放送局: CBS

プレミア放送日: 1/16/2000 (Sun) 20:30-21:30

製作: スティーヴン・ボチコ・プロダクションズ/Steven Bochco Productions

製作総指揮: スティーヴン・ボチコ

クリエイター: スティーヴン・ボチコ、ニコラス・ウートン、パリス・バークレイ

製作: デイナ・カリンス

監督: パリス・バークレイ、他

脚本: スティーヴン・ボチコ、他

撮影: チャールズ・ミルス

編集: ジェイン・カス

音楽: マイク・ポスト

出演: ブレア・アンダーウッド (ベン・ターナー)、ヴィヴィカ・A・フォックス (リリアン・プライス)、マイケル・ウォレン (ロン・ハリス)、ロバート・モース (エドウィン・オマーリー)、フィル・バックマン (ジョフリー・ワイス)、ヒル・ハーパー (ウェスリー・ウィリアムス)


物語: エンジェルス・オブ・マーシー (慈悲の天使)はL.A.の中流から低層階級--つまり黒人やラテン系--を専門に診ている総合病院である。しかし近年数々のスキャンダル等のおかげで経営状態が悪化しており、事態を改善するため、新しい経営幹部として女医のリリアン・プライスを招聘する。外来で早速態度の悪い受付けを目の当たりにしたリリアンは、苦しんでいるのに医者に診てもらえない老婆を診療させようと病院内に連れていくが、そこで会った医者は、かつてリリアンの婚約者であったが、挙式の寸前に煮え切らない態度に愛想を尽かしたリリアンが婚約を解消したベン・ターナーだった。しかも即刻手術が必要な老婆は、家で待つ二人の孫がいるため、入院を拒否してリリアンを慌てさせ、しかもせっかく手術に同意させたものの、今度は病院内に執刀する医者がいない。一方、ターナーは同姓同名の患者がもう一人いたために混乱が生じて消えてしまった、手術予定の患者を探していた。何とか患者を探し当てて無事手術を終了させたまではいいが、今度は彼の知らないうちにリリアンが連れてきた老婆が功を焦る病院で唯一の白人インターンの手によって執刀を始められていた‥‥


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「NYPDブルー」、「ヒル・ストリート・ブルース」、「天才少年ドギー・ハウザー」等で一時期ヒット・シリーズを連発し、TV界最大のヒットメイカーとして知られたスティーヴン・ボチコが贈る最新ドラマ・シリーズ。ただし、そのボチコも一時のような神通力は今はない。近年放送された「マーダー・ワン (Murder One)」、「ブルックリン・サウス (Brooklyn South)」は、いずれも批評家からは誉められたが、視聴者を集めることができず早々とキャンセルされている。特に「マーダー・ワン」はシーズンを通して一つの事件を描くという斬新な発想が話題になったが、これも多くの視聴者を集めるには至らなかった。「シティ・オブ・エンジェルス」は、最近のスランプから脱出するためにも、ボチコが何としてでもヒットさせたい番組である。


大都会L.Aで低中流階級の金のない、つまりは黒人やラテン、アジア系を専門に診ている大病院エンジェルス・オブ・マーシーが「シティ・オブ・エンジェルス」の舞台であり、そこで昼夜もなく働く、やはりほとんどが黒人の医師や看護婦が主人公である。とはいっても100%医療ドラマではなく、病院を事業として成功させるために様々な画策を巡らす経営陣の駆け引きや謀略というようなパワー・ゲームの要素も持っており、別の視点からも楽しめる構成となっている。


しかし、それでもなぜ今さら医療ドラマという疑問は残る。「E.R.」と「シカゴホープ」という2大長寿医療ドラマがあるのに、わざわざまた医療ドラマを製作するのは理解し難い。しかも「シカゴホープ」は同じCBSの放送である。これでは共食いするようなものではないのか。そう思っていたら、実はこの番組はボチコが10年以上も前に「L.A.ロー」を製作していた時から暖めていた企画なのだそうだ。主演のブレア・アンダーウッドは「L.A.ロー」で一躍スターの仲間入りをしたが、その時から二人の間ではこの番組の話があり、もし実現したらアンダーウッド主演でということになっていたらしい。10年後にようやくその話が実現したわけだ。


ところがこの番組、そういった由来とはまったく別の次元で注目を浴びることになってしまった。というのも、現在、アメリカのTVではビル・コスビー主演の「コスビー・ショウ」やブランディ主演の「モエシャ (Moesha)」といったごく少数のシットコムを除き、黒人が主人公の番組はない。黒人が主人公のドラマになると、ほとんどないという状況である。「E.R」のベントン医師や、HBOの刑務所ドラマ「Oz」のような、複数が主人公のドラマでようやく黒人も顔を出すが、せいぜいそれが限界である(唯一の例外が、黒人とアジア人が主人公のCBSのアクション・ドラマ「マーシャル・ロウ (Marshal Law)」である)。


