Colossal


シンクロナイズドモンスター  (コロッサル)  (2017年4月)

世に奇想天外な設定の作品はそこそこあるが、「コロッサル」ほど常軌を逸しているものはほとんどない。ある日ある時、韓国のソウルに怪獣が現れ、暴れ始める。実はその怪獣、アメリカの片田舎で何もかもうまくいかず悶々としている女性グロリアの分身で、しかもグロリアが公園の砂場にいる時だけ現れ、グロリアとまったく同じ動きをする。


怪獣がいるのはソウル市街だから、グロリアが暴れ回ると怪獣も暴れ回り、結果、被害も甚大だ。ビルは倒され、人も踏み潰される。意図的ではないにせよ、グロリアのせいで多くの人が死ぬ。TVを見ていて怪獣が自分の動きにシンクロしていることに気づいたグロリアは、これではいけないと思い、町のコリアンのグローサリー・ストアに行って片言のハングル文字を習い、公園で地面に、同時にソウルで怪獣が地面に、ごめんなさい、もうしませんと文字を書く。


これで一息ついたかと思ったのも束の間、もう一匹怪獣、ならぬ今度は大型のロボットがソウルに現れ、暴れ始める。こちらは実はオスカーの分身で、オスカーと同じ動きで暴れ回る。しかし人々に迷惑をかけちゃいけないと自省したグロリアと異なり、オスカーにそんな殊勝な心がけはない。グロリアにたしなめられ、一時改悛の情は示すものの、内心グロリアに惚れているオスカーは、そのグロリアがバー仲間のアパートにしけこんだと聞くと、一時の反省などぶっ飛んでしまう。さらにはグロリアの前ボーイフレンドのティムも現れたため、理性のたがが外れ、自分で自分のバーを滅茶滅茶にしただけでなく、グロリアを殴り、ソウルにまで壊滅的打撃を与える。事態を収拾するために、グロリアはソウルに飛ぶ‥‥


という、実際にでき上がったその作品を見ていないなら、これ、本当に作れるの、としか思えない作品が、「コロッサル」だ。だいたい、なんでアメリカ内陸部に住む人間が、ソウルで暴れ回る怪獣とシンクロしないといけない。なんである時間帯の決まっている場所でだけそれが可能なのか。なんで一体は怪獣で一体はロボットなのか。子供時代のグロリアとオスカーを描くことで、ある程度二人の関係や理由付け、将来何かが起こるという雰囲気の醸成はされているが、それでも、ある時怪獣が現実のものとなって現れ暴れ回るという説明にはなっていない。


それにソウルだ。これは日本人の目からだけならず、世界の誰の目から見てもアジアに怪獣が現れるなら、場所は日本、明確には東京となるのが自然の摂理だと思うが、たぶんグロリアとオスカーが子供時代に製作した模型の関係からか、なぜだか怪獣はソウルに出現してしまう。なんというか、近年SFものの舞台として頭角を現してきつつある香港や上海ならまだしも、ゴジラがなぜだか大西洋に現れてしまったとでもいうような違和感がある。本人 (獣) もしまった、間違えたと思いそうだ。


「グエムル -漢江の怪物- (The Host)」という韓国発の怪獣映画は確かにあったから、その影響もあるか。調べてみると韓国には他に「怪獣大決戦 ヤンガリー (Reptile 2001/Yonggary)」という、なんと米韓合作の怪獣映画が製作されていたから、もしかしたら製作者はそちらの方を見ていて影響されたのかもしれない。演出のナチョ・ビガロンドはスペイン生まれで、南米を含めスペイン語圏にはアジア発の低予算映画やTV番組が結構流布しているから、あり得ない話じゃないと思う。あるいは単純に、韓国マネーが入ってたりするからか。


登場する怪獣は、オフィシャルのサイトでは巨大生物 (a larger-than-life creature)、あるいは怪物 (monster) と表記されているので、正確には怪獣とは言わないが、日本人の目から見たらこれは怪獣以外の何ものでもない。因みにWikiでは何者かの手によって、ちゃんとKaijuと書かれていた。


主人公のグロリアに扮するアン・ハサウェイは、少し見ない間に結構ケツがでかいおばさん体型になっていて驚いたが、もしかして意図的か。アメリカではケツは後ろに突き出していればいるほどセクシーという、ホッテントット型を最上と考える者が案外いる。キム・カーダシアンのように白人でもそういう体型になっている者は、あれはやっぱり手術でケツになんか入れたのかとしか思えない無理な体型をしているので、思わずハサウェイ、お前もかと思ったのだった。


オスカーに扮するジェイソン・サダイキスはNBCの「サタデイ・ナイト・ライヴ (Saturday Night Live)」出身。昨秋始まったFOXの実写・アニメ・ハイブリッドの「サン・オブ・ゾーン (Son of Zorn)」では主人公の声を吹き替えているが、「ゾーン」は先頃キャンセルが発表になったばかり。ゾーンは人の言うことには耳を貸さない唯我独尊型の人物で、オスカーも一見人がよさそうでいながら結局自分のことしか考えていない男だったということが明らかになって、破滅の道を突き進む。そういう役が似合うというのも、なんだか。









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グロリア (アン・ハサウェイ) はずぼらな人間で、酒を飲んでは記憶をなくして朝帰りを繰り返した挙げ句、ボーイフレンドのティム (ダン・スティーヴンス) からついに匙を投げられ、アパートを追い出される。行くところのなくなったグロリアは郷里に帰り、幼馴染みのオスカー (ジェイソン・サダイキス) が経営するバーで働くことになり、ここでも結局公園で朝まで飲んだくれを繰り返す。一方、韓国のソウルに巨大怪獣が出現、街を脅かしていた。ある時グロリアは、TVを見ていて自分の動作が怪獣の挙動と一致していることを発見する。どうやら怪獣の動きは自分の動きとシンクロしているようなのだ‥‥


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