Exit   エグジット 

放送局: SyFy 

プレミア放送日: 6/4/2013 (Tue) 22:00-23:00 

製作: スマート・ドッグ・メディア 

製作総指揮: クレイグ・プレスティス、スコット・セント・ジョン 

ホスト: カート・ドーセット 

  

内容: 毎回二人一組で4組の参加者を様々な仕掛けが施された部屋でクイズに答えさせる。早く正答できた者から部屋から脱出できる。最後まで勝ち残った場合の賞金は1万ドル。


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Exit


エグジット   ★★

日本のリアリティ・ショウ・フォーマットのアメリカへの輸出ラッシュは、近年は一段落ついた感じがある。一時期は毎年数本はオリジナルがメイド・イン・ジャパンのリアリティ・ショウがアメリカでリメイクされたものだが、その勢いもさすがに沈静化した。 

  

現在もまだアメリカで放送されている和製リアリティ・ショウのリメイクというと、ヴェテランもヴェテランの、東京放送の「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」の視聴者ヴィデオ投稿コーナーをリメイクしたABCの「アメリカズ・ファニイスト・ホーム・ヴィデオス (America's Funniest Home Videos (AFV)」と、これまた東京放送の「Sasuke」をリメイクした、G4/NBCの「アメリカン・ニンジャ・ウォリアー (American Ninja Warrior)」、それにフード・ネットワークがフジテレビの「料理の鉄人」をリメイクした、「アイアン・シェフ・アメリカ (Iron Chef America)」の3本くらいしか見当たらない。 

  

この3本が成功した理由は、この手のリアリティ・ショウのリメイクに必須の、現地の嗜好に合わせて番組にマイナー・チェンジを施すローカライゼーションが、見事にツボにはまったからに他ならない。特になんにでも競争原理を持ち込んで賞金を課さないと気が済まないアメリカTV界において、視聴者投稿ヴィデオに優劣をつけて賞金を与え、大きく成功した「AFV」は、印象としては「加トちゃんケンちゃん」とはまるで別物だが、これが大きく奏効した。今ではネットワークのプライムタイムで最長寿の番組になっている。一般のアメリカ人は、誰も「AFV」が日本生まれの番組のリメイクとは気がつかないだろう。 

  

「アイアン・シェフ」の場合、最初はほとんどオリジナルの焼き直しだったものが、徐々に視聴者の嗜好を受けてローカライズされ、変化してきた。どんどんアイアン・シェフの数も増え、今や次の「アイアン・シェフ」になるための、プロのシェフを集めて勝ち抜きで勝負させる「ザ・ネクスト・アイアン・シェフ (The Next Iron Chef)」なるものまで製作されている。 

  

「ニンジャ・ウォリアー」も、最初は予選をアメリカで行い、優勝者を日本に送り込んで「Sasuke」に出場させるだけだったものが、今では本家を凌ぐ規模のセットをラスヴェガスに組んで、アメリカですべてを賄えるようにしてしまった。優勝賞金も50万ドルと、本家を軽く凌駕する。やはり金がかかると人が本気になるというのはあるかもしれない。少なくとも有効なインセンティヴとしては機能しているだろう。 

  

さて、今回SyFyが編成する「エグジット」は、日テレの「DERO!」のリメイクだ。SyFyは数年前 (当時Sci-fi) にも、フジの「Run for Money 逃走中」のリメイク「チェイス (Chase)」を放送していたことがある。近年も、真っ暗闇の中で参加者に怖い思いをさせる「トータル・ブラックアウト (Total Blackout)」や、勝ち抜きロボット格闘技の「ロボット・コンバット・リーグ (Robot Combat League)」とかを編成、メイド・イン・ジャパンかどうかにかかわらず、SF絡みの勝ち抜きリアリティ・ショウの確立に余念がない。その最新例が、「エグジット」だ。 

 

本家「DERO!」に賞金がかかっているかどうかは、ホーム・ページを見たがよくわからなかった。番組紹介には芸能人たちが出場と書かれていたので、それなら賞金は出ないものと思われる。SyFy版「エグジット」は素人参加であり、最後まで勝ち残った場合の賞金は1万ドルだ。 

 

毎回二人一組で4ペアが参加、様々な趣向を凝らした部屋に閉じ込められ、制限時間内に与えられた問題を解かなければならない。最初の部屋はビーム・ルーム -- 棒の部屋で、部屋の隅から飛び出したビームの上に乗り、問題に正答できなければどんどんビームが引っ込んで行き、果てはその上にこれ以上留まれなくなって奈落に落ちる。むろんそうなった時点で失格だ。 

 

問題は連想ゲームのようなもので、最初は二つ、段々三つ四つと増えていく写真を見ながら、意味しているものを当てる。ネクタイ (Tie) と日焼けサロン (Tan) とニコラス・ケイジ (Nick) の写真でタイタニック (Titanic) という具合だ。ものによってはかなりわかりにくいのもある。オリジナルの日本語だとどんなのが出題されるんだろう。 

 

次の部屋では、残っている参加者はそれぞれ同一の設備で統一された三つの部屋に入れられ、表示された札に書かれてあるものを、例えば州名とその首都といった具合に、趣旨に沿ってペアにまとめる。最下位に待っているのは、フリーズ・ブラスターによる凍死による失格だ。 

 

残った二組は、今度は流砂の中で質問攻めになる。答えられないとどんどん身体が砂の中に沈んでいく。もちろん負けた方は砂の中に呑み込まれて二度と出られない。そして最後まで残ったペアは、今度は最後の部屋で、落ちてくる天井の下で押し潰されそうになりながら質問に正答しなければならない。時間内に所定の正答数が得られれば、晴れて1万ドル獲得だ。それにしても流砂に呑み込まれたあのペアはいったいどうなったんだろう。 

 

番組を見ての最初の印象は、かつてSyfyが編成した「エステイト・オブ・パニック (Estate of Panic)」に似ているなというものだ。ある部屋に閉じ込められて課題を与えられ、制限時間以内に問題を解くか課題をクリアしなければならない。天井が落ちてきたりなんていうギミックもそっくりだ。違うのは「エグジット」は基本的に問題に答えるクイズ・ゲームであるということで、その辺が体力も使ってのゲーム・ショウである「エステイト・オブ・パニック」とは違う。 

 

さて、日本製リアリティ・ショウをアメリカで輸入リメイクした場合、ローカライゼーションにこだわり過ぎるあまり、オリジナルが持っていた人気の理由の一つだったキッチュなテイストを殺してしまい、面白くなくなるということが往々にしてある。また、オリジナルの「DERO!」だと、ゲームに挑戦するのは芸能人だ。当然受け狙いのリアクションが幅を利かせるだろう。それを賞金を懸けての素人参加番組にしたら、番組の質がかなり変わってくることは容易に想像できる。 

 

実は「エグジット」を見ての印象を言うと、どうもこれもオリジナルはもっと面白いんではないかというものだ。この手の勝ち抜きリアリティは、アメリカで製作するとどうも参加者がバツゲームでも率先してやりたがり、嫌がるのを無理強いするから見るのが快感という、視聴者の楽しみを減殺してしまう。それがMTVの「サイレント・ライブラリ (Silent Library)」のようにスポーツ的な面白味にまで達していればいいが、だいたいは特に面白味のないリメイクで終わってしまう。「エグジット」もかなりそれに近いような気がした。今度オリジナルを探して見て確認してみよう。 










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