バンク・オブ・アメリカ・コロニアル

2003年5月22-25日   ★★1/2

テキサス州フォート・ワース、コロニアル・カントリー・クラブ

1945年、PGAのLAオープンに出場したベイブ・ザハリアス以来58年ぶりに女子ゴルファーが出場することで話題を独占した今回のコロニアル、とにかくマスコミの注目度が尋常じゃない。そのLPGAのアニカ・ソーレンスタムの一挙手一投足がニュースとなる。本人のプレッシャーや緊張だって尋常じゃないだろう。


ケーブル局のUSAは、木曜の初日、平日だというのに朝からソーレンスタム特集で、1番のティ・オフからコース・アウトするまで、全ショットを生中継だ。その上この日はUSAの平日のスポーツ中継の視聴率記録を達成したそうで、いかに注目されていたかがわかる。しかもインターネットが普及している今日、ESPNやPGAツアーのサイトに行くと、リアルタイムでソーレンスタムのスコアをアップデイトしており、ついつい私も仕事の合間合間にちょいと覗いては、すげえ、まだアンダー・パーで回っている、もしかすると予選通過いけるかも、と、他人事ながら経過が気になって気になってしょうがない。メイジャーでタイガー・ウッズがプレイする時でも、平日日中はここまでゴルフが気になることはないんだが。


バック9からプレイを始めたソーレンスタムは結局この日、470ヤード5番パー4で初めてのボギーを叩いてイーヴン・パーとなり、最終9番パー4を迎える。その第2打はグリーンに止まりきれず、僅かにグリーン・オーヴァー、フリンジからのバーディ・パットは一瞬弾んで順回転がかかってしまい、下りのグリーンに勢いがついて、カップを10フィートオーヴァーしてしまう。ソーレンスタムはその返しのパットを外し、結局このホール、ボギー、初日を1オーヴァー71で終える。


もちろんこれは予想以上の善戦で、足切りが多分1オーヴァー前後と見られているだけに、金曜もこの調子で行けば予選通過できるかも。というわけで、ただでさえ過熱気味の報道合戦が、さらに過熱する。週末の中継権を持っているCBSは、もしソーレンスタムが週末もプレイすることになれば、朝11時から中継すると発表、おいおい、マスターズですら2時前から中継したこともないのに、こんな一トーナメントを午前中から生中継ってか。


注目の2日目、ソーレンスタムは2番パー4でバーディを奪い、イーヴン・パーに戻す。あとは全部パーで上がれば予選通過だ。その期待をよそに、逆にソーレンスタムは5番パー4、6番パー4と2ホール続けてボギーを叩き、さらに8番パー3もボギーで、3オーヴァーまでスコアを落とす。まずい。バック9で2、3個バーディがとれなければ、万事休すだ。


そして迎えた短めの10番パー4で、ソーレンスタムは絶妙のドライヴを打っておきながら、ウエッジの第2打がグリーンに乗りこそしたもののカップまで50フィートも残し、そこからなんと3パットで、やはりこのホールもボギー、4オーヴァーとなって、この時点でソーレンスタムの予選通過の一縷の望みもほぼ潰えた。結局ソーレンスタムは12番パー4でもボギーで、この日4オーヴァー74、通算5オーヴァーで、予選通過はならなかった。特に2日目はパットの調子が悪すぎた。やはりナーヴァスになっていたんだろう、距離感が今一つで、バーディが欲しいところで3パットしていたんでは、いくらなんでもスコアはまとまらない。


それにしても今回、ソーレンスタムのPGA参加が巻き起こした波紋は大きく、ありとあらゆるところで喧々諤々の論議が起こった。私は、ソーレンスタムがPGAに出ることが、PGAにとってマイナスとなるとはまったく思わない。実際視聴率は記録的で、スポンサー獲得の面から言うならば、大いにプラスとなったはずだ。ヴィージェイ・シングが言うように、ソーレンスタムの参加によって、枠から漏れるPGAのグラインダーが一人出ることになるというのは、可哀想だが、最底辺のゴルファーが一人いなくなることは、ファンにとっては痛くも痒くもない、我々は、ただ、最高のゴルフさえ見ることができるのならば、プレイするのが男性であろうが女性であろうが気にしないと言うしかない。この時代に、今さら男のメンツもくそもないだろう。


ただし、LPGAのトップ女子プロがPGAツアーに参加することにより、LPGAはその意義をほぼなくしてしまうだろうとは思う。なんとなれば、トップ女子プロがすべてPGAに参加することになれば、LPGAはその残りの二線級ばかりというのを自ら証明してしまうことになるからだ。そんなゴルフを見たいとは誰も思うまい。 LPGAのソーレンスタムがLPGAの面目を賭けてPGAに参加することにより、最もわりを食うのがLPGAになるというのは、なんとも皮肉な話だとは思うが。


いずれにしても、今回ソーレンスタムは、距離の短いコースならば、女子プロがPGAに交じっても充分やっていけそうな感触をファンに与えた。もしかしたらあと数年経てば、ハワイのミシェル・ウィーが定期的にPGAに交じってプレイしているようなことになるかもしれない。その時を楽しみに待とう。


ところで今回のコロニアル、優勝したのは3日目にコース・レコード・タイの9アンダー61で回ったケニー・ペリー。最終スコアは19アンダーで、13アンダーで2位のジャスティン・レナードに6打差をつけての圧勝だった。とはいえ見どころがなかったわけではなく、レナードも最終日レコード・タイの61で回り、しかも最終18番パー4のティに立った時点でこの日10アンダー、もし18番でもバーディならマジック・ナンバーの59という彼のベストのゴルフでプレイしており、それはそれでなかなか緊張させた。


しかし、レナードはその18番、パーフェクトのドライヴを打っておきながら、144ヤード、9アイアンの第2打をミス・ショット、グリーンまで届かない。そこからのアップ&ダウンに失敗して、なんと最終ホール、ボギー。59を夢見させておきながら、61で手を打たざるを得なかった。見てる方もがっかりだが、しかしもっと口惜しかったのは本人だろう。とまあ、最後少しは面白いものを見せてくれたとはいえ、やはり今回のコロニアルは、誰もが皆ソーレンスタムのコロニアルとして記憶することになるだろう。来年の今頃、皆ソーレンスタムのことは覚えていても、誰が勝ったかなんてきっと誰も覚えてないに違いない。







< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system