放送局: ブラヴォー (Bravo)

プレミア放送日: 12/11/2000 (Mon) 20:00-22:00

製作: シルク・ドゥ・ソレイユ・イメージス

製作総指揮: ピーター・ワグ

製作: ロッキー・オールドハム

監督: デイヴィッド・マレット

編集: デイヴ・ガードナー

舞台監督: ガイ・キャロン

創作監督: ギル・ステュ-クロワ

音楽監督: ヴィオレイン・コラーディ

美術: ステファン・ロイ

衣装: フランソワ・バーボー

振付: ジュリー・ラシャンス

照明: リュック・ラフォーチュン

出演: シルク・ドゥ・ソレイユ


内容: シルク・ドゥ・ソレイユの新パフォーマンス、「ドラリオン (Dralion)」公演の録画。


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新サーカス・パフォーマンス集団シルク・ドゥ・ソレイユについては、いまさら紹介の必要もないだろう。1984年にカナダのモントリオールで結成されたこのグループは、従来のサーカスの概念を打ち破る新たな技と芸の世界を拡大し、いまや世界中で引っ張りだこの人気パフォーマンス・グループとなっている。これまでの「ヌーベル・エクスペリエンス (Nouvelle Experience)」、「サルティンバンコ (Saltimbanco)」、「ミステール (Mystere)」、「アレグリア (Alegria)」、「キダム (Quidam)」等のパフォーマンスはすべて大ヒット、現在はアメリカだけでもラスヴェガスで「O (オー)」、フロリダのディズニー・ワールドで「ラ・ヌーバ (La Nouba)」というパフォーマンスを半恒久的に演じている他、99年発表の新作「ドラリオン」が各地を巡業中である。しかも前出のパフォーマンスもいまだに世界中で巡業公演が行われていて、世界のどこかでシルクの公演が行われていない日はないという人気振りなのだ。


「ドラリオン」は昨年から北米公演が始まったシルクの新作である。タイトルはドラゴン+ライオンの造語であり、人間離れした軽業で知られる中国雑技団をフィーチャーしている。「オー」、「ラ・ヌーバ」は確かまだTV放送されていないはずだから、それらを一足飛びに飛び越えて先にTV初お目見えということになる。「オー」、「ラ・ヌーバ」は専用恒久施設での公演だから、TVで放送しちゃったら場所に客を呼べなくなって、何かまずいことがあるのかも知れない。あるいはその施設との契約でTV中継はしないことになってるというところだろう。私は水を使うパフォーマンスの「オー」を是非見てみたいと思っているのだが、TVで見れる可能性は低そうだ。これだったら昨年旅行でラスヴェガスに行った時、無理しても見ておくんだった。


私が実物を見た公演は、「キダム」だけである。マンハッタンの最南端、自由の女神を見渡すバッテリー・パークのすぐそばに特設テントを建て、そこで公演していた。その後で、やはりブラヴォーが放送したこの公演のTV版を見たのだが、どう見てもTVの方が演目が多い。さては私が見た公演は手を抜いてたかとも思ったが、まあ、そんなもんでしょう。こういう公演の生と録画を見較べてみると、どちらも一長一短だなということがよくわかる。舞台やスポーツと一緒だ。やはり臨場感という点では生に勝るものはないが、見落としたところの確認や、遠目ではよくわからなかったところのクロース・アップでは、TVの方に軍配が上がる。私はどちらも楽しい。


さて、今回見た「ドラリオン」であるが、実はこれがとんでもない代物なのだ。パフォーマンスのことを言っているのではない。TV中継のことを言っているのだ。もちろん悪い意味でとんでもないのである。その悪い理由も、本当に頭に来るという点では実はたった一つしかないのだが、それが許すべからざる大罪なのだ。つまり、この公演録画では、パフォーマンスの最大の決めの瞬間にスロウ・モーションを使用するのである。