現在アメリカの人口で黒人が占める割合がどれくらいかは詳しくは知らないが、それでも全人口の4分の1は下らないだろう。ニューヨークやL.A.のような都会ではもっと多いのは間違いない。因みに私の行った大学は市営の大学でしかもハーレムにあったということもあり、黒人とラテン/アジア系等のマイノリティの占める割合は80%以上あった(今考えてみると、それはそれで一般的なアメリカというのからは程遠かったな。)


とにかく、こういう情勢に業を煮やした黒人の市民団体NAACP (National Association for the Advancement of Colored People: 全米黒人地位向上協会)は、昨年秋頃からもっと黒人を主人公としたドラマを増やすように、そうでなければ実力行使も辞さない、という強硬な態度でネットワークに迫った。「シティ・オブ・エンジェルス」はそういった状況に天啓の如くいきなり現れた番組だったのである。


そいうわけで番組の中身とはまったく異なった次元で注目を集めたのは、番組のためにはよかったのか悪かったのか。格好のパブリシティとなったのは願ってもなかったが、プレッシャーもかかったのも事実だ。もしこの番組が成功しなかったら、また当分しばらくは黒人が主人公のドラマなんて製作されないだろう。だって、あのボチコですら成しえなかったのだから。というわけで、今アメリカのマスコミはこの番組に注目している。現時点では視聴率の点から見て一応は健闘しているという程度だが、これからどうなるか興味津々というところである。


番組で実質上の主人公である二人、リリアンとベンに扮するのは、ヴィヴィカ・A・フォックスとブレア・アンダーウッド。フォックスは96年の超大作「インデペンデンス・デイ」で主演のウィル・スミスのガール・フレンドとして記憶されている他、「バットマン&ロビン (97)」、「Why Do Fools Fall In Love (98)」等のヒット作に出演している。アンダーウッドはボチコの「L.A.ロー」で認められた後、「ガタカ (97)」、「ディープ・インパクト (98)」等に出演している。


病院の経営者ロン・ハリスに扮するマイケル・ウォレンも、ボチコの「ヒル・ストリート・ブルース」で認められた。50年に及ぶ長い芸歴を誇り、アメリカ人に親しまれているロバート・モースは監査役のエド・オマーリーに扮している。他、黒人のインターンのウェスリー・ウィリアムスに扮するヒル・ハーパーは「ゲット・オン・ザ・バス (96)」、「ラストゲーム (98)」のスパイク・リー作品に連続して出演している。唯一の白人 (ユダヤ人) のインターン、ワイスに扮するフィル・バックマンは、一時期「ビバリーヒルズ青春白書」に準レギュラーで出演していたこともある。


さて、こういった背景にばかり注目が行ったせいで見逃されがちなのが、番組自体の出来である。私としては、残念ながら「E.R.」を超えるには至っていないというのが正直な印象である。あのテンポの速いドラマティックな演出に伍すのは至難の技だと見た。一方、「シカゴホープ」のような人間ドラマであるとも言い難い。それととても気にかかったのが、番組のライティングである。


一般的に、暗い色を撮影する時は、多めに光を当てるか、その分絞りを開ける。でないとよく映らないからだ。一般的な指標として、黒人の顔のクロース・アップをする時は白人より約3分の1絞り分絞りを開けるか、あるいはその分光を多く当てる。黒人アイス・スケーターのスリヤ・ボナリーがまばゆいリンクの上で滑ると、まわりが明るいために逆にダーク・スキンのボナリーの顔はつぶれてしまい、表情がまるでわからなくなってしまう。これは極端な例だが、要するにそういうことをなくすために、黒人の顔にはもっと光を当てようというわけだ。


この番組は登場人物のほとんどが黒人ということもあり、ほとんどのシーンで絞りを心持ち開け気味で撮っている。登場人物の表情だけ見てる分にはいいのだが、背景がほとんど明るすぎてとんでしまっている印象を受ける。何か、病院内のシーンはずっと目を細めて番組を見てたような気がするのだ。それに全身を入れるショットだと、床に影が3つくらいできる。いかにも人工的なライティングでカメラのこちら側にいる人を意識してしまい、話に身が入らない。ボチコの最新作ということで楽しみにしていたのだが、残念ながら私はあまり感心しなかった。話の筋自体は他の番組に較べて特によくないということはないんだけどねえ。どうしてもこちらはボチコの他の出来のいい作品と比較して見てしまうから点が辛くなる。まあ、「NYPDブルー」のような番組がそうそうできるわけがないということは重々わかってはいるんだけどさ。ボチコの次回作に期待します。



追記(2000年12月):

低視聴率ながらもなんとかここまで頑張ってきたボチコの「シティ・オブ・エンジェルス」だったが、このほど、やはりと言うかなんと言うか、キャンセルが発表になった。あの視聴率を見るといつキャンセルになってもおかしくなかったから、しょうがないだろう。






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シティ・オブ・エンジェルス   ★★1/2

 
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