Evil Dead


死霊のはらわた  (2013年4月)

今週から「G.I. ジョー バック2リベンジ (G.I. Joe: Retaliation)」も始まっているのだが、忍者装束に身を包んだ一団がホワイトハウスを襲う、みたいななんだかカン違いしているような予告編にど うも惹かれない。すべての批評家からとことん貶されている上に、先週ホワイトハウスが占拠される「エンド・オブ・ホワイトハウス (Olympus Has Fallen)」を見たばかりで、さすがにまたアジア系によるホワイトハウス襲撃ものを見る気になれない。 

 

それでミア・ワシコウスカ、ニコール・キッドマン主演のパク・チャヌクのハリウッド進出作「イノセント・ガーデン (Stoker)」を見に行こうとしたら、先週からしかやってないのに、今週既に劇場から消えている。バクは数年前にサンダンス・チャンネルでよく深夜に 「エイジアン・エクストリーム」と題して韓国系のホラーを中心としたアジアの映画作家を特集していた時に、「復讐者に憐れみを (Sympathy for Mr. Vengeance)」や「オールド・ボーイ (Oldboy)」で名前を覚えた。 

 

最初、キッドマンとワシコウスカが出ているなにやら気になる作品があるなと気づいて、監督を見たら、Chan-wook Park… チャン-ウック・パークとなっている。 誰だろ、韓国系のようだが、まだまだコリアからは新しい監督が出ているのかと思って調べたら、パク・チャヌクだった。これってリエゾンの一種か。いずれにしても先週見ておけばよかった。 

 

それで結局、次の候補だった新版「死霊のはらわた」を見に行くことにする。実はオリジナルを監督したサム・レイミの「オズ はじまりの戦い (Oz the Great and Powerful)」が公開中なのだが、そっちではなく、レイミがプロデュースに回ったリメイクの方が気になるのだった。 

 

今回のリメイクは、人々がとある山の中の一軒家でおどろおどろしい本を見つけ、その中に封じ込められていた何ものかを解放してしまい、次々とその餌食となってしまうという基本的な設定はオリジナルと一緒だが、根本的に異なる点として、主人公が男性から女性に変更されたことが挙げられる。 

 

その主人公ミアは薬物依存で、その治療のために兄や友人たちが集まり、山奥の、今は誰も住んでいない兄妹の実家に籠もって、リハブに専念しようという予定だった。そのミアに悪霊が憑くわけだが、その彼女を主人公にして彼女の立場から描くことによって、新しいひねりを持ち込もうと試みている。 

 

あるいは、主人公はミア一人ではなく、兄のデイヴィッドと二人合わせて今回の主人公を分担しているという印象もある。オリジナルのブルース・キャンベル的な八面六臂の活躍を現代に甦らせるのは、一人では無理という判断かもしれない。あるいは単にジェンダー的な配慮か。 

 

それにしてもこの山小屋、昨年の「ザ・キャビン・イン・ザ・ウッズ (The Cabin in the Woods)」にそっくり。それだけでなく、地下から謎の書物を発見して悪霊を解き放ってしまうという展開まで同じだ。というか、「キャビン・イン・ザ・ウッズ」が「死霊のはらわた」の本歌取りだったということに、遅まきながら今気づいた。一応設定としてはどっちもセオリー通りだから気づかなかったのだが、ここまで同じ舞台設定だと、やはり「キャビン」は「死霊」を下敷きにしていると言うしかないだろう。そうすると今回の 「死霊のはらわた」は、オリジナルの「死霊のはらわた」のリメイクの「キャビン・イン・ザ・ウッズ」のリメイクということになるか。 

 

実はオリジナルで人々が山奥の一軒家に集まった理由というのはよくは覚えていない。覚えているのは、閉じ込められた地下から抜け出そうと、はね蓋の下から顔を見せてもがく悪霊と、その悪霊相手にこちらも人間とは思えない奮闘ぶりを見せる、主人公に扮したブルース・キャンベルの印象ばかりだ。そうそう、森の中を疾走するカメラというのも、「死霊のはらわた」が流行らせた。 

 
片腕を失いながらもチェーンソー片手に目を剥きながら悪霊に立ち向かうキャンベルは、はっきり言って逆受けするキャラクターで、ホラーというよりもギャグだ。オリジナルはそういう逆受けの部分で話題になった。ホラーというよりも、悪霊を自分と同じ土俵に引きずり下ろして肉弾戦の体力勝負に持っていったという、その部分が受けた。 
 
チェーンソーというと、キャンベルと並び、ホラー界に屹立するもう一本のチェーンソーを使うキャラクターが、「悪魔のいけにえ (The Texas Chain Saw Massacre)」のレザーフェイスだ。この二人以上にチェーンソーを使いこなした、あるいはチェーンソーを印象づけたキャラクターは、ちょっと記憶にない。 

 

「死霊のはらわた」をリメイクするからには、そのチェーンソーの使い方も重要になるはずだが、実は今回のチェーンソーは、当然登場することはするが、あまり記憶に残らない。これはミアが体力的にチェーンソーを使いこなせてないこと、および、やはり主人公をミアとデイヴィッドが分担していることによる印象の分散がネックになっている。


また、今回のリメイクはちょっとシリアス過ぎて、オリジナルが持っていたテイストとはかなり異なるものになっている。あのキッチュな味を期待した者にとっては、かなり肩透かしになったのは否めない。現代的なポリティカリー・コレクトなものを狙っているんだろうというのはわかるけれども。


ミアに扮するのは、現在ABCのコメディ「サバーガトリー (Suburbagory)」に主演しているジェーン・レヴィ。親の目を盗んでタバコ吸ったり男の子とデートしたりという反抗的な思春期の女の子という役柄なので、その延長線上的な今回のキャラクターは、それなりに合っている。兄のデイヴィッドに扮するのは、「赤ずきん (Red Riding Hood)」のシャイロー・フェルナンデス。


演出のフェデ・アルバレスはウルグアイ出身だそうで、そうすると当然思い出すのは、昨年の革新的なホラー「サイレント・ハウス (Silent House)」のオリジナル「Shot/ショット (La Casa Muda)」(グスタボ・エルナンデス監督) で、これもウルグアイ産だ。ギレルモ・デル・トロが紹介するホラー映像作家と並び、現在印象的なホラーを牽引しているのは、中南米出身の映像作家だ。 一時期、ホラーといえば韓国を中心とするアジアの映像作家という印象があったのだが、いつの間にかホラーの中心地は南米に移動している。










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山奥の一軒家に、ドラッグ・アディクトのミア (ジェーン・レヴィ) の治療目的のために、兄のデイヴィッド (シャイロー・フェルナンデス)、看護師のオリヴィア (ジェシカ・ルーカス)、デイヴィッドのガールフレンドのナタリー (エリザベス・ブラックモア)、友人のエリック (ルー・テイラー・プッチ) の5人の若者が到着する。その家はデイヴィッドとミア兄妹の実家だったが、過去忌まわしい記憶があった。ミアは早々に薬が切れて暴れ出し、彼らは地下室か ら「死者の書」と題された書物を発見する。エリックは厳重に閉じられていた書物を開き、謎の呪文を口にすることで、封じ込められていた何ものかを解き放ってしまう。それは彼らを一人また一人と血祭りにあげていく‥‥


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