Dollhouse  ドールハウス

放送局: FOX

プレミア放送日: 2/13/2009 (Fri) 21:00-22:00

製作: ミュータント・エネミー、20世紀FOX TV

クリエイター/製作総指揮: ジョス・ウェドン

共同製作総指揮: デイヴィッド・ソロモン、エリザベス・クラフト、サラ・ファイン

製作: エリザ・ドゥシュク、ケリー・マナーズ

脚本/監督: ジョス・ウェドン

撮影: ロス・ベリーマン

美術: スチュアート・ブラット

編集: ピーター・バシンスキ

音楽: マイケル・ダナ、ロブ・シモンセン

出演: エリザ・ドゥシュク (エコー)、ハリー・レニックス (ボイド・ラングトン)、オリヴィア・ウィリアムス (アデル・デヴィット)、フラン・クランツ (トファー・ブリンク)、ターモー・ペニケット (ポール・バラード)、ディーチェン・ラクマン (シエラ)、エンヴァー・ジオカイ (ルボフ)、イエミー・アッカー (クレア・ソーンダース)、リード・ダイアモンド (ローレンス・ドミニク)


物語: アンダーグラウンドの組織ドールハウスは、彼らに所属するエージェントの記憶を完璧に抹消し、新しいまったく別の記憶を埋め込むことで、クライアントが欲するどんな種類の人間をもその都度提供することを可能にしていた。その一人エコーに与えられた指令は、南米出身の富豪の娘を誘拐した男と交渉するネゴシエイターの役だった。しかしネゴは思うように行かず、一方、ドールハウスを内密に調査するFBIのエージェント、バラードも前に立ちはだかる‥‥


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「バフィー 恋する十字架 (Buffy the Vampire Slayer)」で知られるジョス・ウェドンは、製作する番組にSF、ファンタジー色が絡むオタク系プロデューサーとして、若い視聴者に人気が高い。同様にオタク系というとすぐに連想するJ. J. エイブラムスが、ネットワークでは多少視聴者の年齢層が高いABCを中心に番組を製作しているのに較べ、ウェドンの場合、「バフィー」を放送していたWB/UPN、その後の「エンジェル (Angel)」のFOX等、主としてティーンエイジャーや20代くらいまでの視聴者がファン層の主体だ。


そしてウェドンの名を出した時にほとんどセットで思い浮かぶのが、上記のウェドン番組に出演し、そして今回ウェドンが製作する新番組「ドールハウス」に主演している、エリザ・ドゥシュクの存在だ。


ドゥシュクは「バフィー」に主演していたサラ・ミシェル・ゲラーにわりと近い印象があるが、ゲラーよりもコケティッシュな魅力がある。微妙に垂れ気味の大きな目が最大のチャーム・ポイントだ。ウェドン番組以外では、TVでは「トゥルー・コーリング (Tru Calling)」、映画では「クライモリ (Wrong Trun)」とかに出ており、やはりホラー/SF系統だ。いずれにしても、やはりドゥシュクはウェドンのお抱え女優という印象が強い。


そのドゥシュクが主演する新番組「ドールハウス」は、人の記憶を完全に抹消したり新たにインプットしたりして別の人格を植えつけ、完全に別の人間として、要請されるあらゆる仕事に対応するという地下組織ドールハウスを舞台とするSFだ。ドゥシュクが扮するのが主人公エコーで、彼女以外に、やはりいつも異なる人格を植え込まれて仕事をする仲間のシエラもいる。


彼女らは毎回仕事の度に新しい人格を植えつけられ、新しい技術を身につける。時にはなんらかの拍子に、完全に消え去っていはいない記憶や脳細胞の働きによって、予想外の反応を起こすことも考えられる。ドールたちは非常にデリケートな存在なのだ。そのため彼女たちには常に1対1で行動を把握する、ハンドラーと呼ばれるお目付け役が行動を共にする。彼らはいかなる時でも一蓮托生なのだ。


