放送局: FOX

プレミア放送日: 10/3/2000 (Mon) 21:00-23:00

製作: キャメロン/イグリー・プロダクションズ、20世紀FOXテレヴィジョン

製作総指揮: ジェイムズ・キャメロン、チャールズ・イグリー

製作: レイ・サンチーニ、スティーブン・サセン

監督: デイヴィッド・ヌッター(プレミア)

脚本: ジェイムズ・キャメロン、チャールズ・イグリー

撮影: ピーター・ワンストーフ

編集: スティーブン・マーク

音楽: ジョエル・マクニーリー

美術: マーク・フリーボーン

出演: ジェシカ・アルバ(マックス・ゲヴァラ)、マイケル・ウェザリー(ローガン・ケイル)、ジョン・サヴェジ(ライデッカー)、ヴァラリー・ミラー(オリジナル・シンディ)


物語: 2009年、ワイオミング州の山奥。政府の秘密施設で、マンティコアと呼ばれる遺伝子操作を施された子供たちが秘密裡に特殊な教育を受けていた。彼らは通常の人間の何倍もの知力/体力を備えた戦闘マシーンとなるべく育てられていたが、その方針に耐えられなくなった子供たちは脱走を試みる。多くは捕えられるか射殺されるかしたが、無事脱走を遂げた何人かの子供たちもいた。その中の一人の女の子、マックスは、通りすがりの女性ドライヴァーに助けられて九死に一生を得る。


10年後。世界は核汚染や証券市場の崩壊によってかつてないほど混乱を極めていた。マックスはシアトルで見捨てられたビルにレズビアンのオリジナル・シンディらと共に無断で住み込み、昼はメッセンジャーとして生計を立てながら、夜は美術品を盗み出して金に換え、かつての仲間たちや彼女を助けてくれた女性のその後の消息を追っていた。


ある日、マックスはとあるビルの一室に値打ちものの美術品を認め、侵入して盗み出そうとする。しかし部屋の主ローガンに見つかってしまい、失敗する。ローガンは実は地下の世界から政府の悪行を告発するサイバー・ジャーナリストで、マックスの尋常でない運動能力から、過去ワイオミングの秘密施設から脱走した子供たちの一人だったことを確信、マックスを世界を改革していくための仲間に誘う。一方、逃げられた子供たちを執拗に追う秘密施設の司令官ライデッカーも、着々と追っ手の網の目を狭めてきていた‥‥


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シドニー五輪のおかげで伸び伸びになっていた2000年のアメリカTV界の新シーズンが、10月に入ってやっと始まった。ドラマでは「逃亡者」のリメイク「フュージティヴ (The Fugitive)」(CBS)やデイヴィッド・E・ケリー製作総指揮の「ボストン・パブリック」(FOX)、シットコムではベット・ミドラーの「ベット (Bette)」(CBS) やジーナ・デイヴィス主演の「ジーナ・デイヴィス・ショウ (The Geena Davis Show)」(ABC) 等、それなりの話題作が編成されているのだが、私が個人的に最も注目していたのは、「タイタニック」のジェイムス・キャメロンが初めてTV番組をプロデュースする、FOXの「ダーク・エンジェル」だった。


しかし、今秋のFOXほど先の読めなかった編成はなかった。前述のシドニー五輪に加え、FOXはアメリカの国民的スポーツ、メイジャー・リーグ・ベイスボール (MLB) の放送権を持っている。10月はそのプレイオフ、リーグ優勝戦、ワールド・シリーズが行われるのだ。もちろん週末のデイ・ゲームもあるから全試合がプライムタイムに中継されるわけではないが、それでも試合がもつれると月の半数以上はMLB中継に持って行かれる。おかげで私はFOXの直前の番組差し替えに注意していなければならなかった。FOXはこういうの得意なんだよ。放送スケジュールを発表しておきながら、平気で当日番組を差し替えるというのを最も多くやるのがFOXなのだ。10月もMLBの盛り上がり方次第で新番組を動かしてくるに違いない。


しかもその上、今年は大統領選まで重なった。各ネットワークは、直前になるまでいつ行われるかわからない、大統領候補者のディベートを中継しなければならない。これは慣例として定まっているもので、一斉に同じカメラによる同じ映像を全ネットワークが生中継するものだ。そしてその日に当てられたのが、なんとFOXが今秋最も期待していた「ダーク・エンジェル」のプレミア放送を予定していた10月3日だった。いやあ、FOX幹部の苦虫を噛み潰したような顔が目に見えるようだったねえ。よりにもよって、FOXが最も期待していたイチ押し番組のプレミア放送予定日にディベートが重なってしまったのだ。しかも「ダーク・エンジェル」のプレミア放送日は既に発表済みである。どうする?


