Conan   コナン

放送局: TBS
プレミア放送日: 11/8/2010 (Mon) 23:00-0:00

製作: コナコ

製作総指揮: ジェフ・ロス

ホスト: コナン・オブライエン

バンド: ジミー・ヴィヴィノ・アンド・ザ・ベイシック・ケーブル・バンド

アナウンサー: アンディ・リクター


内容: コナン・オブライエンがホストの新深夜トーク・ショウ。


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今年初頭のアメリカの深夜トーク界の大激震が今となってはまるで遠い昔の出来事のように思えるのだが、あれから実はまだ1年も経っていない。ではあるが、その間にジェイ・レノは古巣の「トゥナイト (Tonight)」に戻ってしまったし、コナン・オブライエンはNBCからいなくなった。結果的には一見しての違いはオブライエンの代わりにジミー・ファロンが「レイト・ナイト (Late Night)」のホストに就いているというだけで、業界全体から見れば、あんなに大きな騒ぎになったのが、今となっては不思議に思えるくらいだ。


正直言って、まあレノも信用という点では痛手を負ったろうが、今回の騒動で本当に傷ついたのは、長年待ってやっと手にした「トゥナイト」のホストの座を半年で追われた、オブライエンだった。最近日本語版「ローリング・ストーン (Rolling Stone)」でオブライエンに対するロング・インタヴュウを読んだのだが、いまだに傷は癒えてないようだ。


それでも夏にはオブライエンは、予想されていたネットワークのFOXや、ケーブルのコメディ専門のコメディ・セントラルではなく、ベイシック・ケーブル・チャンネルのTBSで、新しいトーク・ショウ「コナン」のホストに就任すると発表した。考えてみると、これはかなり納得できる選択だ。TBSはケーブル・チャンネルでは最大手の一つで、特にコメディに力を入れている。FOX同様若い視聴者に人気があり、しかも既に昨年、「ロペス・トゥナイト (Lopez Tonight)」というジョージ・ロペスがホストの深夜トークを編成している。


オブライエンは最初、ロペスの番組の場所を奪うようなことになるなら嫌だと思ったようだが、当のロペス本人が、自分の番組の時間が始まるのが1時間遅れても、その前にオブライエンの番組があった方が自分にとってもオブライエンにとってもTBSにとっても有益と考えた。それで直々にオブライエンにTBSに来いと誘った。TBSもオブライエンに最大限の番組の製作の自由と大々的なプロモーションを約束した。むろんギャラはNBCほどは払えないだろうが、それでもオブライエンにとっては納得のいくオファーで、話はすんなりまとまったそうだ。


そして新番組「コナン」は11月8日から始まった。番組冒頭、いきなりラスト・シーズンの「コナン」ではと、ありもしない番組の案内が出る。むろん本当は「トゥナイト」を意味しており、番組開始時間を遅らせることを納得しないオブライエンが電話を叩きつけて交渉決裂を宣言、しかし事務所を去ろうとしたら、「ゴッドファーザー」よろしくマシンガンを持った男たちに待ち伏せされて蜂の巣にされ、一命をとり留めるものの、待っていたのは職を失ったという現実で、次の職は簡単には見つからない。


女房に尻を叩かれ、AMCの「マッド・メン (Mad Men)」の広告エージェンシーにもインタヴュウに行くが、応対のドン・ドレイパーことジョン・ハムは、今は1965年だ、あんたはまだ2歳にしかなっていないと冷たくはねつける。その他の仕事もすぐクビになり、思いあまったオブライエンは高架の上から身を投げようと手すりの上に上る。それを「コナン、待て」と言って引き留めたのは、ラリー・キングだった。


昨年、オブライエンが「トゥナイト」に就任した時の番組第1回のプロローグのギャグもなかなかよかったが、今回のこのキングは、本当に見てて爆笑した。キングはアメリカのトーク界の生き字引きとでも言える存在で、化け物視されている嫌いすらがあるが、それでも彼がCNNで4半世紀にわたってホストを担当してきたインタヴュウ番組の「ラリー・キング・ライヴ (Larry King Live)」は、歴史という点では現在のアメリカのどの番組にも引けをとらない。


しかしその「ラリー・キング・ライヴ」も近年は視聴率不振に喘いでおり、CNNはついに番組のキャンセルを発表した。というか、女房の浮気が公けになってスキャンダルなり、ついでに番組不振の責任とかも取り沙汰されて、さすがに嫌になったキング自身が今シーズン限りで番組を終えると自らCNNに伝えたそうだ。一方で、キングが自らそういう行動に出ざるを得ない空気が醸成されていたということだろう。


