミア・エピソードではコニー・ニールセンが演じていたが、番組第2回以降からセイラ・ウォードに代わっている。
「FBI」はどうやらこういうアクション重視の路線らしく、プレミア・エピソード以外も結構派手なアクションが展開する。要するにニューヨークでアクションというところにポイントがあるらしい。ニューヨークでアクションというのは、上記の「クアンティコ」でもかなりあったし、他にも「ブラインドスポット (Blindspot)」や「ザ・ブラックリスト: リデンプション (The Blacklist: Redemption)」、「ブルー・ブラッズ (Blue Bloods)」等、色々ある。
しかしウルフの「ロウ&オーダー」こそ、これまで最もオーセンティックなニューヨークをとらえていたというのは衆目の意見の一致するところで、一時期いくつもあった「ロウ&オーダー」フランチャイズの撮影のために、どこに行っても「ロウ&オーダー」の街頭ロケが行われていたという時期もあった。そういう、NYの隅々まで知り尽くしているウルフならではのアクションに自信があるように見え、実際、結構色んな場所でのアクションが見れて楽しいことも事実だ。今後もこのテンションを落とさず続いていくことを希望する。