いったい、こういった演出をしたTV監督は何を考えていたのであろうか。ああいう芸の最大の醍醐味は、クライマックスの瞬間において、あまりの早技で一瞬何が起こったかよくわからなかったが、何か凄かったぞという興奮をもたらせてくれるところにある。一瞬、あっと思い、次の瞬間、大技を決めたパフォーマーがさも大したことでもなかったかのように軽くお辞儀をする。観客は一瞬呆気にとられ、次の瞬間大喝采。これがいいんじゃないか。空中ブランコをしていて、次第に画面がスロウになっていってしまったのを見た時、私は目の前が真っ暗になってしまった。なんだ、これ。シーソーを使って人間を空中に打ち上げ、人間ピラミッドを作る。その最後の大技で、やっぱりスロウになる。ふざけるな、バカ。


スロウにしちゃったらしょうがないんだよ。臨場感を殺すだけだというのがわからないのだろうか。もし、何が起こったのかをよく見たい、知りたいということなら、視聴者は番組を録画して勝手にスロウで再生して見るよ。私はあまりに頭に来たので、なんとかスロウの部分を平常の速さに戻せないものかと思ってスロウになるとわざと早送りにしてみたりしたのだが、やはりうまくいかない (私は番組を録画しておいたのだ)。結局頭に来て諦めた。


会場にいる一般客をまじえての寸芸というのも、シルクの持ち芸の一つである。あれはいつ見てもうまいと思う。ところが今回、観客席にいたその一般人が、その後一緒に舞台に上って芸をしている。いくらなんでもあれは事前の打ち合わせなしじゃ不可能だ。もしかしてこれってヤラセ? だとしたらその前に彼を見て大笑いしてしまった私がバカみたいじゃないか。なんだか解せんなあ。


あと、多分実際にはHDTVかなんかで撮影したのだろう、本当は横長の画面を無理に4:3の比率に縮小したようで、人間が縦に間延びしている。なんでこういうことが平気でできるわけ? 私にはわけがわからん。ああいう空間芸で、空間の比率を歪めて見せるということに誰も異を唱えないのだろうか。こういう場合は上下に黒枠を入れたレターボックス・ヴァージョンにしてくれよ。でもこれはシルクの名誉のために付け加えておくと、放送したブラヴォーの責任かも知れない。そんなこんなで、パフォーマンスそのものは相も変らず斬新で面白いのだが、見た後に後味の悪い思いが残った。サーカス見て嫌な気持ちになってたらしょうがないだろう。なんだかなあ。


ブラヴォーは今回、「ドラリオン」のプレミア放送に合わせ、過去に同チャンネルが放送したシルクの他のパフォーマンスも再放送した。初期の頃のパフォーマンスを録画した「ウィ・リインヴェンティド・サーカス (We Reinvented Circus)」、および「ヌーベル・エクスペリエンス」、「サルティンバンコ」、「キダム」である。これらを見ると、「ウィ・リインヴェンティド・サーカス」が録画された80年代後半は、当時としては画期的だったとはいっても、まだ一般的な概念としてのサーカスの域からは出ていなかったことがよくわかる。今現在私たちが知っているパフォーマンス集団としてのシルクの特色が定着するのは、「ヌーベル・エクスペリエンス」からだ。


いずれにしても、上記の公演録画はほとんどスロウ・モーションは使用していなかった。それなのになんで今回はこういうことになっちゃったのか。関係者には猛省を望みたい。あんな演出をした監督は救いようがないが、それだってプロデューサーか誰かがOKを出しているわけだろう。なぜどこかでストップがかからなかったのか。本当に謎だ。シルクの次の公演のTV中継ではスロウ・モーションなど使用しないことを切に望む。今年、シルクはIMAXでも特別の新作を公開したが、それにもスロウ・モーションは使われていなかっただろうな。心配になってしまう。TVならともかく、金払って見てスロウなんか使われたら、本気で入場料の払い戻しを求めるぞ、私は。ところで、話は変わるがシルクのパフォーマーたちって、やっぱりみんなゲイなんですかね。  






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Cirque du Soleil: Dralion

シルク・ドゥ・ソレイユ: ドラリオン   ★★

 
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