End of Days

エンド・オブ・デイズ  (1999年12月)

20年前、月の上に星が流れた夜、将来サタンと結ばれるべく生まれた一人の女の子があった。彼女は1999年12月31日にサタンと結ばれ、そしてサタンは世界を支配するはずだった。そこに立ちはだかるのが‥‥もちろんシュワルツネッガー、頑張れ、アーノルド、世界を救うのだ。


なんて茶化したくなるほどシュワルツネッガーが活躍しまくる。出だしはダークな雰囲気で、結構期待させてくれるのだが‥‥もちろん期待通りシュワちゃんは活躍してくれるのだが、しかし、画面にシュワルツネッガーが登場した途端、誰もあんたに演技は期待しとらんよ、と叫びたくなってしまった。暴漢に妻と娘を殺され、ほとんどアル中一歩手前、自殺という言葉が頭をよぎる内省的なシュワちゃんという設定なのだが、我々が見たいのはそんなシュワルツネッガーではない! と声を大にして言いたい。


結局後はスーパーパワーでたとえ相手が人間じゃなくてもやっつけてしまうんだから、演技なんてそういうできないことは止して、いつものようにスカッと格好よく相手を蹴散らしてくれんかね、と思うのだ。結局、いったん画面に登場した後はほとんど出ずっぱり。キリストの磔の真似なんかまでして、なんか、自分の映画を自分でぶち壊してしまった、という印象が残る。「デイライト」のスタローンがこんな感じだったな。


ニューヨークが舞台ということもあり、街頭ロケも結構出てくるのだが、こんなに街中であれこれぶち壊していたら大変だったでしょう。いくらCGでいくらか誤魔化してはいても、これだけの撮影は金も時間も人手もかかったに違いない。マンハッタンで働いているとよく映画の撮影にぶつかるのだが、撮影前日から道路にパイロンを置いて路上に車を止めないようにし (ハリウッド作品の街頭ロケの場合、通常、なにげに路上に止まっている車から通行人まで、スクリーンに映っているのはすべてプロップかエキストラである)、非番の警官を雇って車や市民の交通をコントロールし、時に苦情を申し立てる市民をなだめたりすかしたりしながら (当然、一般道が通行止めになったりすると食ってかかる奴も多いわけだ) 撮影を続けるのは、並大抵の所業じゃない。ここまでしても公開後観客が入らず2、3週で劇場から消えたりすると、人ごとながら胸が痛む。「エンド・オブ・デイズ」は一応もとはとれたようで、よかったよかった。


でも今回思ったが、シュワルツネッガーの将来は不安である。あとしばらくしたら彼も今のようなムキムキマン的な正義の味方はできなくなるだろう。その時演技のできない彼はつぶしがきくまい。彼は自分自身そのことを充分わかっているから時にコメディに挑戦しているのだろうが、シリアスものはまず無理だしな。私の同僚の口の悪いアメリカ人は、老人向け映画の正義の味方なんていいんじゃないの、なんて言っていたが、冗談になってないところが怖い。あと5年経ったら「ターミネーター」ももう無理だろう。


その点、スタローンの方がまだ時にはシリアスな役に挑んでいたりして、まだまだやれるような気がするし、正義の味方役が主体でもハリソン・フォードはラヴ・ロマンスもこなせる。いくら演技ができなくて母国語くらい満足に喋れないのかと批評家からけなされても、あの顔がある限りキアヌ・リーヴスだってあと10年はやっていけるだろう。ジム・キャリーも巧くコメディからドラマ路線にスイッチできた。シュワちゃんの10年後は‥‥と考えると、不安にならざるを得ない。今のうちに早く政治家にでもなってた方がいいのではないだろうか。


監督のピーター・ハイアムスは撮影もこなす多芸な人。今回も撮影と合わせて二足のわらじをはいている。暗いムードを前面に押し出した映像は雰囲気たっぷりでなかなかのもの。しかし監督としては‥‥ジャン・クロード・ヴァン・ダムが主演した「サドン・デス」も、アクションたっぷりなのに的が絞れずイマイチだったが、今回も似たような印象を受けた。この人は撮影に専念した方がいいんではなかろうか。まあ、シュワルツネッガーの主演映画なんだからアクションさえよければいいんだ、というのは確かにあるけれども。でも「サドン・デス」だって、アクションはよかったんだよ。それが大コケして、ヴァン・ダムも以来落ち目で、主演作が劇場公開されなくていきなりTVで放送されたりしているのを目の当たりにしていると、どうしても気になってしまう。シュワルツネッガーも今のうちにキャメロンともう一度組んで、「ターミネーター」の最終話を作っといて貰えないだろうか。


ところで、今週からスティーヴン・キング原作、トム・ハンクス主演の「グリーン・マイル」が公開された。私はフランク・ダラボンの前作「ショーシャンクの空に」に痛く感動した口なので、原作と共に楽しもうかと本も買ってあった。しかし、しかしである。これも3時間! 頼むから止めてくれ! 一気に見に行く気が失せた。だって同じ原作者を同じ監督が演出する同じ刑務所ものだろう、3時間はないでないの。とにかく、最近私は腰が痛くなって3時間なんてとてもじゃないが椅子に座ってられないのだ。


先の私の同僚はハンクスが嫌いだから見に行かないと言っていたが、ハンクスがなぜスターなのかわからないとする彼の意見は一理ある。「フィラデルフィア」は別に悪くなかったが、「フォレスト・ガンプ」なんて過大評価されている映画の最たるものだろう。別に悪いとは言わないが、目の色変えて絶賛するような映画ではないことは明らかである。「プライベート・ライアン」にしたって、彼よりも他の兵士の方が印象に残る。あとはせいぜいメグ・ライアンの相手役くらいしか残っていない。それなのにオスカー2個もとってハリウッドの大スターと目されているのは少々解せないが、これもハリウッドの不思議の一つである。


あと、「トイ・ストーリー2」がえらく評判がいい。アニメーションに食指を動かされない私としては、それでもヴィデオになったら見るか、くらいの気持ちしかないが、しかし、「ポケモン」フィーヴァーの影響を受けて跡形もなく消えてしまった「Princess Mononoke」、つまり「もののけ姫」はあまりにも可哀相である。こっちでも評判は結構よかったのだ。しかしジャパニメーションとして旋風を巻き起こした「ポケモン」は、「もののけ姫」を蹴散らしてしまった。公開時期が悪かった。記憶に残っている最後に見たアニメーションが「天空の城ラピュタ」で、それを大層楽しんだ私としては、「もののけ姫」にも頑張ってもらいたかったのだが。ああ、でも、今はそれでもアニメーションを見に行く気はしない。宮崎さんごめんなさい。こっちで「ラピュタ」やったら、その時は見に行きますから。






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