放送局: シネマックス
プレミア放送日: 1/28/2001 (Sun) 22:00-23:30
製作: ニール・モリッツ・プロダクション、コロンビア・トライスターTV
製作総指揮/脚本/監督: ロジャー・カンブル
製作: ニール・モリッツ、ウィリアム・タイラー
撮影: ジェイムズ・バグドナス
出演: ロビン・ダン(セバスチャン・ヴァーモント)、エイミー・アダムス(キャスリン・マーテリ)、サラ・トンプソン(ダニエル・シャーマン)、ケリ・リン・プラット(チェリー・クレイマン)、ミミ・ロジャース(ティファニー・マーテリ-ヴァーモント)
物語: セバスチャンは父の4度目の結婚を機に、新しい母親ティファニーとその連れ子キャスリンが住むニューヨークの豪邸に移ってきて、キャスリンも通うお金持ちご用達の進学校、マンチェスター・プレップ・スクールに転入することになる。母が学校に出している寄付と持ち前の美貌と才覚もあり、キャスリンは学校の生徒会長に納まっていた。しかもその裏で生徒指導の教師をかどわかし、自分の気に入らない生徒に嫌がらせをして学校に来れないようにしてしまうなど、キャスリンは表と裏の両方で完全に学校を仕切っていた。セバスチャンは転入してきたその日にダニエルに一目惚れし、うまく取り入ることに成功する。しかしセバスチャンが気に入らないキャスリンは、学校の秘密会議でセバスチャンと、学校でのスピーチでしゃっくりが止まらずキャスリンに恥をかかせたチェリーを学校から追放しようと画策する‥‥
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2-3年前、アメリカのTV/映画界は、ティーンから20代向けの若者向け作品が一時幅を利かせた。ケヴィン・ウィリアムソンが脚本を書いた「スクリーム」シリーズや製作を請け負ったTVの「ドーソンズ・クリーク」等がヒットを記録、ヤング・アダルト系の新しいスターが続々とTV/映画界に登場、マスコミが次世代の若いスターの青田買いに走った頃だ。WBで「ドーソンズ・クリーク」と並んで人気の「バフィ 恋する十字架」で人気を不動のものにしたサラ・ミシェル・ゲラーは、ライアン・フィリップと共に「クルーエル・インテンションズ」に出演、こういったブームの中で公開され、それなりのヒットを記録した。これに目をつけたのがネットワークの一つ、FOXである。
FOXは「クルーエル・インテンションズ」のTVドラマ化を考えついた。元々FOXは若者向け番組を多く編成するチャンネルだが、99年のFOXの新番組は例年に較べても特に若者向け番組が多かった。その中で、「クルーエル・インテンションズ」の主人公、セバスチャンとキャスリンのハイ・スクール時代を描くTV版は、ほとんどヒット確実の番組に見えた。番組タイトルも「マンチェスター・プレップ (Manchester Prep)」という、いかにもという感じのタイトルに決まり、99年12月放送開始が早くから喧伝された。(基本的にアメリカのTV界の新シーズンは9-10月に始まるが、時々、わざとこういうふうに時期をずらして放送を開始し、注目を集める手段をとることがある。)
その番組製作がうまく行ってないという噂が囁かれるようになったのは、99年の秋頃のことだった。そろそろパイロット製作が終わり、FOX首脳陣に見せてOKをとらなければならないのだが、それがどうもうまくない。「マンチェスター・プレップ」は1時間番組だが、力を入れているためにプレミアは2時間枠で製作された。その2時間のパイロットが、どうやらFOXの首脳陣を激怒させたらしいとのインサイダー情報が業界紙にちらほらと載るようになった。くだらない下世話な番組で知られているFOXの幹部をすら怒らせる番組とは、いったいどのようなものか。「ビバリーヒルズ青春白書」だって充分くだらなかったと私は思うけどね。あれがOKなら「マンチェスター・プレップ」はいったいいかほどのものか。逆に私の期待は膨らんできた。FOXですら却下するほどのくだらない番組。ううん、見てみたい。
業界を唖然とさせた発表は、その直後にやって来た。撮り直しても満足の行くものができなかった「マンチェスター・プレップ」に業を煮やしたFOXの幹部は、なんと「マンチェスター・プレップ」を一度も放送することなく、番組のキャンセルを発表したのだ。うそだろーっ、マジかよ。放送開始後、視聴率が稼げないため1、2回放送されただけですぐにキャンセルされる番組の例というのはないことはない。しかし、一度も放送されないままキャンセルされるというのは稀だ。どんな下世話な番組だろうと視聴率がとれるなら放送するが、あまりものくだらなさのため、誰も見ない上にこの分では批評家からもぼろくそに言われるのは間違いなしと見たFOX首脳は、誰にも見せないまま番組をお蔵入りさせる方がまだましだと判断したのだ。
