Closed Circuit


クローズド・サーキット  (2013年9月)

実はこの作品を見る当日までこういう映画が公開されているということを知らず、さて今日は何を見ようかとネットで近くの劇場の上映予定をチェックしていて、たまたま目に止まったのが「クローズド・サーキット」だ。 

  

何かアクションという気分で、これくらいしか上映されてない。しかも予告編すら見たことがない。子供やティーンエイジャー向けのファンタジー系なら、「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々: 魔の海 (Percy Jackson: Sea of Monsters)」や「キック・アス2 (Kick Ass 2)」、「ザ・モータル・インストルメンツ: シティ・オブ・ボーンズ (The Mortal Instruments: City of Bones)」、「リディック (Riddick)」等幾つかあり、その日の気分によってはそういう作品にも食指が動いたりもするが、今日はパスだ。 

  

それに「クローズド・サーキット」、よく見たら出ているメンツがなかなかすごい。主演がエリック・バナとレベッカ・ホール、共演はキアラン・ハインズ、ジ ム・ブロードベント、ジュリア・スタイルズと、こいつはもしかしたら意外な拾い物かもしれないと、勝手に期待に胸を膨らませて劇場に足を運ぶ。 

  

冒頭、ロンドンの中心部のマーケットでテロによる爆破事件が起きる。セキュリティ、カメラの映像を模すスクリーンが倍々という感じで段々分割されて行き、この中のどれかで爆発が起きるに違いないという出だしはなかなかいい。 

  

テロ事件は多数の被害者を出し、中東系のテロリスト分子エドガンが逮捕される。彼を裁く裁判は世紀の裁判になるだろうと注目される。しかし検察側は、裁判に必要な証拠物件に公にはできないものがあるとして、非公開の裁判を求めてくる。まず裁判を公開にするか非公開にするかということの是非の決定から始めなければならず、法務長官は被告の特別後見人としてクローディアを任命する‥‥ 

 

ここでのキャッチは、特別後見人はすべての情報にタッチできる立場にいるが、いったん情報を目にしたら、被告人を含めて他の誰とも一切の接触を禁じられるこ とだ。情報を公開すべきかどうかを判断する立場にいるわけだから、そこから情報が漏れるようなことは、万が一にでもあってはならない。そのために厳重な情報管理が行われる。 

 

そのことはむろん、重大な機密、情報が後見人一人の目に晒されることを意味している。逆に言えば、もしある者がこの事件に関してどうしても公にしたくない事実があるとすれば、後見人の口さえ封じればいいことになる。つまり、後見人に指名されたクローディアには、敵の手が忍び寄ってきていた‥‥ 

 

というのが映画のサスペンス醸成の要諦なのだが、しかし、例えば被告の直接の弁護人が、たぶんほとんど同じ理由から自殺を装って消されていることが判明する。ということは、たとえ今回の後見人が殺されるようなことが起こっても、検察側はまた新たな後見人を指名するだけで、クローディアの立場からするとやるかやられるかの生死をかけた戦いになるが、裁判というシステムから見ると、たとえ何人かの個人の命が奪われるようなことになろうとも、公開か非公開かにかかわらず最終的に必ず裁判は行われる。特に「クローズド・サーキット」においては、物語の根本、興味の中心は裁判の是非にあるわけで、そこにクローディアという個人が絡んで話が面白くなったかというと必ずしもそうは言えず、むしろ興味が拡散して薄まった感じがする。 

 

作り手も、クローディアのかつての不倫相手のマーティンを絡ませ、実質彼を主人公としてクローディアと自身の身辺に大きな危険が迫っていることを察知して行動を起こさせるなど、色々考えている。しかし以前にその不倫のせいでマーティンがこじれた離婚をせざるを得なくなった、とか不必要に下卑た設定がいたずらに話をハーレクイン化させており、こういった設定はもちっとストレートで全然かまわないと思わせる。一方でテロの被告であるエドガンの素性は、早い段階でもしかしたらと思わせてしまい、こちらはあまり捻りがない。この辺のプロットこそもう一捻り欲しかったところだ。 

 

こういう、話の作りや構造にもう一工夫あればと思わせる反面、上述したように出演している俳優は一線級だ。あるいは、だからこそ話の無理に逆に気づいてしまうということもある。バナとホールの主演の二人はともかく、ブロードベンド、ハインズ、スタイルズ辺りは、もっと使えるはず、もっと話を胡散くさく掻き回すことができたはずという不完全燃焼気分も残る。私の意見としては、この話、こんなに大きくしないで、逆にTV番組の一エピソードとして、たとえば「ロウ・アンド・オーダー: UK (Law & Order: UK)」の中の一話としての方が有効に機能したような気がする。 

 

とはいえ一方で、あまり目にする機会のないロンドン市街での街頭撮影は、そこそこ満足させてもくれる。先頃「ウルヴァリン (The Wolverine)」でめったに見ることのない東京をスクリーン上で見た時には、それだけで興奮させてくれたものだが、実は世界有数の大都市であるロンドンをスクリーンの上で体験する機会は、ニューヨークやロサンジェルスと較べると、それほど多くはない。「007」や「ジェイソン・ボーン」シリーズでロンドンが舞台になったりした時や、一時期のウディ・アレン作品やダニー・ボイル作品を除くと、アメリカに入ってくる英国製作品というのは大概が時代もので、TVでもBBCアメリカを考慮しなければ、PBSの「マスターピース (Masterpiece)」や「ダウントン・アビー (Downton Abbey)」に代表される歴史ものか、現代ものというとせいぜい「シャーロック (Sherlock)」くらいしか思いつかない。 

 

と書いて、そういや新シーズンのCBSのホームズもの「エレメンタリー (Elementary)」は、NYとロンドンが舞台だったと思い出した。NBCの「パークス・アンド・レクリエーション (Parks and Recreation)」も、シーズン・プレミアはロンドンが舞台だ。また、実は昨年のロンドン五輪時には、嫌というほどTVでロンドン特集を見せられたものだった。TVではロンドンは決してレアというわけではないか。










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ロンドンのマーケットでテロによる大きな爆発が起き、多数の死傷者が出る。アラブ系のエドガンが逮捕され、その裁判の行方に全英の注目が集まるが、政府は公になると公共の治安に影響を及ぼす怖れがある証拠物件を提出するとして、裁判を非公開にするよう要請する。その是非を調査するため、法務長官 (ジム・ブロードベンド) は被告の特別後見人としてクローディア・(レベッカ・ホール) を指名する。センシティヴな情報に直接触れる立場にいるクローディアには、厳重なセキュリティと完全な秘密保持が求められた。一方、エドガンの弁護士が重圧に耐えきれずに自殺、その後釜にマーティン (エリック・バナ) が指名される。実はクローディアとマーティンはかつて不倫関係にあったが、それが原因でマーティンは妻と離婚していた。そのマーティンにタイムズ記者のジョアンナ (ジュリア・スタイルズ) が接触、前任者の死は実は自殺ではないと仄めかす。マーティンとクローディアはそれぞれの思いを胸に秘めながら独自に調査を進めていく‥‥


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