耐久アーティスト、デイヴィッド・ブレインが60時間にわたってさかさまに吊り下げられる「ダイヴ・オブ・デス (Dive of Death)」については、いつものようにネットワークのABCが中継したこともあり、それを中心にTV観賞ノーツの方にも書いた。しかし今回はついに念願の生ブレイン目撃に成功したこともあり、こちらの方にも書かせていただく。


NY出身のブレインの場合、この種の挑戦はだいたいNYの有名どころを舞台にしている場合が多い。タイムズ・スクエアやリンカーン・センター等がこれまでその舞台として選ばれてきた。今回の舞台はセントラル・パーク内のウォルマン・リンクで、夏場はただの広場でしかないが、冬になって氷を張って屋外スケート・リンクになると、世界で最も有名なスケート・リンクの一つとなる。


たぶん映画やニューズ・フッテージ等で、このリンクでマンハッタンの摩天楼を背景にアイス・スケートに興じる人々の映像を見たことがないという者はまずいないだろうというくらい有名な場所だ。近年は42丁目のパブリック・ライブラリ裏のブライアント・パークのアイス・スケート場も人気があるが、ウォルマン・リンクとロックフェラー・プラザのこれまた世界一有名なクリスマス・ツリーの袂にあるリンクが、NYを代表する2大屋外リンクと言ってしまって差し支えないだろう。


今回ブレインは、その氷が張る前のリンク上に組んだやぐらに、逆さまに60時間ぶら下げられたわけだ。とはいえこの挑戦は途中休憩があり、しかも我々夫婦が現場に到着した時は、アシスタントがさかさまになったブレインの頭を心持ち持ち上げて多少なりとも楽な姿勢をとらせており、なんだか今ひとつ釈然としない。それはブレインは60時間さかさまにぶら下げられるとは言ったが、確かに途中で一度も休憩を挟まないとは一言も言ってない。アシスタントにちょっと助けてもらうと言いはしなかったが、助けてもらわないとも言ってない。嘘は言ってないのかもしれないが、しかし、なんだか釈然としないものが残る。観客心理を逆手にとって自分の都合のいいように物事を運び、一方で我々はなんか騙されたような気になるのだ。


例えば映画の連続視聴記録なんてものを達成する時は、確かに映画1本1本の間に短いブレイクがあるのが普通で、連続とはいっても正真正銘の連続なんかではない。それを考えるならブレインのいうことにも一理ある。しかし、しかしだ。昔からのブレイン・ファンとしては、ブレインにはこういう観客心理を弄ぶようなことなぞせずに正々堂々と直球勝負で記録を作るなら作って欲しかったと思うのだ。


そしてこの「ダイヴ・オブ・デス」と題した最後の試みがブッシュ大統領演説中継のために番組中継が15分後ろにずれ、巨大バルーンを使ったマジックが失敗に終わってしまったのは、観賞ノーツの方にも書いた。ファンを欺いたバチが当たったんだと毒づいたのは、私だけじゃなかったというのは賭けてもいい。







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David Blaine: Dive of Death   デイヴィッド・ブレイン: ダイヴ・オブ・デス

2008年9月24日
マンハッタン、セントラル・パーク、ウォルマン・リンク

 
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