Childrens Hospital   チルドレンズ・ホスピタル 

放送局: カートゥーン・ネットワーク (アダルト・スウィム) 

プレミア提供日: 12/8/2008 (wb.com) 

プレミア放送日: 7/11/2010 (カートゥーン) 

第5シーズンプレミア放送日: 7/26/2013 (Fri) 0:00-0:15 

製作: ザ・コードリー・カンパニー、ワーナー・ブラザーズTV 

製作総指揮: ロブ・コードリー、ジョナサン・スターン 

出演: ロブ・コードリー (ブレイク・ダウンズ)、レイク・ベル (キャット・ブラック)、ケン・マリノ (グレン・リッチー)、ロブ・フーベル (オーウェン・マエストロ)、メーガン・ムラリー (チーフ)、エリン・ヘイズ (ローラ・スプラット)、マリン・エイカーマン (ヴァレリー・フレイム)、ヘンリー・ウィンクラー (サイ・ミトルマン)、ザンディ・ハーティグ (ドリ) 

  

物語: チルドレンズ・ホスピタルに白アリが発生し、病院は駆除のためにしばらく病院を閉めることを余儀なくされる。その間病院スタッフは休みということにはなら ず、日本の軍基地勤務を言い渡される。一方、暴漢に撃たれて死んだブレイクはクローンだったことが判明する。地下の奥深くで再度クローンのブレイクを世に送り出そうとするのだが、なぜだか新ブレイクは必ずどこかに欠陥があり、作り出すブレイクはすべて自滅してしまう‥‥


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Childrens Hospital


チルドレンズ・ホスピタル   ★★1/2

こないだ、深夜に「アダルト・スウィム (Adult Swim)」という大人向けのコメディ枠を持っているカートゥーン・ネットワーク、終末深夜に編成されているFOXのアニメーション「アックス・コップ(Axe Cop)」のことを書いたが、深夜というのは洋の東西、ジャンルを問わず、実験的な、トンがった番組が編成されやすい。 

  

コメディ・セントラルの「チルドレンズ・ホスピタル」も、その「アダルト・スウィム」に編成されている番組の一つだ。元々は今はなきネットワークのWBが製作していたウェブ・オリジナル・シリーズで、人気に目をつけたカートゥーン・ネットワークでシリーズ化された。E!の「バーニング・ラヴ (Burning Love)」もそうだったが、今後こういう例はさらに増えるだろう。因みに「バーニング・ラヴ」主演のケン・マリノは、「チルドレンズ・ホスピタル」にも出ている。 

  

カートゥーン版「チルドレンズ・ホスピタル」は、今季で第5シーズンを迎える。既にヴェテラン番組と言ってもよく、煮詰まりかけた番組に喝を入れて心機一転するため、先シーズンの最後には番組主人公の、常にピエロの格好をしている小児科医ブレイクが、暴漢に撃たれて不慮の死を遂げた。いくらピエロがサーカスやマクドナルドで人気者であろうとも、病院の医者がピエロの格好をしていたらヤバいだけという気もする。しかし子供好きのブレイクは、子供はピエロが好きと思い込んでおり、この格好を変えるつもりはない。そのブレイクが死んだ。 

  

そして新シーズンからはメンツを一新して新しい展開になるかと思えばそんなことはない。実はブレイクはクローンで、替え玉はいくらでもあるのだった。思い切って主人公を殺してみたが、やはりこれでは番組が続かないと思ったか、ま、製作側の都合というものがあったのだろう。というかブレイクを演じているロブ・コードリーは番組プロデューサーでもある。すべては彼の胸先三寸だ。深夜放送のなんでもありの15分枠だ。いざとなれば生き返らせばいいし、クローンという手もあると最初から考えていたのは間違いあるまい。 

  

とはいえ主人公を殺してしまったのだ、彼がクローンとして生き返るにしても死んだままでも、新シーズンでは心機一転をアピールする、新しいそれ相応の舞台装置は必要だ。というわけで選ばれた舞台が、日本だ。実は番組の元々の舞台はブラジルなのだが、だからといって番組に南米色があるかというとまったくそんなことはなく、誰がどこから見ても撮影しているのはLAだ。しかし要するに、舞台はブラジルということになっている。 

  