番組第1回でエコーに与えられる人格は、ネゴシエイターだ。南米や東南アジアでは営利誘拐がほとんどビジネスとして存在している。ドールハウスに出動を要請してきたクライアントも南米出身の富豪で、娘を誘拐され、その交渉の任に充てられたのがエコーだった。しかし犯人との取り引きの現場でエコーの記憶に障害が起こり、犯人一味は逃走する。一方、ドールハウスの秘密を執拗に付けねらうFBIエージェントのバラードの存在もエコーらの立場を危うくしていた‥‥


ドゥシュク以外では、彼女のハンドラーのラングトンをハリー・レニックスが演じている。「マトリックス」にも出ていたし、「レイ」にも出ていた。先シーズンの「24」にも出ていたし、さらに先週見た映画の「ステイト・オブ・プレイ (State of Play)」で、主人公の新聞記者を演じるラッセル・クロウを締め付ける刑事役としても見たばかりだから、引く手数多と言っていいだろう。ドールハウスの経営者アデル・デヴィットを演じるのが「シックス・センス」のオリヴィア・ウィリアムスで、彼女の顔を見るのは久しぶり。FBIエージェントのバラードを演じるのは、アメリカでは「バトルスター・ギャラクティカ」で知られるターモー・ペニケット。


しかし出演者でドゥシュクの次に印象に残るのは、同じくドールの一員であるシエラを演じるディーチェン・ラクマンだろう。角度によってはすこぶるつきの美人、別の角度からだと魚の平目面、美人なのかそうなのかよくわからないエキゾティックな顔立ちだ。FOXのHPによると、なんでも母親が日本にいる時に彼女を懐胎し、カトマンズで生まれ、ネパールで育ち、オーストラリアに移住して、現在はアメリカで仕事しているという。いったい何国人になるのだろうか。


とまれ「ドールハウス」は、ドゥシュクに多くを負っており、毎回別人格となって生まれ変わるドゥシュクの様々な姿かたち、魅力を存分に見せることに多くの時間を割いている。例えばプレミア・エピソードで扮するネゴシエイターでは、ドゥシュクはひっつめ髪のメタル眼鏡フレームにビジネス・スーツという出で立ちで、番組第2回では今度は打って変わって舞台は山の中でのサヴァイヴァルとなって、ラフな格好で擦り傷青タン作りながらのアクション主体となる。ドゥシュク・ファンにはたまらないだろう。番組はある意味ドゥシュクのプロモーション・ヴィデオを見ている感じに近いとすら言える。


こういうサーヴィス精神満載の「ドールハウス」であるが、実は現在、視聴率的には伸び悩んでいる。番組は金曜夜に「ターミネイター: ザ・サラ・コナー・クロニクルズ (Terminator: The Sarah Connor Chronicles)」と抱き合わせで放送されているのだが、「ターミネイター」は昨シーズン、鳴り物入りで放送が始まって以来、地盤沈下が著しく、先頃放送されたシーズン最終話がシリーズ最終話になるだろうと噂されている。製作者側もこれで打ち切られる可能性が高いことを知っているから、これが番組最後のエピソードとなってもそれなりに話の辻褄がついてキリがいいとも言えるところで終わっていた。


「ドールハウス」の方は番組は始まったばかりであり、ウェドンはこれからどう話を展開させるかを考えているところで、現在番組はいったん棚上げされている。ドールハウスがなぜ、どうやってできて、エコーの前身は誰で、どういう経緯でドールとなったのかという最も興味深い部分の解明はこれからのはずだが、このままキャンセルされちまったんでは謎は解明されないまま終わってしまう。


実際の話、近年のウェドンの打率はそんなによくなく、「エンジェル」以降、FOXで製作した「ファイヤーフライ (Firefly)」は途中キャンセルされた。話をキリよく終わらせるために劇場用映画の「セレニティー (Serenity)」を作って強引に辻褄つけて終わらせたものの、やっぱりよくわからなかったという話をよく聞いた。「ドールハウス」が同じ轍を踏む可能性は大いにある。私個人としては特にこの番組にはまっているわけではないが、しかしやっぱり、エコーの過去はきっちり解明してもらいたいと思うのであった。








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ドールハウス   ★★1/2

 
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