放送局: ショウタイム

プレミア放送日: 3/9/2007 (Fri) 23:00-23:30

製作: ワールド・オブ・ワンダー・プロダクションズ

製作総指揮: ランディ・バルバト、フェントン・ベイリー、スティーヴン・ハーシュ

出演: サヴァンナ・サムソン、ステファニ・モーガン、サニー・レオン、キャシディ・レイ、ポール・P.T.・トーマス、シャイラー・コービー、スティーヴン・ハーシュ、マーシ・ハーシュ、イーオン・マッカイ、モニーク・アレグザンダー


内容: クラシック・ポルノ映画のリメイクを撮る様をとらえるリアリティ・ショウ。


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現在「ブラザーフッド」「デクスター」、「チューダーズ (The Tudors)」等の話題作を矢継ぎ早に連発、ライヴァル・ペイTVのHBOに追いつき追い越さんとしているショウタイムは、検閲の入らないペイTVという地位を利用して、これまたHBO同様、ふんだんに画面に裸があふれ出るリアリティ・ショウも製作している。HBOの「キャットハウス (Cathouse)」、「リアル・セックス (Real Sex)」等に対する、ショウタイムの「ファミリー・ビジネス」等がそれだ。


ネットワークでは裸の放送はご法度だが、今度はペイTVになればヘアや性器そのものを放送してもかまわないという理屈は、子供でも簡単にTVをつけてHBOやショウタイムを見れる現在、ほとんど役に立たない理由づけとしか思えない。一方で建て前上、そういう基準というものが必要という考え方もわからないではない。誰も気にしなくても、そういう一応のルールがあるということの方が重要なのだ。


いずれにしても、とにかくHBOとショウタイムの、このポルノまがい、というかほとんどポルノのかなり根強い人気のある裏シリーズも、私は結構よく見ている。というか、HBOの姉妹チャンネルのシネマックスやショウタイムのマルチプレックス・チャンネルでは、深夜にポルノ番組をよくやっていて、チャンネル・サーフしてたら嫌でも目に入る。で、ついつい見ちゃうわけだ。それでも、もうちょっと脱ぐ方が恥ずかしかったりしてくれた方が実は見る方としても気が入るのだが、いかんせん開けっぴろげなアメリカのにーちゃんねーちゃんは、堂々と明るい陽の下での屋外セックスに余念がない。というか、こいつらにとってはかなりの部分セックスはスポーツなんだろうなとすら思わせられたりする。


今回ショウタイムが編成したポルノ系の新シリーズ、「デビー・ダズ・ダラス・アゲイン」は、その燦々と輝くLAの明るい陽の下で、せっせとポルノ番組製作に勤しむ者たちをとらえる。実は私は知らなかったのだが、1978年製作のポルノ映画「デビー・ダズ・ダラス」は、正式な続編や海賊的スピンオフを数えると、いったい何作製作されているのか誰もわからないくらいのこのジャンルのクラシックとして屹立しているのだそうだ。「デビー・ダズ・ダラス・アゲイン」は、つまりそのリメイクを製作する様をとらえるリアリティ・ショウだ。


正直言うと、ほとんど隠微なものを感じさせないアメリカのポルノは私にとってはほとんどポルノとして機能しないため、特に気になる分野ではなく、私はオリジナルの「デビー」そのものもまったく知らなかった。私が知っているアメリカのポルノやアダルト産業は、だいたいタイムズ・スクエアと8番街の間の42丁目が、ジュリアーニ市長時代の再開発によって明るい家族向けストアやシアターが林立する場所として生まれ変わる前の一時代に限られる。この辺りはポルノ映画館やポルノ・ヴィデオ販売店が固まるニューヨークのアダルト産業のメッカで、私もここでなら何度かアメリカ産のポルノ・ヴィデオを買ったことがある。マーティン・スコセッシの「タクシー・ドライヴァー」で、ロバート・デニーロ扮するトラヴィスがポルノ映画を見ていたのがこの辺りだ。


一度くらいタイムズ・スクエアでポルノ見ないとと思って、私もデニーロみたいに一人で劇場に入ったことがあるのだが、あの胡散臭さというかやばそうな雰囲気はいきなり別世界で、小用に立って誰もいないトイレに入った時は、いきなり屈強な男がどこかから現れてオカマ掘られないかと本当に怖かった。見たポルノの内容などこれっぽっちも覚えていないが、まばらに客が点在する場内のどよんとした空気や、あのトイレの印象だけは今でも強烈だ。今の明るいタイムズ・スクエアからでは想像もできないくらい胡散臭い、胡乱な雰囲気が濃厚な場所が、たぶん世界で最も有名な観光地のすぐ目と鼻の先にあった。なくなってしまうとなんとなく懐かしく感じてしまうから不思議である。それにしてもなにかと比較される西海岸と東海岸では、ポルノというもののあり方もやはり違うと感じたのだが、NYでもポルノは段々明るくなっていくのだろうか。


そういう感傷はさておき、本題の「デビー・ダズ・ダラス・アゲイン」である。こないだNBCの「ミディアム」を見ていたら、主人公のアリソンを演じるパトリシア・アークエットのできの悪い弟マイケル役として準レギュラー出演しているライアン・ハーストが、姉譲り? の超常知覚を利用してサイキックとして電話身の上相談という趣味と実益を兼ねた商売をしているという設定になっていた。そのマイケルが電話で受け答えしながら見ていたのが、この「デビー・ダズ・ダラス」だ。どうやら本当にこの作品はクラシックとして誰でも知っているもののようだ。日本で言えば「愛のコリーダ」みたいなものだろうか。いずれにしても「愛のコリーダ」と「デビー」ではその印象に天と地の差がある。昼日中から「愛のコリーダ」を見ようという気になる者はあまりいまい。


