放送局: トリオ

プレミア放送日: 11/26/2003 (Wed) 20:00-21:00

製作: ワールド・オブ・ワンダー

製作総指揮: ランディ・バルベイト、フェントン・ベイリー

製作/脚本: クレイグ・ブラウナー

編集: ベス・デューイ

ナレーター: ジェイン・シーモア


内容: これまでにアメリカTV界で放送されてきたミニシリーズの中からベスト・テンを選出。


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最近ポップ・カルチャー、特にTVを題材にした企画番組で名を馳せてきたトリオが、今度はミニシリーズの史上ベスト・テンを発表するという。この手の企画としては、昨年、TV情報誌のTVガイドがABCで放送した、TVシリーズ番組の史上ベスト50を選んだ「50ベスト・ショウズ・オブ・オール・タイム」というのがあったが、要するに、それのミニシリーズ版だ。


この手の企画は、過去を振り返って、ああ、こんなのがあった、あんなのもあった、と記憶を新たにする意味でも面白いし、その選択が自分の選択とどのように異なるかを発見して、憤ったり納得したりする楽しみもある。それに、今回のようにその範囲が過去何十年にもわたっていたりする場合だと、見る機会がなかったり、あるいはそれこそ見たことも聞いたこともない番組がランク・インしていたりして、そういう意外な番組を発見する期待もあったりする。


ミニシリーズというものは、一時期、ネットワークTVの話題作り、客寄せとして欠かせない存在だった。しかし90年代以降、段々とその地位は凋落していった。なんとなれば、ほとんどハリウッド映画並みの製作費がかかるのに、以前ほど視聴率を稼ぐことができなくなったのだ。もちろん、ケーブルTVの発達により、視聴者の選択肢が大幅に増大したことがその最大の理由である。それに、70-80年代に、こういう、4-10時間程度の尺に合った題材やクラシックの原作をあらかたミニシリーズとして既に製作してしまい、今ではこのジャンルに合致する素材が少なくなったこともあろう。


しかし何よりも現在、ミニシリーズがそれほど受けなくなった最大の理由は、人々の生活スタイルが、ミニシリーズとかけ離れてきたことにあると私は思う。ミニシリーズというのは、4時間から10時間、時によってはそれ以上かかる大型番組である。一昔前は、4時間くらいではミニシリーズとは言わなかった。最低でも6時間あって初めて、ミニシリーズと呼ばれたのだ。


しかし、その6時間番組を、2時間ずつ3夜にわたって編成しても、忙しい現代人では、それを全部見ることは難しい。飽きっぽい視聴者は、3夜連続で楽しむというよりも、3夜連続で自分の時間が失われるというマイナスの要素の方が気がかりなのだ。その上、裏番組に自分がいつも欠かさず見ている番組があったりするかもしれないとなると、ミニシリーズというジャンルは、ほとんど現代の視聴者には向いてないと言うことができるだろう。


もちろん現在でも、例えば昨年、スティーヴン・スピルバーグがSci-Fiで製作した「テイクン (Taken)」や、その前年の「バンド・オブ・ブラザース (Band of Brothers)」のような10時間ものも、ごく稀にではあるが製作されている。しかし、これらの番組は既にネットワーク番組ではなく、ペイTVのHBOや、編成で博打の打てるケーブル・チャンネルにとって代わられている。その上、これらの番組は、一つの軸となる話の展開はあるが、基本的に一話完結型であり、途中の一話だけを見ても楽しめるようにできている。「ルーツ」の途中の回を見逃すと、その回を見た人間に話を聞いておかないと何がなんだかわけがわからなくなるというのとは話が違うのだ。


さて、アメリカにおけるミニシリーズであるが、英国で71年から75年にかけ放送されていた人気ドラマ・シリーズ、「アップステヤース、ダウンステヤース (Upstairs, Downstairs)」をまとめた総集編をそもそもの嚆矢と見る説が有力らしい。それとほとんど時を同じくして、第2次大戦ドラマの「QBセブン (QB VII)」が放送された1974年が、要するにアメリカのミニシリーズ元年ということになっている。次いで下のベスト・テンにも登場する76年の「リッチマン、プアマン」、そして77年の「ルーツ」を経てミニシリーズが百花繚乱した80年代が、ミニシリーズ最盛期と言うことができる。