いずれにしても、別のところで渦中の人キングが、天使の羽をつけてオブライエンの自殺を思い留まらせようとしているのだ。これには笑った。キングは言う、コナン、ベイシック・ケーブルだ。光明を見出したオブライエンはその足でTBSに向かい、これまでより「とても (Much)」「低い (Less)」サラリーを紙面でオファーされるが快諾、そして「コナン」が始まるというのが番組プレミア・エピソードのオープニングだ。「トゥナイト」が始まった時も思ったが、こちらも期待させるよいでき。しかも既に、やはりオブライエンのギャグのセンスはネットワークよりはこういうケーブル向きという意を強くした。私がこれまで10年以上にもわたってオブライエンのユーモアはむしろケーブルの方にこそ向いていると言ってきたことが、ここに来てやっと実現した。


「コナン」では、これまでオブライエンのバンド・リーダーを務めてきたマックス・ワインバーグが去り、代わってこれまでバンド・メンバーの一人で、ギャグ・スキットの「イン・ジ・イヤー‥‥ (In the Year…)」コーナーでオブライエンと共にギャグをかましてきたジミー・ヴィヴィノが晴れてバンド・リーダーとなり、バンド名もベイシック・ケーブル・バンドと改名された。ワインバーグはブルース・スプリングスティーンのEストリート・バンドのドラマーでもあり、もともと西海岸行きには難色を示していた。この辺が潮時だと思ったのだろう。一方で盟友アンディ・リクターはこれまで同様アナウンサーを務める。


カメラがスタジオを映して一と目で気づく違いが、もちろんセットが異なるということはあるが、オブライエン本人の髭だ。「コナン」プレミアを前に、オブライエンを起用したアメリカン・エクスプレスのCMがよく流れていたが、それではオブライエンは自分のステージの赤い緞帳用の生地を求めてはるばる中東に出向く。その時は髭もさもさだが、CMの最後では髭なしでステージに立つ。オープニングのギャグ・スキットでも髭はなかった。だから「コナン」を髭ぼうぼうで始めたのには驚いた。本人としては心機一転という気持ちなんだろう。


スタジオでは観客がスタンディング・オヴェイションでオブライエンを迎える。観客、そしてそれに対するオブライエンのオーヴァー・リアクションの反応、なんというかいつも通りだ。変わったのは場所と髭だけという印象を受ける。実際、番組の中身自体はオブライエンの「レイト・ナイト」-「トゥナイト」-そして「コナン」と、特に大きな違いはない。その中で違ったことというと、前はあったが今はないギャグ・コーナーがあるというのがある。


「イン・ジ・イヤー‥‥」は、「レイト・ナイト」、「トゥナイト」時代を通じて、私が好きじゃなかったオブライエンのルーティン・ギャグの一つだった。腹が立つくらい面白くないと思っていたが、NBCは、このギャグの知的所有権はNBCにあると主張、オブライエンは「コナン」でこのギャグを使えなくなった。私に言わせてもらえば、こんな笑えないギャグの所有権なんかどぶに捨ててやれとしか思えないが、いずれにしてもそのため「コナン」ではこのコーナーはなくなった。私としては願ったりかなったりだ。おかげで私の「コナン」に対する好感度は高い。


番組第1回のゲストはセス・ローゲンとレア・ミシェル。ローゲンは主演の「ザ・グリーン・ホーネット (The Green Hornet)」の公開が間近だし、ミシェルは最近、FOXで主演の「グリー (Glee)」の株が急上昇中だ。音楽ゲストはジャック・ホワイト。ホワイトは「レイト・ナイト」最終回の音楽ゲストでもあった。第2回ゲストはトム・ハンクスと、「30ロック (30 Rock)」のジャック・マクブライヤー、音楽ゲストがサウンドガーデン。ハンクスは「トゥナイト」でも番組第2回のゲストで、オレは第1回のゲストじゃないしなと拗ねていた。今回も第2回のゲストというのは、もちろん意図的だろう。


第3回ゲストは第1回のオープニング・ギャグにも登場したジョン・ハムと、コメディ女優のシャーリーン・イー、音楽ゲストはトム・モレロとフィストフル・オブ・マーシー。第4回ゲストはマイケル・セラと「モダーン・ファミリー (Modern Family)」のジュリー・ブラウン、音楽ゲストはなかった。これらの人選を見ると、どちらかというと「トゥナイト」の時よりロウ・キーという印象を受けるが、今後長く続く番組のたかだか最初の一週間に過ぎないと思えば、こんなもんか。常連という感じが濃厚だったウィル・フェレルはどうしたんだろう。


私はオブライエンがNBCを去ることになった時、もしかしたら将来これが全員にとってプラスになる可能性もあると書いたのだが、今の印象を言うと、本当にそういう風になっているという気がする。オブライエンは、やはりネットワークよりはケーブルの方が合っていると思うし、実際オブライエンもこちらでの方がのびのびやれているようにも見える。くだらないことをくだらないと言いながらやれているような感じなのだ。たぶん、あんたは今正しい場所に立っていると思う。








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コナン   ★★1/2

 
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