クリス・エンジェル: ビリーヴ   Criss Angel BeLIEve 

放送局: スパイク (Spike TV) 

プレミア放送日: 10/8/2013 (Tue) 23:00-0:00 

製作総指揮: スチュアート・ストーン

出演: クリス・エンジェル

 

内容: マジシャン/イリュージョニストのクリス・エンジェルによる新パフォーマンス・ショウ。


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Criss Angel BeLIEve


クリス・エンジェル: ビリーヴ  ★★1/2

マジシャン/イリュージョニストのクリス・エンジェルは、一見ヴィジュアル系なのだが、どうも根は典型的なアメリカンなようで、ショウ・アップされた公演 の中継やスタジオ撮影のTV番組等以外では、ヴィジュアル系というよりもグランジに近い格好をしている。整った顔立ちをしているのだが実はどちらかというと地味で、そのためいつも目張りだけは欠かさないといった印象を受ける。 
 
メイクすると映えるのは確かで、そういう点を利用してこれまでにもA&Eの
「クリス・エンジェル: マインドフリーク (Criss Angel: Mindfreak)」のようなTV番組にも出演してきた。そのエンジェルが作る新シリーズが、「ビリーヴ」だ。相変わらず目張りだけは入っているようだが、以前より着るものがよれよれになって、グランジの程度が増したような気がする。 


「ビリーヴ (BeLIEve)」は、ラスヴェガスにおけるエンジェルの同名公演から派生したものだ。元々はシルク・ドゥ・ソレイユのラス・ヴェガス公演シリーズの一環として始まった。シルクとエンジェルって、マジックやイリュージョンという共通項はあるにしても、私の印象としてはまるで相容れないのだが、実際ファン心理としてもそうだったようで、ヴェガス公演の方は最初かなり酷評され、大幅に手直しを強いられたらしい。

今回のスパイクTVが放送するTV版「ビリーヴ」プレミア・エピソードの冒頭のネタは、カリフォルニアのビーチで道行く一般の人相手にマジックを仕掛ける。こういうストリート・マジックでは、エンジェルよりもデイヴィッド・ブレインの方が、見かけといい経験といい一歩上手という感じがするが、エンジェルだって負けてはいない。 
 
エンジェルは見物人を男女一人ずつ、別々のベンチの上に横たわらせる。さらに見物人を何人か引っ張ってきて、横になっている者の手と足を持たせて引っ張らせ る。すると横になっていた者の胴体が真っ二つに分かれてしまったではないか。ちょっとこれには驚いた。これまで胴体切断マジックはいく度となく見てきたが、だいたい切断される者は胴体部を箱で隠し、箱ごと切断するというのが一般的だった。それはそれで演出がうまいとかなり驚かされるが、その箱になんらか のトリックがあるだろうと見る者に邪推させることは禁じ得なかった。 
 
それがどうだ、エンジェルは白昼堂々、陽の下で胴体を切断して見せる。もちろん一般人なので切断された方はびっくり仰天、切断された上半身のまま地を這って逃げようとする。それをエンジェルは捕まえ、抱きかかえるとその上半身をもう一人の方の下半身と合わせる。すると別人のはずの上半身と下半身がぴったりとくっつき、立ち上がると自分の下半身をくっつけられたもう一人に向かって、それはオレの足だ、それは私の足よ、とお互いに怒鳴り合っているのだ。周りにいた見物客は恐慌を来たして叫びながら逃げ回っている。当然の反応だろう。もう、なにがなんだかわけがわからん。なんでこんなことができるわけ?  
 
冷静になって考えると、胴体を切られた見物客はかなりの確率で、というかまず100%サクラだろう。しかも彼らもそこそこマジックをたしなんでいることも間違いなかろうと思う。先天性の病気や事故のために下半身を失ったという人をアシスタントとして起用しているのではないか。ついでに言うと、ギャラリーももしかしたらある程度、あるいは全員サクラかもしれない。


明らかに今そこに出てその辺を歩いている一般人というのが確信できない限り、こういうショウではギャラリーを含めてマジックの一部であるということは、かつてFOX/マイ・ネットワークTVが様々なマジックの種明かしをして悪評紛々だった「ブレイキング・ザ・マジシャンズ・コード: マジックズ・ビギスト・シークレット・ファイナリー・リヴィールド (Breaking the Magician's Code: Magic's Biggest Secrets Finally Revealed)」で納得済みだ。あの番組はマジシャンの仕事をかなりやり難くした。とまあ、エンジェルのマジックについてはそのくらいは考えつくのだが、では実際にどうやったのかというと、実はCGも使っている? なんて思うくらいでさっぱりわからない。とにかく視覚的な効果としては絶大だ。
 

その後エンジェルはラッパーのアイスT相手に床屋で剃刀の刃を飲み込んでみせたり、糸を飲み込んでそれをぺっと吐き出す瞬間に針の穴に通すという技を見せたり、金魚のタトゥーをしている女性の腕にかぶりつくと噛み噛みしてその金魚を飲み込み、本物の金魚にしてコップの水の中に吐き出す。瞬間入れ替わりマジックでは、モールに見物に来ている客の女の子の前に出てきたのは中東に出兵中の軍人のお父さんだった。そして最後には鎖に繋がれたまま生き埋めにされてその上からセメントを流し込まれたところから脱出するという大技を見せる。それにしてもなんか、口の中にもの入れたり出したりと、なんか生理的はあまり見てくれのいいものじゃないネタが多いような気がする。


ただし今回は小ネタの種明かしも紹介しており、私としてはそちらの方が実は印象に残った。空中に浮かぶダイエット・コークをどうやって演出しているかというと、回転する部屋を作成して、その中でさも立っているように見えるエンジェルは実は横になっており、吊り下げられているコーク缶の上下を手で遮っても、当然そこにはなにもトリックはないというマジックには、なるほどと思わせられた。「インセプション (Inception)」だったか。


 








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