番組内でナレーションのジェイン・シーモアが言うには、ミニシリーズとは、(1) 歴史的な背景をバックに、(2) 家族間の不義密通を加え、(3) 叙事的な恋愛ロマンスで盛り上げ、(4) エギゾティックなロケーションで味付けし、(5) 出演者を美しい衣装で包み、(6) 何人かのスターを混ぜ合わせることによって完成するという。


今回トリオはその真偽を究明すべく、選出されたベスト・テンから、放映権を得ることのできたいくつかのミニシリーズを特集放送している。結構興味を惹かれたが、しかし、結局私も現代の視聴者、「将軍」10時間一挙放送などと言われても、逆に尻込みしてしまう。毎夜放送どころか、マラソンで一挙連続放送だったりするのだ。というわけで今回は、たまたま私が家にいる時に放送していた「将軍」の一部のみを見てみたのだが、とにかく、その、悠揚迫らぬ時間配分や演出姿勢に魂消てしまった。


まず、なんといっても撮影に時間のかかる1シーン1ショットが多い。これだけでも充分驚いてしまうのだが、かなり画面に人物の数が多いロング・ショットでも、これを使う。一人でもなんかミスしたら撮り直しだろうに。切り返しのショットなんて、ほとんど忘れた頃に挿入され、画面がカットされると、思わずふーっとため息をついてしまう。MTVとはまったく別の時代の編集スタイルとしか言いようがないが、こちらの方が、役者が失敗できないという感覚にとらわれる分だけ、視聴者に緊張を強いる。いや、これを600分か、こりゃたまらんわ。


さて、90年代以前は多くがそのようにして製作されたミニシリーズの、以下が今回、「エピックTV」が選んだ史上ベスト・テンのカウント・ダウンだ。結局ABCが90年代に得意としていたスティーヴン・キング原作のミニシリーズや、やはり90年代に全ネットワークによって引っ張りだこになったロバート・ハルミSr.製作のファンタジー系ミニシリーズなんて、1本もランク・インしてないわけね。



10. 「テイルス・オブ・ザ・シティ/バーバリー・レーン28番地 (Tales of the City)」(94)

アーミステッド・モーピンの描いた群像ゲイ・ドラマの原作を映像化。この時は私も既にアメリカにいたからよく覚えている。何が話題になったかって、初めてTV画面に登場した男のゲイ・カップル同士の熱烈なキス・シーンが話題騒然となった。しかし今では「クイア・アズ・フォーク」の出現や、TVでのゲイ・パーソナリティの登場等により、これくらいの描写でびっくりする者はいない。今年の「MTVミュージック・アウォーズ」でのマドンナとブリトニーのキスなんて、何を今さらという感じだった。この番組が放送されてからまだ10年にもならないというのに、時の経つのは速い。また、番組はローラ・リニーがメイジャーになるきっかけとなった番組ということでも知られる。


9. 「フロム・ジ・アース/人類、月に立つ (From the Earth to the Moon)」(98)

今回のリストの中では最も新しいミニシリーズ。製作スティーヴン・スピルバーグ/トム・ハンクスというビッグ・ネイムが、人類を月に打ち上げたアポロ計画をミニシリーズ化。私見だが、アメリカ人には、このアポロ計画が、アメリカが国としての頂点を極めた時期を代表するプロジェクトだと感じている者が多いように思える。アメリカ人にとってこの番組は、涙なしでは見られない番組なのだ。


8. 「リッチマン、プアマン (Rich Man, Poor Man)」(76)

持つ者持たざる者、富める者貧する者をリアルに描いた群像劇。売れる前のニック・ノルティが貧乏な生まれの青年として出演、これで人気者になった。


7. 「ホロコースト (Holocaust)」(78)

読んで字の如しの第二次大戦を舞台にしたドラマなのだが、この番組が今なお語り継がれているのは、番組の質そのものよりも、これまではほぼ無名だったが、これに出て全米中にその存在を印象づけた、メリル・ストリープの実質上のデビュー作であるということに尽きる。あらゆる苦難を受けてなお耐える彼女が、全米の涙を誘った。ストリープがその後ハリウッドで大スターとなったのも、この番組あればこそ。


