放送局: サンダンス
プレミア放送日: 7/13/2001 (Fri) 21:00-23:00
製作: エンデモル・エンタテインメント
製作総指揮: イヴォン・クレン
製作: マリン・カーミッツ、アラン・サルデ
脚本/監督: ミハエル・ハネケ
撮影: ジャーゲン・ジャージス
編集: カリン・マートゥッシュ、ナディーン・ミューズ、アンドレアス・プロチャスカ
音楽: ギバ・ゴンカルヴァ
出演: ジュリエット・ビノシュ (アン)、ティアリ・ノヴィック (ジョルジュ)、ジョセフ・ビアビクラー (農夫)、アレクサンドロ・ハミジ (ジーン)、ルミニタ・ゲオルギュー (マリア)、オナ・ルー・イェンケ (アマドゥー)
物語: 映画女優のアンは、今度主演するサスペンス映画の仕事で忙しい。そのアンを頼って、ボーイ・フレンドのジョルジュの弟ジーンがパリにやってくる。ジーンは未来のないヨーロッパの片田舎の農家の生活に嫌気が差したのだ。ジーンは街角でホームレスの女性マリアにものを投げたかどで、通りすがりの黒人青年アマドゥーから責められるが、警官は白人のジーンはともかく黒人のアマドゥとホームレスのマリアを連行、違法滞在であったマリアはコソボに強制送還される。一方、カメラマンのジョルジュとアンの間も平穏とは言い難く、二人は時に罵り合いながらもつき合いを続けていた‥‥
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私はよく、家で深夜、一人でコンピュータとにらめっこしている時、すぐそばのTVでインディペンデント映画専門の映画チャンネル、IFCやサンダンス・チャンネル、あるいはクラシック映画専門のTCMやAMCを流しっぱなしにしている。時々思いもかけなかった面白い作品や、話に聞いてはいたが実物を見たことはなかった過去の名作を目にする機会があるからだ。
この間もそうやっていつものようにIFCをちらちらと見ながら仕事をしている時、面白い作品に出会った。理由もなく暴力が突発し、主人公が赤の他人を殺す様を描くもので、それが何が面白いかと問われれば答えに窮するんだが、とにかく途中から目が離せなくなった。私はこの映画のタイトル、「ファニーゲーム (Funny Games)」と、監督のミハエル・ハネケ (最初はマイケル・ハネキ (Michael Haneke) と読んでいたが) という名前をしっかりと心に刻み込んだ。
そしたら今年5月、カンヌ映画祭でグランプリをとった作品、「La Pianiste (ピアニスト)」の監督がミハエル・ハネケということを聞いて、なんだ、新人でも何でもなかったんだということを知った。ヨーロッパではつとに知られていたらしい。そしていきなり名前が世界レヴェルになったからかどうか、今度はサンダンス・チャンネルがハネケの昨年の作品、「コード・アンノウン」を放送するという。サンダンス・チャンネルは、インディペンデント映画の祭典として知られるサンダンス映画祭を主宰するロバート・レッドフォードが始めたインディ映画専門チャンネルで、ペイTVのショウタイムとは姉妹チャンネルの間柄にある。 私の知る限り、「コード・アンノウン」はアメリカでは映画祭サーキットではともかく、劇場での一般公開はされていない。これはチャンスだと早速見てみた。
「コード・アンノウン」はいくつかのエピソードが並行して描かれるのだが、それらが最後に有機的に結合して大団円を迎えると思っていると肩透かしを食う。あるエピソードとあるエピソードには繋がりがあるが、別のエピソードにはない。特に冒頭と最後、それに間に点綴される聾唖の子供たちはいったい何を意味しているのか。タイトルが意味するように、きっとこれらの話を繋ぐはずのコードは不明なのだ。
私はそういう作品全体を被うテーマとかよりも、一つ一つのショットの演出の方を楽しんだ。この作品、とにかく1シーン1ショットの長回しが多い。全体を通してカットは4、50くらいで済んでいるんではないだろうか。特に最初ビノシュが現れるシーンは10分近い長回しで、こういう長い1シーン1ショットって、見る方も緊張する。作品となって提示されているわけだからNGであるわけはないのだが、切り返しもなしに同じシーンが5分くらい続くと、何か思わぬハプニングが起きそうな気がしてくる。エキストラはいったい何人くらい使っているのか。一回撮影が済むと、次のテイクの準備まで1時間はかかるのではないだろうか。しかもこれはパリの市街の移動撮影だ。撮影に数日はかかっているだろう。パリの街中でそんなに交通を止めていられるものなのだろうか。
長回しを見るのは撮影現場の緊張が感じられて映画見の醍醐味の一つなのだが、 1シーンが長過ぎると見る方も多大の緊張を強いられて疲れる。そういえば昔、相米慎二の「ションベン・ライダー」を見た時に、20分にもなんなんとする超特大の長回しを見せられて吐きそうになったこともあったなあ。
緊張するといえば、パーカッションのリズムに乗せて進む最後のシークエンスは、実はシチュエイションもよくわからないのだが、異様に緊張させてくれる。何がなんだかよくわからないのに手に汗を握るという滅多にない経験をしてしまった。何が起こっているかわからないと想像力の働かせようがないから、結果として興奮したり緊張したりしようがないふうにも思えるのだが、人はそういう因果関係なしでも結構興奮できるようにできているようだ。条件反射かなんかなのだろうか (何の?)。これは新しい発見であった。
主人公のアンに扮するビノシュは、こないだ見た「サン・ピエールの生命」とは打って変わってとてもよい。彼女は歴史物なんかよりも、現代的作品の方がマッチする。 「嵐が丘」より「存在の耐えられない軽さ」、「サン・ピエールの生命」より「コード・アンノウン」だ。特に彼女がメトロの中で不良に絡まれるシーンの表情が印象的。
話は変わるが、私の知人で (若い日本人の男だ) ニューヨークの地下鉄でやたらガタイのいい黒人の男に、何の理由もなくいきなりぼこぼこに殴られたというやつがいる。別にガンをつけたとかつけられたとかいうわけでもなく、あっと思ったらいきなり目の前に立っていて、応戦する間もなくとにかく滅茶苦茶殴られたそうだ。多分その男は虫の居所が悪かったのだろうと言っていたが、とにかくあっという間の出来事で、知人も最初殴られながら何が起こったのかまったくわからず、周りの乗客も唖然としてただ見ているだけだったそうだ。もちろん事態を把握していても手助けしてくれたかは疑問だが。メトロで絡まれるビノシュを見て、この知人のことを思い出した。都会というのはこういう理由もない暴力が勃発する可能性に満ちている。そうそう、このシーンも1シーン1ショットの長回しだった。
ビノシュを起用できたくらいだから、ハネケはヨーロッパでは結構知られている監督なんだろうと思ってちょっと経歴を調べてみたら、ロカルノやカンヌ等、ヨーロッパの映画祭の受賞者の常連だということだ。彼の作品は突発する暴力というものに特色があり、特に89年の「ザ・セヴンス・コンティネント (The Seventh Continent)」は傑作との評価が高い。ううん、見てみたい。ヴィデオにはなっているんだろうか。今さら劇場公開は無理だろうから、サンダンスかIFCのどっちかが放送してくれないかなあ。