結局、「マンチェスター・プレップ」はその後、表舞台から消え、人々もこの番組の噂をすることもなくなり、 忘れ去られた。そう、たった今までは。何あろうこの「クルーエル・インテンションズ2」こそが「マンチェスター・プレップ」なのだ。あの幻の「マンチェスター・プレップ」が今我々の目の前に帰ってきた。さりげなく昔のことは忘れた風を装っても私は騙されはしない。念のためにとIMDBをチェックしたら、製作/出演者が同じ上に、ちゃんと別題として「マンチェスター・プレップ」が記載されている。ついに待ちに待った機会がやってきた。FOXが注文した番組をタイム・ワーナー系のシネマックスがTV映画として放送するというのはよくわけがわからんが、多分FOXが安くで放送権を売り払ったんだろう。後は見るだけだ。望むべくはただ単にくだらない番組ではなく、徹底的にくだらないために爆笑させてくれるか度肝を抜いてくれるほどでありますように。
さて、見終わってからの結論から言うと、待った甲斐があったというのが正直な感想である。「クルーエル・インテンションズ2」は、色々な意味で通常のネットワーク的TV番組からかけ離れた番組であった。どう見てもこれがネットワークで放送される可能性はない。まず第一に、性的な描写があまりにも多過ぎる。この番組はFOXでは8時からの枠で予定されていた。そりゃ無理だよ。ネットワークではご法度のヌード・シーンがあるし、その他にも、ダニエルがセバスチャンの前にかがみ込んでフェラチオしようとしたり、カー・セックスがあったりと、ガキが起きてまだTVを見ている時間帯用の番組ではない。これを見た後は「ビバリーヒルズ青春白書」が幼稚園生向けの番組に見える。
なかでも極めつけは、嫌がらせのためにキャスリンが親切な振りしてチェリーを乗馬の練習に誘うシーン。馬上で腰をうまく使うのがコツだと、サドルに下腹部を押しつけてグラインドさせ、気持ちよくさせてしまうという、抱腹絶倒もののシーンがあるのだ。もっと速く、速く腰を動かして! と叫ぶキャスリンに合わせて、一生懸命サドル上で腰を前後させるチェリー。ついに耐えきれなくなって馬から落ち、そばに来たキャスリンに、うーん、いい気持ち、ととろんとした目で訴える。これをマジでやるのだ。いやあ、爆笑である。この番組ってコメディか? これを見て激怒したFOXの幹部の気持ちもよくわかる。こんなの放送しちゃったら、ありとあらゆるところから叩かれまくるに決まっている。いくら下衆なFOXであろうと、これを放送する踏ん切りは流石につかなかっただろう。
その他にも、わざとかどうか、はずしたシーンが多い。キャスリンが裏で学校をしきっているというシチュエイションは、昔マンガでよくあった「ウラ番」とか「スケ番」って乗りか? なぜだか学校の中に専用の部屋があって、キャスリンがわざわざ梯子を昇って部屋の中に入ると、そこは既に裏で学園を取り仕切るメンバーが勢揃い、そこで秘密の会議が開かれる。さて、今度排除すべき人物は、と品定めしてチェリーの姿がスクリーンに映し出されると、取り巻き連中が一斉に頬に手を当て、「やだー」みたいにブーイングするのは、なんか、こんなシーン、「ロッキー・ホラー・ショウ」で見たような気がするなあと思ってしまう。やはり受けも狙ってるな。
それなのに主演のセバスチャンに扮するロビン・ダンは結構大真面目の演技、どちらかというとキャスリンに扮するエイミー・アダムスがコミック・リリーフも担当している。しかも意外なことに、この二人が結構悪くないのだ。セバスチャンは最初、悪さもするが、マジでダニエルに惚れてしまうというわりとシリアスなキャラクターになっていて、パイロットでは結局、最終的に彼がキャスリンに騙されて、悪い道に一歩足を踏み出すというところまでが描かれる。アダムスは角度によっては映画でキャスリン役をやったミシェル・ゲラーにも似ており、きっとこの手の顔が脚本/監督のロジャー・カンブルの好みなんだろう。
カンブルは、もちろん映画の「クルーエル・インテンションズ」でも脚本/監督を担当している。私は残念なことにそちらの方は見ていないため比較できないが、覚えている予告編から判断すると、全編ムーディなシリアス・タッチで、評もそれほど悪くなかったという記憶がある。それが 「2」ではこういうコメディ・タッチになってしまったのは、シリーズ化にはこういう息抜きが必要だという配慮からか? それにしてもなんで本当にネットワークで午後8時台の番組にあんな際どいシーンをふんだんに入れてしまったのか、私にはわけがわからない。最初からシリーズ化を断念していたとしか思えない。
それでも、ネットワークとして見ると確かに却下されるだろうが、番組自体は悪くない。適度にシリアス、適度にコミカル、裸とセックスも忘れない。これがペイTVのHBOかショウタイムだったら、全然問題なくシリーズ化にGOサインが出るところだ。特に昨年、ゲイ・ドラマの「クイア・アズ・フォーク」の放送を開始したショウタイムだったら、誰からも文句なぞ出なかっただろうに。実に惜しまれる。カンブルは売り込み先を間違えたよ。いずれにしても、この1年半念願だった番組を見れて、私は満足だ。
