Clean House: The Search for the Messiest Home in the Country 3 

クリーン・ハウス: ザ・サーチ・フォー・ザ・メッシイスト・ホーム・イン・ザ・カントリー3

放送局: Style (スタイル)

プレミア放送日: 4/5/2003 (Sat)

メッシイスト・ホーム3・プレミア放送日: 5/20/2009 (Wed) 22:00-23:00

製作: スタイル

製作総指揮: ジーナ・ルービンシュタイン、リンジー・ライルズ

ホスト: ニーシー・ナッシュ

出演: マーク・ブルネッツ (デザイン・グールー)、トリッシュ・サー (ヤード・セール・ディーヴァ)、マット・アイズマン (ゴゥ・トゥ・ガイ)


内容: アメリカ中の片付かない家にお邪魔して綺麗にするリアリティ・ショウ。


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スタイル・ネットワークは、マイナーなチャンネルの多いケーブル・チャンネルでも、さらにマイナーなチャンネルと言える。姉妹チャンネル、というか兄貴分のチャンネルが芸能界専門のニッチ・チャンネルE!であることからしても、その弟分のスタイルの規模や知名度がわかろうというものだ。


実際、スタイルが編成している番組は、そのE!のお下がり番組の再放送が主体で、それ以外はABCでやっているリアリティ・ショウの「エキストリーム・メイクオーヴァー (Extreme Makeover)」やNBCの「ザ・ビギスト・ルーザー (The Biggest Loser)」の再放送など、自社オリジナル番組よりも他チャンネルの人気番組の再放送の方が多い。最近のオリジナル番組で印象に残っているのは、雑誌「マリ・クレール」編集部にインターンとして働く3人の女性を追ったリアリティ・ショウの「ランニング・イン・ヒールズ (Running in Heels)」くらいのものか。


そういうチャンネルは、ややもすると一度も見ることなく忘れ去ってしまうのがオチだ。それが今回わざわざチャンネルを合わせてみたのは、うちの女房の強力な推薦があったからだ。最近私よりもよくTV、それもリアリティ・ショウを見ている女房は、私のいない時にリモート片手に色々と新規開拓に余念がなく、あちこちで見つけた面白い番組を逐一私に報告してくれるのだが、彼女が発見した最新かつ最大のお勧めが、スタイルの「クリーン・ハウス」なのであった。


「クリーン・ハウス」は、一言で言えば近年流行りのホーム・リニューアル系のリアリティ・ショウだ。このジャンルはかつてTLCの「トレイディング・スペイスズ (Trading Spaces)」が口火となって、2003年頃に一時的に大いに流行した。むろんこの手の専門チャンネルであるHGTV (Home and Garden Television) やDIY (Do It Yourself) チャンネル等にチャンネルを合わせると、それまでも流行り廃りに関係なくこの種の番組ばかりだったりしたわけだが、ニッチ・チャンネルの製作するちまちまとした金のかかっていないリアリティ・ショウという印象は拭い難かった。


そこに総合ケーブル・チャンネルも参入してこの系統の番組を製作し始めたことで、かなりのムーヴメントに発展したと言える。しかし、それでも「スペイスズ」人気を超える番組は現れず、その本家の「スペイスズ」人気もだんだん衰え、結局ブームも下火になった。


一方、代わってネットワークのABCが、金に糸目をつけず大がかりな改装を行うことで視聴者の目を引いた「エキストリーム・メイクオーヴァー: ホーム・エディション (Extreme Makeover: Home Edition)」を放送、今ではこの番組がジャンルを牽引しているという印象がある。やはり番組にかける予算がケーブル・チャンネルより普通で2桁も違うネットワークが同様の番組を製作すると、少なくとも見た目の違いは歴然としている。


それらのホーム・リニューアル系のリアリティ・ショウからは、さらにリニューアルというよりも、汚れて整理されていない家、部屋を綺麗にすることのみに焦点を絞った傍系のジャンルが派生してきた。その嚆矢がBBCアメリカの「ハウ・クリーン・イズ・ユア・ハウス (How Clean Is Your House?)」であり、その頂点が「クリーン・ハウス」と言える。


