Eyes Wide Shut

アイズ・ワイド・シャット  (1999年7月)

スタンリー・キューブリックの遺作だから、まあ、とにかく見ないとなと思ってあまり期待をせずに見に行ったのだが、面白かった。トム・クルーズは段々と演技派になってきている。「トップガン」の時はただの大根としか思えなかったのに。人間向上心というものが大事なんだなと彼を見ているとつくづく思う。もともと彼は一生懸命やる、というのが身上というか、まあ、真面目にやっているから許してしまおう、くらいのものでしかなかったのに、本当にハリウッドを代表する役者になってきた。大したもんだ。


対してニコール・キッドマンの方は、実はあまり感心しなかった。彼女の演技は大きすぎるというか、やり過ぎて鼻についた。彼女はヌードになって話題となった舞台のやり方をそのまま持ってきているような気がする。きっとあの演技は舞台でなら映えるんだろう。キューブリックはきっとわかって抑えようとしたに違いないのだが、どうしても表に出てきてしまったという感じ。


脇ではシドニー・ポラックが本当に上流階級のスノッブに見える。映画監督が駄目でも充分俳優としていけるんではないか。それとちょい役ながらレンタル衣装屋の娘?に扮しているリーリー・ソビースキがいい。彼女は今年5月にCBSのミニ・シリーズ 「Joan of Arc (ジャンヌ・ダルク)」でジャンヌ・ダルクに扮したのだが、その時は多分ほとんど「アイズ・ワイド・シャット」と同時期の撮影だったはずなのにもかかわらず、まるで印象が違う。


「ジャンヌ・ダルク」では清楚な雰囲気を漂わせ熱演していたが、ポイントは実際のジャンヌ・ダルクの年齢に近い女優(彼女は現在18歳)であるということくらいで、私は特に感心したわけではなかった。しかし、「アイズ・ワイド・シャット」の彼女は実際の年齢と彼女の醸し出す色気がアンバランスな怪しい雰囲気を漂わせて実によい (しかし彼女と一緒に出てきた謎の日本人 (とクレジットに出ていた) は一体なんだったんだろう)。彼女は雑誌のインタヴューで一度は売れ線路線も目指したが全然成功しなかったと言っていたが、なんのなんの、売れ線路線なんか目指さず、このまま頑張って下さい。


撮影に1年以上かかったというだけあって、細部まで演出の目が行き届いた映画だった。この映画には即興というものは多分1か所もないだろうという気にさせる。こういう映画をちゃんと撮り終えて逝ったんだから、キューブリックも本望だろう。






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