そこでFOXがとった方法が大胆というか何というか、なんと、FOXはディベートを中継せずに「ダーク・エンジェル」のプレミアを放送してしまったのだ。これには私もびっくりした。別に法的に強制されているわけではないが、ディベートの生中継は代々のネットワークの慣例である。これを義務と考えているのは業界内だけでなく、政府関係者にすら多い。つまり、ディベートを中継しないことは充分政府から睨まれる理由になるのだ。事実、やはりその日に「ジーナ・デイヴィス・ショウ」のプレミア放送を予定していたABCは、即座に翌週にプレミアを延期している。しかしFOXはたとえ「ダーク・エンジェル」を翌週に動かしても、今度はMLBの中継が重なるかも知れない。この時期のベイスボール中継は、1日でも雨が降れば、もう編成予定なんてなきに等しいのだ。


そんなわけで今回の判断になったのだろうが、まあ、ディベートって我々市民権を持たない者にとってあまり興味がないのも事実だけどね。私も以前は英語の勉強にもなるしと思って見ていたが、結局止めた。ただし、ディベートは全ネットワークがまったく同じ映像を生中継するから、他の点で使い道がないではない。同じ映像でも、ABC、CBS、NBC、FOXと微妙に色彩がずれる。こちらのチャンネルでは赤みが強いのに、こちらでは青の発色が強い、ということが起こる。ディベート中継は、そういう時に自分ちのTVのカラー・バランスを補正するのに実に適しているのだ。


そんなわけでまた、その日はTVの色補正かと思っていたら、FOXのこの快挙?である。実はディベート中継は、まったく同じ映像を中継しているのに、それでも発表になる視聴率が局によって差が出る。こういう選挙速報みたいな政治的な番組になると、まったく同じ番組でも必ずと言っていいほど報道番組で定評のあるABCが視聴率トップに来るのである。新参のFOXはほぼ100%最下位に落ち着く。FOXがディベートを中継したくなかったのもむべなるかなである。もちろんFOXは「ダーク・エンジェル」放送後、散々叩かれた。ネットワークの義務を果たしてないとか何とか。しかしディベートに興味を持てないアメリカ国民が大勢いたのも事実で、そういう人々はFOXの目論んだ通り、「ダーク・エンジェル」にチャンネルを合わせたんだなあ。おかげで「ダーク・エンジェル」は非常に高い視聴率を獲得し、早々と今シーズンのヒット番組のお墨付きを得てしまった。体面を捨てて実をとったFOXの戦略勝ちだな。


これだけ世間を騒がせて大々的に始まった「ダーク・エンジェル」であるが、ではその内容の方はというと、期待値が高すぎたのか、こんなものかというのが正直な感想である。この番組、企画は既に昨春から上がっており、早ければ昨シーズンから始まる可能性もあった。それが今年にずれ込んだのは、なんといっても最も重要な主役、マックス役の人選が難航したからである。結局最終的に決まったのは、当年とって19歳のジェシカ・アルバ。「22年目のキス」にちょい役で出ているが、はっきり言って無名である。


しかし彼女は悪くない。多分キャメロンが考えていたんだろう、スーパーヒーロー的なアクションもこなすが、情にもろく、コケティッシュな雰囲気を持つ女性として造型されており、結構いい線行っている。アンジェリーナ・ジョリーばりのぷよぷよとした肉感的な唇は、つい指先で押してみたいなあと思わせる。猫の肉球みたいに気持ちよさそうだ。演技力という点ではまだまだ発展途上という感じがしたが、充分将来性を感じさせる。


