Estate of Panic  エステイト・オブ・パニック

放送局: Sci-Fi

プレミア放送日: 11/12/2008 (Wed) 22:00-23:00

製作: ABCメディア・プロダクションズ、リーランド・プロダクションズ、フジサンケイ・コミュニケーションズ・インターナショナル

製作総指揮: リチャード・ホール

共同製作総指揮: バリー・ヘネシー、アレックス・レイダー

監督: J. ルパート・トンプソン

ホスト: スティーヴ・ヴァレンタイン


内容: 7人の参加者を特製幽霊屋敷に集め、様々な恐怖/責め苦の中を最も多くのキャッシュを集めるのを競う勝ち抜きリアリティ・ショウ。


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前回Sci-Fiチャンネルの新リアリティ・シリーズ「チェイス」について書いたが、その「チェイス」のプレミア・エピソードが放送された翌日から始まった新リアリティ・ショウ第2弾が、この「エステイト・オブ・パニック」だ。「チェイス」が大人版鬼ごっこ/かくれんぼだったとしたら、大人版幽霊屋敷を作ってみたのが「エステイト・オブ・パニック」だと言える。


私は最初、「チェイス」がフジTVの「Run for Money逃走中」のリメイクだったことを知らずに番組を見ていた。実は今回も既に「エステイト・オブ・パニック」のプレミア・エピソードは見ていたのだが、いずれにしてもそれで、これもどこかの国の、もしかしたら日本のリアリティ・ショウのリメイクだったりするかと思ってこの項を書き始める前にチェックしてみた。


まず幽霊屋敷といっても、障子の壁や行燈、灯籠といった和風ではないので、これが日本の番組のリメイクだとは思いにくい。一方で忍者屋敷というものもあるので、日本ではこんな番組や作られないとも断言できない。とはいえ高い門扉に囲まれた煉瓦造りの洋館というのは、これはやはり欧米の専売だろう。部屋の壁が迫ってきたり、屋根が落ちてきたり、電気ショック、水責め砂責めヘビ責めヒル、ウジ、タランチュラ等、幽霊というよりは「インディ・ジョーンズ」「ハムナプトラ (The Mummy)」の世界に近い。つまり、この番組に関してはSci-Fiオリジナルみたいだ。


番組はおどろおどろしい雰囲気を持つ洋館に毎回7人の参加者を集め、勝ち抜きでその回の勝者を決める。回によって参加者が挑戦する – 閉じ込められる – 部屋や場所は異なる。勝負は3ステージに分けられ、ステージ毎にその部屋/場所に隠されているキャッシュを集めなければならない。もちろんその部屋には上記のような様々な仕掛け、障害が用意されている。そのステージで最も少ないキャッシュしか集められなかった者、および欲を出し過ぎて部屋を出るのが最後になった者が脱落する。第1ステージで二人が落ち、5人で第2ステージを戦い、さらにそこで二人落ちて3人で第3ステージに挑戦する。そこで勝ち残った最終勝者は一人で巨大金庫内に入れられ、最終競技に挑戦する。


番組第1回では参加者がまず送り込まれるのは一見ただの普通の部屋、しかしそこに隠されているキャッシュを集めるために箱やら缶やら本棚やらをひっくり返すと、そこには大量のヘビがとぐろを巻いている。しかも間髪を入れずして天井からはこれまた大量の水が降りかかる。既に膝下の高さまで浸水してきた水の中をヘビが泳ぎ回り、そいつらを掻き分けて隠されているキャッシュを探す。お宝探しというよりきゃーきゃー叫んでいるばかりの女性参加者もいるが、気持ちはわからないではない。結局ここでは集めたキャッシュが一番少なかった者、最後まで部屋に残ってキャッシュに気をとられた挙げ句、逃げ遅れて最後の一人となり、閉じ込められた者の両方とも女性で、この二人が脱落する。


次のステージは中庭の墓地でキャッシュを探す。ただしこの墓地の中には微量ではあるが電流の通った裸の鉄線が張り巡らされている。たぶん墓地の中央にある噴水の中に大量のキャッシュが隠されているのはまず間違いないが、しかしその辺へ行けば行くほど鉄線の密度が高くなり、ここでばちっ、あそこでばちっと電気ショックが降りかかる。あそこでもここでも、いてっ、ぎゃっと悲鳴が上がる。ここでも逃げ遅れたのは女性、しかし集めたキャッシュの額が最も小さかったのは中年の男性で、この二人が落ちる。