6. 「戦争の嵐 (The Winds of War)」(83)

TV番組というのにハリウッド映画を凌ぐ製作費をかけ、数年に及ぶ撮影の末に完成した一大戦争絵巻。ロバート・ミッチャムの渋さの極致のような演技と、一方で既に引退したかのように思われていたアリ・マッグロウの若々しい演技が印象に残る (そうだ)。なお、この番組の成功の余韻を受け、さらに巨額の製作費をかけて製作された続編の「戦争と追憶 (War and Remembrance)」は、こちらも製作者としては自信作にもかかわらず、視聴率的には惨敗、柳の下にどじょうは何匹もいないことを証明した。「戦争と追憶」には有名になる前のシャロン・ストーンも出ている。


5. 「ブライズヘッドふたたび/華麗なる貴族 (Brideshead Revisited)」(81)

イーヴリン・ウォーの原作を基に英国の上流階級の姿をまったりと描く、のちのマーチャント/アイヴォリー作品群の先駆けとなったとも言える番組。実はそれだけでなく、裏のテーマとしてのホモ・セクシャリティが、当時の視聴者に与えた影響は多大なものがあったらしい。なんてったって、「テイルス・オブ・ザ・シティ」が出現するのは、それからまだ10年以上も先の話なのだ。しかし、あからさまに描いているわけではないが、そのせいでよけいにエロいとされるジェレミー・アイアンズとアンソニー・アンドリュースのような関係は、直接描写が主流の現在ではもう描かれることもないだろう。


4. 「ソーン・バーズ (The Thorn Birds)」(83)

「将軍」にも出演したリチャード・チェンバレンが、今度は宣教師としての許されない愛の狭間で揺れ動く姿を描いた恋愛巨編。要するに不倫ドラマとなんら変わるわけではないが、これぐらい大風呂敷を広げて、さあ、どうだとばかりに提出されると、それはそれで確かに見応えがあって面白かったりする。受け身に回るチェンバレンを押しまくるレイチェル・ウォードのはつらつとした色気がまぶしい。因みに続編の「ソーン・バーズ: ザ・ミッシング・イヤーズ (96)」は、完全にぽしゃった。


3. 「ロンサム・ダブ/モンタナへの夢 (Lonesome Dove)」(89)

シリーズではなく、単発のTV映画/ミニシリーズとしては、この番組がいまだに最高傑作と考えている者の多い、アメリカTV界の西部劇の最高峰。主演の二人、ロバート・デュヴォールとトミー・リー・ジョーンズはこの時までに既に知られていた俳優だが、少なくとも二人がその後もちょくちょく西部劇に顔を出すようになったのは、ひとえにこの番組あってこそ。ダイアン・レイン、デニー・グローヴァ-、クリス・クーパー、アンジェリカ・ヒューストンといった脇の豪華さもたまらない。とはいえこちらも、ジョン・ヴォイトを起用して製作した続編の「リターン・トゥ・ロンサム・ダブ (Return to Lonesome Dove)」(94) は、見る影もなくぽしゃった。こちらにも売れる前のリース・ウェザースプーンが出ていたりするというポイントはあるが。


2. 「将軍 (Shogun)」(80)

かつてこの番組がNBCによって放送された時、ショーグン現象とも呼ばれる社会現象まで巻き起こったという大河ミニシリーズ。当時田舎から上京してきたばかりの私の耳には、島田陽子が脱いだんだってさという話しか伝わってこなかった。米ミニシリーズを代表する顔、リチャード・チェンバレンがここでも登場。世界中の女性を虜にしたあなたが、それなのにのちにゲイとしてカミング・アウトするとは、当時はお釈迦様でも気がつくまいて。


1. 「ルーツ (Roots)」(77)

文句なし。この番組がなければ、多分現在までミニシリーズという一ジャンルが生き永らえることはなかった。米TV界に燦然と輝く金字塔。この番組を見たことがない者でも、クンタ・キンテという一度聞いたら忘れられない主人公の名前は、まだ耳に残っているはず。







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Epic TV: Top Ten Miniseries of All Time

エピック TV: トップ・テン・ミニシリーズ・オブ・オール・タイム   ★★1/2

 
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