部屋を散らかしてしまう人間はどこにでもいるが、整理整頓が苦手というだけでなく、部屋が片付かない最大の理由が、物が部屋中に溢れかえっているからという家は多い。要するに物を捨てられないのだ。だから部屋が片付かない。アメリカではこの種の人間を「ホーダー (Hoarder)」、行為を「ホーディング (Hoarding)」といって、立派に精神病の一種という認識が定着している。こないだも、アメリカで最も人気のある日中トーク・ショウの「オプラ (Oprah)」を見ていたら、ホーダーの家庭の主婦が出てきて、ゴミ溜めと化した立派な一軒家を紹介していた。


「クリーン・ハウス」では、部屋が片付かない最大の理由が物が溢れかえっているためということに着目し、まず、それらの物をジャンク・セールで一斉に売り払う。それで得た収益を元に部屋を改装するという趣向だ。だいたいが物持ちだから売る物自体はそれなりにあるのだが、それが価値のあるものかというと、第三者の目から見るとまったくガラクタばかりで、そのため当人から見ると清水の舞台から飛び降りるつもりでこれも売ると決心したのに、結局二束三文でしか売れず、あるいはまったく買い手がつかなかったりする。だいたい、どこのヤード・セールでも売り上げが2、3千ドルに達すればいい方で、番組ではマッチングと称してこれに1,000ドルを番組から出し、合計ですべてのリフォームを間に合わせている。


番組としての面白さの一つは、このヤード・セールにあったりする。なんとなれば番組に登場するホーダー、あるいはコレクターの彼らは、それらの物を捨てられない、売れない、人に上げることができないからこうやって部屋がゴミ溜め化しているのだ。そういう者たちに、物を捨てろというのは言うに易く行うは難しで、最初こそ、よし、部屋を片付けるぞと決心して片し始めたはいいものの、すぐにあれも惜しいこれも惜しいと思い始める。あるいは、そのどれにもちっぽけにせよ思い出が詰まっていたりするのだ。


そういうわけで、彼らはヤード・セールで売ろうと庭に並べたものの数々を、ちょっと目を離した隙にまた隠して家の中に持ち帰ろうとしたり、どうしてもこれは売れないあれも売れないと駄々をごね始め、時にはおいおいと泣き出してしまう。番組関係者はそういう奴らをなだめたりすかしたり脅したりしてヤード・セールを完遂させ、なにがしかの金を手に入れてリフォームまでこぎつけるのだ。


また、番組に出てくるのは大概が夫婦者なのだが、だいたいまず、夫婦のどちらかがホーダーかコレクターだ。コレクターの場合はホーダーと異なって散らかり方にそれなりの一定の法則や秩序らしきものがあったりするが、しかしそれとて、片付けられていなければやはり第三者の目からはただのゴミにしか見えない。


女房の話によると、あるエピソードでは夫が雑誌コレクターの黒人の夫婦が出てきて、自分の雑誌が山のようにあるせいで片付かないのに、それを女房のせいにして責める。それなのに自分は炊事洗濯等の家事はまず手伝わず、そこを突かれると、だって、そのために結婚しているんだからと、まるで妻を家政婦か奴隷扱いする。妻は悔しくて下を向いて泣いていたそうだが、それを聞いて思ったことがあった。


最近、ケーブルTVのリアリティ・ショウというと、TLCの「ジョン・アンド・ケイト・プラス・エイト (Jon and Kate Plus Eight)」が話題をほぼ独占している。浮気現場を見つかったジョンと、ケイトの今後の成り行きに人々の関心が集まっているからだ。元々、双子と六つ子という大家族の日常をとらえるという趣旨で始まった番組だが、今では視聴者の興味は子供にはなく、人種の異なる夫婦間の確執をめぐるドラマに関心が集中している。


