デイヴィッド・ブレイン: ビヨンド・マジック (David Blaine: Beyond Magic)

放送局: ABC

プレミア放送日: 11/15/2017 (Tue) 22:00-23:00

製作: ABCステュディオス

製作総指揮: マシュウ・エイカーズ、デイヴィッド・ブレイン

出演: デイヴィッド・ブレイン


内容: デイヴィッド・ブレインによるマジック・ショウ。


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David Blaine: Beyond Magic


デイヴィッド・ブレイン: ビヨンド・マジック  ★★★

TVで放送されるマジック・ショウはよく見ている。CWで放送されているマジック・ショウの「マスターズ・オブ・イリュージョン (Masters of Illusion)」や「ペン&テラー: フール・アス (Penn & Teller: Fool Us)」を毎回見るというほど入れ込んでいるわけではないが、特番系のマジック・ショウならだいたい抑えている。


毎夏編成されるNBCの勝ち抜きタレント・リアリティの「アメリカズ・ガット・タレント (America's Got Talent: AGT)」では、毎シーズン必ず印象的なマジックを披露するマジシャンが登場する。昨シーズンは特にマジシャンの当たり年で、印象に残るマジックを披露するセミ・プロ級のマジシャンが多数登場した。


そのうちの一組であるザ・クレアヴォヤンツは、優勝こそできなかったものの、番組終了後すぐにマンハッタンで公演を開始したマジック・ショウに、その他のマジシャン/イリュージョニスト共々出演していた。要するにマジックはTVに限らず、結構人気、需要がある。


私個人としては最も注意を払っているのが、マジシャン、というよりもイリュージョニスト、あるいは近年は身体能力の限界に挑戦する耐久アーティストという呼称の方が相応しい、デイヴィッド・ブレインだ。ABCが放送する彼の特番は欠かさず見ているし、わざわざセントラル・パークでやっていた逆さ吊り耐久を見に行ったこともある。


しかし体力的にはもうピークを過ぎているであろうブレインを、最近は見る機会がなかった。そしたら、こないだNBCの「トゥナイト (Tonight)」を見ていたら、そのブレインが久し振りにゲストとして出ている。いつものようにこちらもうまいカード・マジックで一通りホストのジミー・ファロンとルーツのクエストラヴを煙に巻いた後、じゃあ、みたいな感じで口を開けると、なんと口の中からカエルが出てきた。生きたカエルが出てきた。それまでのパフォーマンスの間、ずっと胃の中にいたものを、また喉元まで押し上げたらしい。


これはもう、うげーっ、気持ちわるーいという効果抜群だった。それまで普通に会話していた相手の口の中からいきなり生きたカエルが出てきたら、それはもう誰だって驚くに違いない。ファロンもクエストラヴもぎょえーっという感じで後ろに飛びのいていた。


ブレインは見かけも結構グランジだが、こういう生理的に気持ち悪いパフォーマンスも平気でする。いつぞやは胃の中に大量の水を蓄えてそれを吹き出し続けるという、これまた見てくれはまったくよくないパフォーマンスをやっていた。その時、金魚も一緒に噴き出して見せた。今回、胃の中からカエルを吐き出して見せたのは、その応用と言える。


ただカエルをそのまま呑み込むというだけなら、他にもできるやつが何人もいそうだが、呑み込んでも消化せず、生きたまま取り込んでおくという、胃を見えない水槽化するというのは、普通の人間ができることとは到底思えない。だいたい、胃液を出さずに胃の中のものの消化を抑えるとか、腸に送り込むのを一時的に止めるとかいうことが意図的にできるのか? あるいはカエルが胃の中で窒息しないでいいのか?


昨々シーズンのAGTでは、この芸に特化したザ・プロフェッショナル・リガージテイターが登場し、ありとあらゆるものを呑み込んで、選択して時には胃の中で手を加えて吐き出して見せるという驚異の腹芸を見せいていた。すごいはすごいが、やはりちょっとばっちい。あんたの胃液唾液にまみれたものを触りたくはない。いずれにしても、極めればやはり芸だ。


ブレインの人間水槽もなかなかキョーレツだったが、今回の特番の最大のパフォーマンスとしてフィーチャーされたのが、口の中での弾丸受け止めだ。マジックとして、歯で飛んできた弾丸を受け止めるというパフォーマンスはある。しかしあれはやはりマジックで、タネも仕掛けもあるのは明らかだ。


今回ブレインが挑戦するのはマジックとしてではなく、パフォーマンスとしての弾丸受け止めで、口の中にマウス・ピースと弾着しても砕けない特殊なカップを咥え込み、そこに向けて本当に銃を撃つ。最先端素材を使い、弾丸が当たっても砕けないだけでなく、その勢いを吸収するという。とはいっても、弾丸だ。万一があった場合、怪我するのは自分で、死ぬかもしれない。自分に向けて銃口が向けられているのだ。それだけで普通の者は足が竦むだろう。そんな怖ろしいこと、やるか、普通。


狙撃するのが人間だとミスる可能性があるので、射撃するライフルは固定され、光の点が示すその弾着点に合わせてブレインが鏡で口の中の光を見て移動して位置を微調整する。トリガーはロープで片側を引き金に縛ってあり、長く伸ばしたもう片方を持って実際にトリガーを引くのは、ブレイン自身だ。たとえライフル自体が固定されていようと、トリガーを引きたいとは普通誰も思わないだろう。


本番では、見事弾丸は口の中に着弾してそこで止まりはしたものの、衝撃の吸収という点では完全ではなかったようで、ブレインはかなり口の中を痛めたようだった。口の中で実際に銃弾を受けた気分というのはいったいどういうものか。知りたくもない。


とにかく危険極まりないパフォーマンスであるのは間違いなく、さすがに周りの者も心配になってくる。心配してないのはブレイン一人だけのように見える。アシスタント役のマジシャンは、たぶん殺人者の片棒を担ぐ羽目になるのは嫌だったのだろう、もうこれ以上は付き合っていられないと、今後このパフォーマンスからは降りると宣言した。しかしブレインは今後、自分のツアーでこのパフォーマンスを続けるつもりだそうだ。パフォーマンスの度に口の中からひしゃげた銃弾が出てきたのを見て、してやったりと思うのだろうか。こいつの考えることはわからん。











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