Exodus: Gods and Kings


エクソダス: 神と王  (2015年1月)

ほとんど欠かさず見ているリドリー・スコット作品だが、今回ばかりは特に惹かれない。いわゆる聖書の出エジプト記、十戒ものなのだが、あれだろう、最後には紅海が真っ二つに割れるってやつ、いくらなんでもCGなくしてはさすがのスコットでもそんなシーン撮れないだろうが、スコットの魅力はCGではない実写の力強さにこそあるのに、クライマックスがCGか。「トランスフォーマーズ (Transformers)」じゃないんだから、CG主体のスコット作品なんか見たかないなあというのが一つ。


さらに題材が宗教関係というのも、特に惹かれないもう一つの理由だ。昨年のダーレン・アロノフスキーの「ノア (Noah)」も聖書の話だったが、信仰心とはとんと無縁の私の場合、神の意思だとかメッセンジャーだとかいう話は、エンタテインメントに徹してない限り、そうそう頻繁に見たくなる題材でもない。こういう神の意思関係だと、前史ではないがやはり一番面白かったのはリュック・ベッソンの「ジャンヌ・ダルク (The Messenger)」かなあと思いつつも、しょうがない、スコットだし、と重い腰を上げる。


ところで私が最も贔屓にしているマルチプレックスの全館のシートのリクライニング化が終了したようで、ロビーにそのリクライニング・シートがでんと置かれ、ラグジュアリアスな映画鑑賞環境を! みたいな感じで設備がよくなったことを謳っている。


それはそれでいいのだが、おかげで全席指定になったため、キオスクでチケットを買う時、既に誰かが購入済みの席の隣りの席しか買えないシステムになっている。かなり空いているのに、隣りに一席置いて、両側が空いた状態で本当にふんぞり返って見ることができない。まあ飛行機と同じで、しばらくして本当にこれ以上誰も入って来ないのがわかると皆思い思いに席を移動していたが、こうなると全席自由ってのもそれはそれで悪くなかったなと思ってしまう。ほとんど人が入ってない劇場で観客がまばらに点在しているという状態で、顔も人種も性別も知らない人物との連帯感というのも、なかなかどうして劇場通いの一つの楽しさだ。


私はだいたい週末の安いマチネーを利用して映画を見ているので、特にこれまで料金を気にしていたわけではないのだが、これだけシステムが変わるとチケット代にも影響するだろうとチェックしてみた。すると、これまでは確か8ドルくらいだったはずだが、リクライニング・シートになった現在、チケット代は9ドル75セントになっている。2ドル弱くらい上がっている。そうだろうと思った。


驚いたのは、午前中開始の回は平常のマチネーよりさらに安く、5ドル75セントだ。これは本気で得だ。知らなかった。一方マチネーが終わる午後6時以降になると、チケット代は11ドル50セントに上がる。それでもマンハッタンで見るのと較べると安いし、日本と較べるとさらに安いだろう。本気で安く上げようと思えば早起きすればいいだけのことで、正直言って恵まれている映画環境と言える。これでもうちょっと海外ものを上映してさえくれれば。


さて「エクソダス」だが、私は特に聖書に詳しいわけではないので、映画を見た後ちょっと調べてみたのだが、わりあい旧約の聖書通りに描かれているようだ。多くのユダヤ人を助けるモーゼは当然ユダヤ人だが、幼い時殺戮を怖れた親に川に流され、エジプト人王族に拾われ、エジプト人として育てられた。知らなかった、そんなこと。以前チャールトン・ヘストンがモーゼを演じた「十戒 (The Ten Commandments)」も見ているのだが、なんせ大昔のこととて記憶もおぼろで、紅海が割れるシーンのみ微かに覚えているに過ぎない。モーゼの幼少時代なんてまるで記憶にない。


ヘストンにせよ今回モーゼを演じるクリスチャン・ベイルにせよ、白人にしては結構濃い系で、見ようによってはエジプト人っぽく見えないこともない。肌が濃いユダヤ人も時たまいるように、白人っぽいエジプト人がいることもあるということにしよう。しかしジョン・タトゥーロやシガーニー・ウィーヴァーまでエジプト人か。


話の中で、モーゼたちがラムセス王にエジプトからの離脱をお願いしたが聞き入れなかったため、エジプトをいくつもの災厄が襲うという展開がある。これも実際に聖書にあるが、私はこれまた知らなかった。これ、「リーピング (The Reaping)」じゃないか、そうかあれは聖書を題材にしていたのかと、遅まきながら気づいた。遅すぎるわ。


しかしCG技術が上がった今回の方が、ハエやらカエルやらイナゴやらの描写がなかなか迫力ある。一方でだいぶ忘却しているけれども、「リーピング」もB級と言われつつも頑張ってたんだなあとも思う。いずれにしても地上を覆い尽くすほどのハエやらカエルやらイナゴやらワニ、さらに真っ二つに割れる海か。要するにスコットはCGを多用してはいるが、やっていることはいつも通り、あるいはさらなる高みを目指したということのようだ。こりゃ確かにCGじゃないと描きようがないだろう。


とはいえ、これが傑作とかすごくよかったかと訊かれると、ちょっと首を傾げてしまうのもまた事実だ。個人的な意見では、かなり失敗しているという評価が多かった前作の「悪の法則 (The Counselor)」の方が面白かったと思うし、いまだによく覚えている。生身のアクション、あるいはエモーションの衝突の方が、結局は記憶に残る。


ところで十戒のことについて書こうとして、最初「じゅっかい」と書いたら、述懐、十回、十階、等々に変換されたのが出てきたが、十戒はなかった。十戒は「じゅっかい」ではなく、「じっかい」だった。それなのに「じっかい」だと、十回、十階にも変換されるのだ。この時に使っていた日本語入力システムはマイクロソフトのIME2010で、解せんのでメインに使用しているマックでも試してみた。するとことえりでは「じゅっかい」でも「じっかい」でも十戒が行ける。ついでにグーグル変換も試してみたら、IME同様「じゅっかい」はダメで「じっかい」で変換できた。うーむ、やはりどこか納得行かん。


その、実はよく知らなかった十戒の最初の一文は、「神が唯一の神である」というものだ。これって、意味を成してないんじゃないか。きっと神学者はそれなりの説明を用意してあるんだろうけれども、たとえどう説明されようとも、ヘンなもんはヘンだ。宗教ってやはり納得行かん。












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紀元前、栄華を誇っていたエジプトの統治者セティ王 (ジョン・タトゥーロ) には世継ぎのラムセス (ジョエル・エドガートン) がいたが、万事につけ荒っぽく子供のラムセスより、セティ王はラムセスのお目付役として子供の頃から一緒に育ってきたモーゼ (クリスチャン・ベイル) の方を買っていた。当時ユダヤ人は奴隷として苛酷な状況下で働かされており、ある時ユダヤ人を視察に行ったモーゼに対し、ヌン (ベン・キングズリー) は、実はモーゼはユダヤ人だと告げる。生まれた後に川に流されたのを拾われ、エジプト人として育てられたというのだ。このことが王に報告され、モーゼは都を追われる。モーゼはその途中でツィポラ (マリア・ヴァルヴェルデ) を見初め、二人は結婚し、男の子を儲けるが、モーゼは彼らの信仰まで受け入れたわけではなかった。ある時、山で嵐に遭遇したモーゼは、怪我をして瀕死の目に遭い、そこで神の使いの子の姿を見る‥‥


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