IRT Deadliest Roads   アイス・ロード・トラッカーズ: デッドリースト・ローズ

放送局: ヒストリー

プレミア放送日: 10/3/2010 (Sun) 22:00-23:00

製作: ヒストリー・チャンネル

製作総指揮: ソム・ビアーズ、フィリップ・シーガル、ジュリアン・ホブス

出演: リック・イェン、リサ・ケリー、デイヴ・レドモン、アレックス・デボゴースキ


内容: シルク・ロードで物資を輸送するトラック・ドライヴァーたちに密着する。


Top Gear   トップ・ギア

放送局: ヒストリー

プレミア放送日: 11/21/2010 (Sun) 22:00-23:00

製作: BBCワールドワイド・アメリカズ

製作総指揮: スコット・メシック、ジョン・ヘスリング

出演: アダム・フェラーラ、タナー・フォウスト、ルトレッジ・ウッド


内容: BBCのクルマ・テーマのスポーツ・リアリティ「トップ・ギア」のリメイク。


_______________________________________________________________




































ヒストリー・チャンネルは、もちろん歴史テーマの専門チャンネルだが、わりとエンタテインメント性を備えた番組も多い。最近ではなんといってもお宝発掘系リアリティの「ポーン・スターズ (Pawn Stars)」と「アメリカン・ピッカーズ (American Pickers)」の人気が双璧で、「アメリカン・リストレーション (American Restoration)」というスピンオフ番組もできた。


そのヒストリーに戦争をテーマにした番組が多いのは当然だが、その中でも特に目がつくのが、乗り物テーマの番組だ。戦車や戦闘機、潜水艦、空母といった、戦闘用の乗り物、もしくは武器に焦点を当てて番組を製作するケースが多い。要するに男性が見ているチャンネルなのだ。別に必ずしも戦闘用ではなくても、乗り物には食指が動く。


その特徴がよく出たのが、いまだに人気のある「アイス・ロード・トラッカーズ (Ice Road Truckers (IRT))」であり、今回放送の始まった、そのスピンオフである「IRT デッドリースト・ローズ」だ。共にトラック・ドライヴァーに密着するリアリティ・ショウだ。


アメリカではトラック輸送は物資輸送の基本で、多くのトラック・ドライヴァーがいる。エイティーン・ホイーラーズと呼ばれる18輪のトラックでアメリカを縦断横断する。マンハッタンを外れるとどこでもよく大型トラックにすれ違うし、スーパーマーケットでは四六時中荷物を降ろしていたりする。


感心するのがドライヴァーたちの運転技術で、わりと狭そうな場所や集配ドックにバックで綺麗に一発で着けたりする。運転席から荷台の一番後ろまではそれこそ20メートルくらいあるのだ。また、消防署とかでは、これまた両側の空いたスペースが20センチくらいずつしかない狭い格納スペースに、これまたバック一発の切り返しではしご車をすいすい入れたりする。正直言って惚れ惚れして見とれる。マンガの「イニシャルD」で、主人公の拓海が、調子のいい時にはガード・レールに1センチまで寄れるぜとかなんとかいうセリフがあったが、この車体感覚をもってすれば、非常に納得できる。


はっきり言ってこれらは努力云々の問題ではなく、才能としか言いようがない。生まれながらにしてその車体感覚を持っているかいないかであって、もし持っていなかったとしたら、どれだけ練習しようとも絶対習得できる類いの技術ではない。自慢じゃないが、私はどんなに練習しても習得できない自信がある。


「IRT」も「デッドリースト・ローズ」も、そういうトラッカーたちが、非常に危険な道や環境下を走る様をとらえたリアリティ・ショウだ。「IRT」ではドライヴァーは氷結した湖上を走ったが、今回はシルク・ロードの一部を走る。と、言うは簡単だが、もちろん道は険しい。今回は、中国、インド、アフガニスタン、ネパール、ブータンの、ヒマラヤ山系を繋ぐNH21、NH22という道路を走って物資を輸送するのだが、これが氷結した湖上を走るのと同じか、それにも増してやばい道なのだ。


なんせシルク・ロードだ。基本的に何千年もの歴史のある道、というと聞こえはいいが、なんのことはないただの古い道だ。しかもそれが標高何千メートル、すぐそばはガード・レールもない絶壁という怖ろしい場所を走っている。その上、対抗が来るとすれ違うのもやっとという狭く、舗装すらされていないつづら折りの道が続くのだ。落ちたら遮るものは何もない地獄へ一直線だ。そんなところで追い抜きかけるな!


「IRT」も怖かったが、これも怖い。特に私のような高所恐怖症の気がある人間にとっては、本当にケツの辺りがむずむずする。いったいどこからとった数字かは知らないが、ヒストリーによると、4分半に一人が谷底に落ちて犠牲になっているという。昔シルク・ロードを制したものが巨万の富を得たというのもわかる気がする。


もちろんドライヴァーは名うての荒くればかりだが、中には女性もいる。正直言ってリサはかなり可愛い部類に入ると言ってもいいのではなかろうか。アメリカには女性トラック・ドライヴァーも多い。私も車を運転していて、すれ違うトラックをよく女性が運転しているのを見かける。街中で下手くそな運転をしているのはほとんどの場合女性ドライヴァーだが、下手なドライヴァーばかりというわけでもない。CBSの「サバイバー (Survivor)」のファースト・シーズンで、最後まで残った者の一人であるスーザンの職業がトラック・ドライヴァーであったことも思い出す。リサも怪我などせず仕事を遂行してもらいたい。