第5シーズンは、病院に白アリが発生したために閉鎖して駆除の必要があり、病院スタッフが大阪の米軍施設内の病院に一時的に全員転勤になるというシチュエイション で始まる。大阪に米軍基地があったとは知らなかった。とはいえもちろん実際に日本ロケを敢行するはずもなく、これまたLAでの撮影を日本と言っているだけだ。そのフォート・ローゼンソール陸軍駐屯地では恒例の自衛隊相手の日米相撲大会が行われているが、米軍チームはどうしても地元の日本チームに勝てない。そこで新入りの病院スタッフをリクルートして即席チームを編成、勝負に挑む。 

  

一方死んだはずのブレイクだが、実は地下施設に何体ものブレイクのクローンが用意されていた。しかしいざクローンに命を吹き込もうとすると、その度にクローン・ブレイクは予定外の行動を起こして自滅してしまう。すったもんだの挙げ句やっとのことで一体だけ生き返らせることに成功したブレイクは、大阪に送られる。 

  

ブレイクが駐屯地に現れた時、米側は相撲大会でまたもや敗戦濃厚だったのだが、ピエロ姿のブレイクを見て、日本チームは我先に逃げ出してしまう。いわくブレイクが歌舞伎の悪の化身であるワクダというキャラクターにそっくりだったからで、怖れをなして逃げたのだ。米軍チームの不戦勝だ。それにしてもワクダってなんだ? 

 

シーズン第2回では、今度は日本を舞台にする場合には、これまたなくてはならないヤクザが絡む。ナースのドリはブレイクとの間に生まれたウィリー (なぜだかブレイク同様ピエロのメイクをしている) を生れて初めてスープ・ヌードル (ラーメンのことか?) を食べさせに大阪の町に連れて行く。挿入されるショットは馴染みのグリコの看板のある道頓堀だが、ラーメン屋の内装はどう見てもいい加減にチャイナ・タウンを模したセットだ。そこのトイレでウィリーは殺人事件を目撃、やくざに付け狙われるという、要するに「刑事ジョン・ブック 目撃者 (Witness)」のパクリだ。 

 

ヤクザの親分の名はカイジューといい、「パシフィック・リム (Pacific Rim)」といい「チルドレンズ・ホスピタル」といい、どうやらカイジューという名詞はアメリカに定着したようだ。そのカイジュー、ヤクザの親分のくせに、電話を取るともしもしと言う。この「もしもし」という単語は、アメリカ人を含め諸外国人にはかなり印象的に響くようで、彼らの前で日本人同士で電話する機会があってもしもしと言うと、十中八九真似される。「モシモシ、モシモシ、ハイ、ハイ、ハイ、ハイ」と必ずやられる。番組でもどうしてもヤクザにそう言わせたかったようだ。もちろん本物のヤクザの親分は、もしもしとはやらんだろう。アップルの新しいiPhone 5sのコマーシャルでも、メイド服の女の子がモシモシとやっている。 

 

こないだ、たまたまTVで「ベスト・キッド2 (The Karate Kid Part II)」 を見たのだが、実はこの作品、舞台は沖縄ということになっているが、見ると植生も建物もまったく沖縄ではなく、ハワイで沖縄を代用している。というか、沖縄は日本の中でも文化としては独特ということをまったく理解していないから、日本でも沖縄でもないさらに奇妙なものになっていた。寺や住居や衣服や生活習慣等まったく似て非なるもので、元々ハワイにあったもので代用しているというよりも、完全なカン違いによってゼロからイメージとしての日本を作り上げていた。それはそれで感心する。一方で実は最も驚いたのは、当時いかにも日本の80年代アイドル的な可愛さのヒロインを演じるタムリン・トミタだったりする。アラン・パーカーの「愛と哀しみの旅路 (Come See the Paradise)」で初めて見た時には既に大人だったから、こんなにアイドル顔していたとは知らなかった。 

 

閑話休題。最近の「ウルヴァリン (The Wolverine)」 では、これまた捏造された日本もありはしたが、ちゃんと東京長崎ロケを敢行したおかげで今の日本もとらえられていた。ハリウッド的カン違いで国や街を捏造するのはそれはそれで面白くないこともないが、どっちかっつーと、私はやはり実際にその場所に行ってオーセンティックな風景を写し混んでもらう方が好みだ。 

 

一方でコメディとして日本を捏造することに関しては、まったく反対しない。というか、そうしないとギャグとしては話が始まらない。NBCの「サタデイ・ナイト・ライヴ (Saturday Night Live)」でも、日本のコスプレ、メイド、オタク趣味をパロったスキットがあるが、なかなか笑える。「チルドレンズ・ホスピタル」も、遠慮せず思い切り差別ギャグをかましてもらいたい。 










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