Community   コミュニティ

放送局: NBC

プレミア放送日: 9/17/2009 (Thu) 21:30-22:00

クレイメーション・エピソード放送日: 12/9/2010 (Thu) 20:00-20:30

製作: クラスノフ・フォスター・プロダクションズ

製作総指揮: ダン・ハーモン、ラス・クラスノフ

出演: ジョー・マクヘイル (ジェフ・ウィンガー)、ジリアン・ジェイコブス (ブリタ・ペリー)、デニー・プディ (アベッド・ナディア)、イヴェット・ブラウン (シャーリー・ベネット)、アリソン・ブリー (アニー・エディソン)、ドナルド・グローヴァー (トロイ・バーンズ)、チェヴィ・チェイス (ピアース・ホウソーン)、ケン・ジャング(セニョール・チャン)


物語: クリスマスの朝、アベッドが目覚めてみると、彼はクレイメーションになっていた。アベッドは、これはクリスマスの本当の意味を探し求めよという神の意志が働いているに違いないと感じるが、周りの同僚は、アベッドが気が狂ったに違いないと、カウンセリングを受けさせようとする。しかしアベッドの決心は固く、同僚たちもそれぞれクリスマス特有のプロップに扮してアベッドと共に旅に出る‥‥


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「コミュニティ」は、昨シーズンから始まっているNBCのコメディだ。現在NBCのコメディは、すべて観客の笑い声 (ラフ・トラック) が後ろに被さらない、シングル・カメラ撮影のコメディだ。「ジ・オフィス (The Office)」「30ロック (30 Rock)」「パークス・アンド・レクリエイション (Parks and Recreation)」等、すべてそうだ。「コミュニティ」もその例に漏れない。


「コミュニティ」の舞台は、グリーンデイル・コミュニティ・カレッジと呼ばれる、日本風に言うと専門学校に近い大学だ。アメリカのコミュニティ・カレッジのこととて、そこには人種や年齢、性別の枠を超えて、色々な人間が集まってくる。学生だけでなく、彼らを教える教授や大学関係者 (ファカルティ) まで独特の曲者ばかりなのだ。


主人公格の元弁護士のジェフに扮するのは、ジョー・マクヘイル。エンタテインメント番組専門チャンネルのE!でおちゃらか芸能ニューズの「ザ・スープ (The Soup)」のホストで知られている。他にもAMCの「マッド・メン (Mad Men)」ではシリアス演技のアリソン・ブリーや、懐かしのチェヴィ・チェイスという名前もある。


しかし、昨年番組が始まった時に最も目を引いたのは、チャイニーズでありながらスペイン語を教えているセニョール・チャンに扮するケン・ジャングだった。ジャングは昨年最大のスリーパー・ヒットとなった「ハングオーバー (The Hangover)」で、切れたチャイニーズ・マフィアの元締めとして印象を残した。やっとカンフーを絡めないまともなチャイニーズのコメディアンが出てきたかという印象が強かった。


その印象も冷めやらぬ間にネットワーク・コメディのレギュラーとしてまた出てきたところを見ると、業界でもだいぶ買われているようだ。アジア系コメディアンというと、正直言ってコリアン女性のマーガレット・チョー以外まったく思い浮かばない時に、まともにコメディのできるチャイニーズの男というのは貴重だ。実際、この前後のアウォーズ・セレモニーや深夜トークでは、引っ張りだこのジャングの顔を見まくって、多少うんざりとすら思わせられた。そのジャングが、「コミュニティ」で扮するのはスペイン語教師のセニョール・チャンだ。このキャスティング、想像するだけで見なくてもおかしい。


しかし、「コミュニティ」がその本領を発揮したのは、今第2シーズンに入ってからだ。そこそこおかしく、わりとよくできていると思わされた「コミュニティ」で、今シーズン、まず本気でおおっと思わされたのが、ハロウィーン・エピソードだ。


このエピソード、「エピデミオロジー (Epidemiology」」では、バイオハザード物質を吸引した生徒たちが続々とゾンビ化する。おちゃらけやコメディというよりかなり本気でホラーになってしまい、これってどうオチをつけんのかとはらはらしながら見た。「コミュニティ」侮りがたしという印象を強く受けた。


そして今回のクリスマス・エピソードである「アベッズ・アンコントローラブル・クリスマス (Abed's Uncontrollable Christmas)」だ。このエピソードでは、生徒の一人であるアラブ系のアベッドが朝起きてみると、クレイメーション化してしまっている。これはクリスマスの意義を見つけよという神のお告げに違いないと、アベッドは旅に出る。


とにかく、まずイスラムのアベッドがクリスマス・エピソードの主人公というのがおかしい。オレはイスラム教だけどクリスマスも好きだよと、堂々と言うのだ。確かにクリスマスって、今では世界的イヴェントと化している。もちろん日本人だってクリスマスを祝う。クリスチャンだけの祭事じゃないのだ。雪がしんしんと降る冬のさなかに人々にプレゼントしたりやさしくあれというメッセージが、キリスト教の枠を超えて世界中で受け入れられているということだろう。


このエピソードは全員クレイメーション化するのだが、その巧さにも舌を巻く。ちゃんとクレイメーションが本人に似ているのだ。見ただけで誰が誰だかすぐわかる。もともと生徒たちは人種や年齢、性別が色々で区別をつけやすいというのはあるだろうが、しかしそれでも、一と目でオリジナル・キャラクターの見分けがつく。うまいもんだ。


クレイメーションというと思い出すのは、かれこれ7、8年ほど前に、当時、深夜トークの「レイト・ナイト・ウィズ・コナン・オブライエン (Late Night with Conan O’Brien)」ホストをしていたコナン・オブライエンが、全編をクレイメーションで製作したエピソードだ。この時もクレイメーション製作の巧さに感心させられたが、最も感心したのは、別に、特にクレイメーションで作る意味や必要なぞさらさらないのにクレイメーション化したという、その点にこそだった。クレイメーションで作ったデイヴィッド・ボウイが演奏してもどこに意味があるというのか。


その点では、物語を語るという今回のクレイメーションの方が、語り口やトリックによる演出効果が期待できる。一昨年のアカデミー賞短編アニメーション部門を獲得した「ピーターとオオカミ (Peter and the Wolf)」が、クレイメーションでありながら俳優が演技するのよりも強く感情に訴えるという逆説的な効果を実証したことを思い出す。これでは本物の俳優の出る幕がない。そして今回の「コミュニティ」も同様の効果を得ているのだ。これはクレイメーションの賜物か、それともクレイメーションの元になった俳優の貢献か。いずれにしても、今、アメリカで最もクールな番組は、「コミュニティ」であると断言してしまっても過言ではあるまい。








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コミ・カレ!! (コミュニティ)   ★★★

 
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