もう一本の乗り物テーマのリアリティ・ショウが、「トップ・ギア」だ。オリジナルはBBCが1978年から放送しており、2002年に大幅に改編を加えて現在まで続いている。クルマ・テーマの番組としてカルト的ファンがおり、アメリカにもそのファンは多かった。その番組を今回ヒストリーがリメイクしたものだ。とにかくクルマが好きで好きでたまらないという面々が、クルマの乗り心地や性能を試したり競争したりと、遊び心満載のクルマ好きのための番組だ。


番組第1回では、まずドッジ・ヴァイパーに乗って戦闘用ヘリコプタのコブラを振り切れるかどうかに挑戦する。もちろんヴァイパー、コブラ、共にヘビの仲間であることから連想した勝負だ。地上でちょこまかと逃げ回るヴァイパーをコブラが空から追尾し、ミサイル砲で射程にとらえ切れたらコブラの勝ち、ヴァイパーが振り切ってゴールしたらヴァイパーの勝ちだ。この勝負は結局ゴール間近でコブラがヴァイパーを射程にとらえたブザーが点滅、コブラの勝ちとなった。


毎回セレブリティにトップ・ギアのコースを走らせてみるという企画では、宇宙飛行士のバズ・オルドリンが小型車のスズキSX4に乗ってタイム・アタックする。最後がスーパーカーで知られるランボルギーニの中でベストのクルマを選ぶというもので、ガヤルド・スーパーレジェーラ、ガヤルド・バルボーニ、ムルシエラゴ・スーパーヴェローチェの3台を走らせて比較する。


これらがクルマ好きの遊び心を刺激するのは間違いない。クルマに乗ってミサイルを積んだヘリを振り切るなんてのは、多少は腕に覚えのあるドライヴァーならやってみたいと思うだろうし、ランボルギーニに乗ってみたくないクルマ好きはいないだろう。とはいえ、ほとんどの企画が勝負事ではあるが、そこはドライヴァーも違えば絶対的ルールというのもないので、公平な判断を下す基準はどこにもない。つまり、はっきり言ってすべて遊び企画だ。


ランボルギーニを走らせておいて、実は一番速かったのがヴァイパーだったというのは、思わずそうですかと言いたくなる。要するに比較するなら全部のクルマを同じドライヴァーが運転しないと意味がないし、その他の条件も同じにしないといけないのだが、そうではないので、癖を知り尽くして自分に合わせてチューンナップしてあるヴァイパーの方が、ランボルギーニより速いという結果になる。まあ、それはそれでそうだったかという驚きはあって、楽しめないこともない。


それなりに面白いなと思って、ではオリジナルはどういう番組だろうと、現在BBCアメリカで放送されているオリジナルの「トップ・ギア」も見てみた。そしたら、たまたまやっていたのが日本に遠征したエピソードで、ニッサンGT-Rが新幹線に勝てるかという勝負をやっていた。誰が決めたのか日本海側の石川県羽咋市を起点にして千葉県鋸山がゴールという摩訶不思議なルートで、新幹線との勝負というわりには起点も終点も新幹線は走ってないと思うのだが。要するにクルマ対日本の列車網との勝負といった方がわかりやすい。


羽咋の海岸でGT-Rを運転するドライヴァー (ジェレミー・クラークソン) と新幹線組の二手に分かれて勝負が始まるのだが、新幹線に乗る二人組 (リチャード・ハモンド、ジェイムズ・メイ) はまず駅はどこですかと地元の人に訊いてやっとのことでたどり着き、日本語を解さないので切符を買うのにも四苦八苦している。一方のGT-Rドライヴァーは、ナヴィがいきなり日本語で道を言い始めたのでこちらもパニックだ。なんというか、まあ。


しかも両者とも動き出すと、かなり異なるところを移動する。GT-Rはまず日本海側を北上して関越道を使って東京に入るが、新幹線組は南下して京都から新幹線だ。それから両者とも東京湾を渡ってゴールという段取りだが、ここまですいすいと楽勝で来たGT-Rは、さすがに東京の入り組んだ街中で道を間違える。日本語のナヴィを聞きとれなければ、道を間違えないというのはまず無理だろう。一方の新幹線組はたぶん新横浜で乗り換えだが、そこからJR-京浜急行と乗り継ぐ必要があり、これまた苦労している。ローカルの知識がなければ日本人だって迷うところを、券売機で日本語が読めず、何を買っていいのかわからないのだ。焦る気持ちはわかる。


フィニッシュはGT-Rはアクアラインを通って千葉に入り、新幹線組は久里浜からフェリーで鋸山を目指す。目的地は間近だ。ドライヴァーは闘魂と書いてある日の丸の鉢巻きを締めるが、それ、上下逆なんですけど。フェリーを降りた新幹線組は、いつの間に用意してあったのかちゃりんこに乗り、ロープウェイに乗り継いで鋸山山頂を目指す。GT-Rは登りのワインディング・ロードを疾走する。いつの間にか鉢巻が直っているぞ。誰が指摘したんだ。結局勝負はこんないい加減なルールに見えて、わずか3分差という僅差でGT-Rが勝った。なんというか、最後はCBSの「ジ・アメイジング・レース (The Amazing Race)」を見ているみたいで緊張したぞ。








< previous                                    HOME

 

IRT Deadliest Roads

IRT デッドリースト・ローズ   ★★★

Top Gear

トップ・ギア   ★★1/2

 
inserted by FC2 system