実は、「クリーン・ハウス」もかなりそういう要素が強い。つまり、番組のそもそもの製作趣旨である部屋の整理整頓クリーンアップ、その経過、クリーンアップのハウ・トゥ、事後の出演者の反応等ではなく、そこにいたるまでの自分の持ち物を捨てる決心のつかない出演者の心の葛藤、そして夫婦間、家族間のドラマが、視聴者の関心を誘い、番組を盛り上げるのだ。


番組ホストは黒人のコメディアンとしても活躍しているニーシー・ナッシュで、「レノ911 (Reno 911)」を見たことがある者なら、胸とケツに詰め物をして、出るところを強調したナッシュを知っている者も多かろう。そんなに多いわけではないが黒人にはそういう体格をしている者も実際にいるため、私は最初、これが彼女の本当の体型だとばかり思っていた。


そしたら昨年、数話放送されただけでキャンセルされたFOXのシットコム「ドゥ・ナット・ディスターブ (Do Not Disturb)」にナッシュが出ているではないか。それも胸もケツも引っ込んだかなり普通の体型に近くなっている。なんだあのケツは詰め物で誇張していたのか。それでも、体型的には思ったほど強烈ではなくても、「クリーン・ハウス」でのナッシュは必ず頭に大輪の花が一輪差されてたりと、派手目好きという黒人のファッション・センスは現れている。あのプリンス (歌手) みたいな我の強そうな個性的な顔がかすれた声で大仰なリアクションを見せると、印象はかなり強い。


「クリーン・ハウス」は、今ではスタイルを代表する番組に成長し、スピンオフ番組の、かつてお邪魔した部屋を再訪して現状にチェックを入れたり、手をかけた家をランキング付けしたりする「クリーン・ハウス・カムズ・クリーン (Clean House Comes Clean)」を生み、そしてさらに、毎年その中から最もひどかった家をフィーチャーする特番も生まれてきた。それが「クリーン・ハウス: ザ・サーチ・フォー・ザ・メッシイスト・ホーム・イン・ザ・カントリー」だ。


この特集は今回で第3回目を迎える。要するに「クリーン・ハウス」の中でも飛びぬけて散らかっている家をフィーチャーするわけだから、家の中は本当に足の踏み場もないくらい物が散乱している。その最初の回に登場したセント・ルイスのハーウィグ家は、妻が子供が欲しかったのに身体を壊して一人しか産めなかったたぶん代償で、サルを飼うようになる。今ではそのサルに関したぬいぐるみ、置物みやげ物で家の中はいっぱいで、さらに夫と息子もどちらかというと物を捨てきれない体質のようで、家の中はものの見事にゴミ溜めと化した。


番組第2回に登場したハワイイのジョーンズ家は、おばあちゃんが倒れたために、娘とその3人の子が何年か前に越してきて同居するようになって以来、家の中が片付かなくなった。こちらはおばあちゃんが中国系、娘が白人の養子で、このおばあちゃんが強く、娘は常に疎外されていると感じている。おばあちゃんは早く娘に出て行ってくれといい、娘はあんな人間にはなりたくないと言う。娘の旦那がいないところを見ると、どうやら別れたようだ。ハーウィグ家にもジョーンズ家にも、既に成長した、しかも無職にしか見えない男が (ジョーンズ家には二人も) いる。


要するに、やはり、ゴミ溜めと化す家には必ず何か問題がある。ホーディングは明らかに精神的な疾患なのだ。なんらかの代償、転嫁によって家の中がゴミ溜め化している。このゴミを片すことは、とりもなおさずヒーリングの一環、あるいはカウンセリングをしているのとほとんど同じ働きをする。部屋の中だけでなく、心の中に巣食っていたゴミや虫も同時に掃除して綺麗にするのだ。家が綺麗になる前と後では、明らかに家族の顔が違う。「クリーン・ハウス」は侮れない。








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クリーン・ハウス: ザ・サーチ・フォー・ザ・メッシイスト・ホーム・イン・ザ・カントリー3   ★★1/2

 
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