さて、「デビー・ダズ・ダラス・アゲイン」では、アメリカで最大のアダルト・ブランドと自称するヴィヴィッド (Vivid)・エンタテインメントが、「デビー・ダズ・ダラス」のリメイクを企画し、その主演女優を誰にしようか悩んでいるというシチュエイションから始まる。いまんとこ候補に挙がっているのがステファニ、サニー、キャシディの3人で、ヴィヴィッド代表のスティーヴンは、この3人を中心にオーディションして最終的に誰かに決めようと考えている。


ところがヴィヴィッドの売れっ子であるステファニは、元々自分に話があり、自分が主演するものと決まっていると信じていた役のオーディションを受けなければならないと知って、面白くない。それでオーディションの話は断ろうかと思っている。それで、やっぱり自分じゃなければダメだったといってヴィヴィッドの連中に頭を下げて頼みに来させたいと思っているのだ。


一方、サニーは実はレズビアンの絡み専門で、男性とはHしない。しかし今回は作品が作品である。これに主演できたら、少なくともポルノ界での知名度は超A級になるのは必至、海外からも声がかかるかもしれないし、ポルノ界の外にも活躍の場が広がるかもしれない。そういうわけで、ここは一つ自分の趣味は度外視して男性との絡みを演じてもいいかなと思い始めている。


キャシディは黒髪のエギゾティックな容貌の持ち主で、人気もあるのだが、行動に独りよがりな点があり、はっきり言って問題児だ。おかげで仕事を干されそうになっているのをスティーヴンがわざわざ呼び出して今回の話を打診し、本人にやる気があるのを確認して、さて次は本格的にビジネスの話をしようと連絡したら、平気でそれをぶっちぎってしまう。で、本人は何をしているかというと、次の大役のためのフィールド・リサーチとばかりにポルノ・ショップで最新のDVDソフトやセックス・トーイを何百ドル分も買い込んでいるのだ。どう見ても仕事というよりは自分の楽しみを優先しているとしか思えない。これじゃ先が思いやられる。


さらにヴィヴィッドには、サヴァンナという大御所がいる。かつてのポルノ界の女王とでもいうべき存在だそうで、実は確かに聞いたことがあるような気がするのだが、たぶん、今は顔も身体も手を入れているだろうと思える容貌になっており、定かではない。いずれにしても、それでもいまだにプライドだけは人一倍あるサヴァンナは、よりにもよって主演のデビーではなく、その母親役をオファーされたことが我慢ならず、こちらもごねている。たぶん、さすがに主演は無理だと自分でも感じてはいるんじゃないかと思うのだが、話の持っていき方がまずく、へそを曲げてしまったんじゃないだろうか。


これだけでも既に充分頭を悩ませることばかりなのだが、ヴィヴィッドの看板演出家のP. T.までが、突然実現の程度を度外視したプランを持ち込んでは周りの者を驚かせる。今回もこういう大型企画なんだからヨーロッパで撮ったらどうか、フランスで「デビー・ダズ・パリス」なんてどうだろうと大真面目に言い出してスティーヴンや、アシスタントのマーシを面食らわせるのだ。海外でのポルノ撮影か。正直にその国に撮影プランを提出したら、とうてい許可は降りんだろうなあ。


番組は、屋外で別の作品を撮影中のP.T.、ステファニ、その他の関係者の面々をとらえるシーンから始まるのだが、たとえ木陰といえども暑いL.A.、セックスは当然全身運動だから、やる方は汗まみれである。どう見ても気持ちよさそうには見えない。監督は離れたところのこちらも日陰から演出するのだが、赤の他人とおしゃべりしながらの演出で、演じている俳優が気が散ってセックスに身が入らず、黙ってくれと言われてしまう。その後P.T.が、脚本では男優はステファニの目に射精することになっていると言い出すと、ステファニが、私はコンタクトだからダメと却下、だったら顔ならいいかと、P.T.は下手に出てみたりするのだった。


なんか、もう、どいつもこいつも少しずつずれていておかしい。いずれにしても、こういうのは見てると、仕事にしたらとてもじゃないけど楽しいHなんてできないんじゃないかと思えるのだが、やはり彼、彼女らはそれなりに楽しんでやっているのだろうか。それともやはり仕事と割り切っているだけか。しかし仕事と考えてしまったら、男優なんて立つものも立たなくなるんじゃないか。


実は私は昔、東京でバイトしている時に、同じバイト仲間からポルノ業界入りを誘われたことがある。別に私の見場やガタイがいいからとかいうのではなく、単に私が映画好きなことを知っていて、まるで業界のことをまったく知らないよりは、少なくとも映画の撮り方のイロハくらいなら知っている者ということで声がかかっただけだが、丁重にお断りし、後日その男が出ているアダルト・ヴィデオを借りてきて見てみて、自分で演出して主演するそのハードぶりに、やはり私にはできそうもない世界だと思わせられた。今回もまったく同じ感想を持ったわけだが、やっぱり何事も仕事となると甘くないのだった。







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Debbie Does Dallas Again


デビー・ダズ・ダラス・アゲイン   ★★1/2

 
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