マックスを執拗に追い続ける軍の秘密組織の首領ライバッカーという役柄で登場するのが、ヴェテランの性格俳優ジョン・サヴェジ。私はいつもジョン・ヴォイトと彼を混同してしまう。顔もなんとなく似てると思うし、二人ともアクの強い暗めの役ばっかりしてるところなんて、まるで兄弟のようだと思う。「ディア・ハンター」以来印象的な役は最近見てないが、姿自体はTV映画とかで今でも時たま目にする。プレミアではほとんど出番はないが、今後久し振りに癖のある印象的な悪役が見れそうだと、なんとなく期待させてくれた。プレミアで対政府活動のため怪我をして、今後マックスの車椅子の相棒として活躍することになるローガンに扮するのは、マイケル・ウェザリー。TV映画出演が多いが、私は彼の記憶はない。キャメロンにばかり焦点が当たってほとんど表に出てこないが、「こちらブルームーン探偵社」のチャールズ・イグリーも、キャメロンと共同で製作総指揮にあたっている。


番組は期待値が高すぎたのでこんなものかという印象を受けてしまったが、だからといって別にがっかりするほど悪いわけではない。むしろ予算に限りのあるTV番組としては(それでもプレミアの製作費は1,000万ドルもかけたらしいが)、金食い虫のSF番組でよくやっていると思う。ただ、中途半端に近未来都市を造型されると興醒めだ。冒頭のアルバが座っている廃虚となった高層ビルの屋上のCGは、あれはちょっとちゃちい。街頭の風景でたまさか現れる未来型の乗用車も、それだけ浮いているように見える。他の車が現代の車とまったく同じ型だったりするから、だったらそれもやはり手を入れてくれないとなあと思ってしまう。アルバの乗るオートバイも、20年もまったくモデル・チェンジしないのかとちょっと不満。本当に、そこまで金をかけられなかったのはわかるんだけどねえ。それとも一見して見えないところにちょこちょこ手を入れているのか。


でも、アルバの働くメッセンジャーの事務所とか、住居として使う見捨てられた廃虚とか、情報屋の部屋とか、そういう主要なところはハイテクさと前近代的な部分がうまい具合にごった煮になって、感じは出ていた。今後アルバ演じるマックスが、ただ短絡的な正義の味方ではなく、ちゃんと身があり肉もある、存在感のあるスーパーヒーローになれるかどうかが番組の成否の鍵となるのは間違いないだろう。1シーンだけ出てきて幼いマックスを助けた女性が、今後ドラマに絡んでくるのもこれまた間違いないところと見た。彼女は膨らませば番組をもって面白くできる要素を持っていると思うが、当然その辺は見越した話の作り方だったような気がする。いずれにしても、またもう一回見たいような気にはさせてくれた。


考えたら、今、「X-ファイル」を除いてアメリカTV界で成功しているSF番組はない (完全にカルト化して熱狂的ファンしか見ていないUPNの「スタートレック: ヴォイジャー」や、ケーブルやシンジケーションの番組は除く)。「X-ファイル」は主演のモルダーを演じるデイヴィッド・デュカヴニーが今シーズン限りで番組を降りるため、今後も続いていくかはまったくの未知数だし、ここらでFOXも「X-ファイル」に代わる同系統の番組を何か確立しておきたいところだろう。「ダーク・エンジェル」が今後もこの高視聴率を維持してFOXの屋台骨となることができるかどうか、興味は尽きない。



追記 (2002年5月):

1シーズン目で人気番組として確立し、2シーズン目に入った「ダーク・エンジェル」であるが、この番組が常に製作費を超過してFOXから苦情を言われているのは関係者なら誰でも知っていることだった。そのためかキャメロンは第2シーズン、製作方針を変えた。第2シーズンになると、スーパーヒーローとしてのマックスが悪漢退治に活躍するという、単なる普通のSFアクションとなってしまった。エイリアンっぽい悪者の造型や進行具合など、ヘンに「バフィー 恋する十字架」と似たような感じとなってしまい、しかも、それならば「バフィー」の方が断然面白い。


そういうわけで、第2シーズンになると「ダーク・エンジェル」は大分ファンを減らしてしまった。これじゃいかんということで、第2シーズン最後のエピソードは御大キャメロンが直々に登場して演出するというリキの入ったところを見せたが、しかしそれも焼け石に水で、いったん去ったファンは帰ってこず、この、最後のエピソードの視聴率を見たFOXは、秋の編成予定から「ダーク・エンジェル」を外し、事実上番組はキャンセルされた。しかし、第2シーズンの幾つかのエピソードを見るからには、ま、しょうがないという感じだ。いくらキャメロンといえども、あんなもんなら他に面白い番組はいっぱいある。






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Dark Angel

ダーク・エンジェル   ★★1/2

 
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