男性二人、女性一人が残った第3ステージの部屋は、競技開始と共に屋根が徐々に下がり、一方で壁もだんだん狭まってくる。水の入ってない水槽の一つにはミミズが、もう一方の水槽にはカニが詰まっており、しかしその下にはキャッシュが見え隠れしている。ここでも水槽の中に手を突っ込めない黒人女性を尻目に、そばから男性がキャッシュをふんだくる。前のステージでトップだった男性には、褒美としてホストからこれを有効に使いたまえといってスクリュウ・ドライヴァーを手渡されるのだが、この男は気ばかり焦ってそのことを忘れてしまい、そのドライヴァーを使って簡単に開けられるはずの通風孔を必死になって手でこじ開けようとしていた。


結局彼は真っ先に部屋を脱出、次に黒人女性が部屋を出、もう一人の男性が取り残される。最初に部屋を出てドライヴァーも使い損ねた彼が彼女よりも多くキャッシュをつかんで勝者になり得たのは、彼女が虫系に弱くて水槽に手を突っ込めず、そこでキャッシャをとり損ねたからだ。


彼一人による最後のボーナス・ステージは、巨大金庫の中で足を鎖に繋がれての制限時間勝負。中には貸し金庫を思わせる二、三百もの小さな引き出しが設えられている。レールの上を走る黒球が下に10個落ちるまでに手が届く範囲内の金庫を開け、鍵を見つけて鎖を外し、そしてやはり集められるだけのキャッシュを手に入れる。ここでも黒球が全部落ちるまでに外に出なければならず、あまり欲を張って外に出られず閉じ込められたままだと、それまで獲得したキャッシュも含めてすべてご破算、帳消しとなるが、無事外に出られたらそこで得たキャッシュも含めて全部総どりだ。まず脱出、そして金だ。


彼はここではあまり運がよくなく、貸し金庫を開けても開けても鎖を外す鍵が手に入らない。その代わりに使用に耐えるかどうかわからないのこぎりだとかレンチだとかが出てくる。レンチを使って鎖を繋いでいる土台のボルトを外そうとするもサイズが合わず、まったく時間のロス。慌てて他の貸し金庫に当たり、見つけたのはバール。彼はそれを使って鎖を繋いでいる土台ごと床から引き外し、やっと晴れて少なくとも行きたいところへ行ける自由の身になった。鎖と土台を引きずりながら間一髪で無事大金庫の外にも逃れ、ここでつかんだキャッシュも合わせ、28,500ドルを獲得、かなり消耗したにせよ、一夜にしてこの稼ぎはでかい。一応編集のうまみもあるとはいえ見ていてかなりスリリングで、私の印象としては「チェイス」よりもこちらの方が面白い。


番組第2回では毒蜘蛛やヘビの這う床下でのキャッシュ集め、うかうかしていたら足をとられて固まって動けなくなるゲル状フロアで、腐ってウジの這う七面鳥の内臓に手を突っ込んで金を探し、そして下水の流れる土管の中を這いずり回ってキャッシュを求めるなど、きつい汚い危険の人の嫌がる3K仕事をこれでもかとばかりに強制される。幽霊屋敷というよりはディスカバリー・チャンネルの「ダーティ・ジョブ」を見ているような気もしないことはない。あるいはかなり「アメリカズ・タフスト・ジョブス」にも近いものがあるとも言える。


番組ホストはスティーヴ・ヴァレンタインで、NBCの「女検死医ジョーダン (クロッシング・ジョーダン (Crossing Jordan))」にレギュラー出演していたそうだ。そういえばこういう不気味役のキャラクターがいたような気がする。ここでもいかにもなクリーピーな雰囲気を持つキャラクターで、執事役のルパート共々ぴったりのキャスティング。「チェイス」と比較すると、私はこちらの方が面白いと感じた。ただし番組の質ではなく、一般視聴者としてどちらの番組に出たいかとなると、「チェイス」なら楽しめそうだが、「エステイト・オブ・パニック」の方は本気できつそうだ。私はヘビとか苦手だし、天井が落ちてきたらマジでパニック・アタック起こしかねない。こちらの方は見て楽しむだけにしておこう。








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エステイト・オブ・パニック   ★★1/2

 
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