Chase (Cha$e) チェイス

放送局: Sci-Fi

プレミア放送日: 11/11/2008 (Tue) 22:00-23:00

製作: ABCメディア・プロダクションズ、リーランド・プロダクションズ、フジサンケイ・コミュニケーションズ・インターナショナル

製作総指揮: リック・テリス、アキフミ・タクマ

共同製作総指揮: アリソン・チェイス

監督: ハンス・フォン・リート

ホスト: トレイ・ファーリー


内容: 10人の参加者を様々な場所に集め、刺客の手を逃れて無事ミッションを達成するまでを競う勝ち抜きリアリティ・ショウ。


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山のようにあるアメリカのケーブル・チャンネルには、TNT、USAのような大手の総合エンタテインメント・チャンネルだけでなく、とあるジャンルに特化したニッチ・チャンネルも多い。ニューズ、スポーツ、映画専門チャンネルはその代表と言えるだろうが、さらに女性番組専門チャンネルのライフタイム、子供向け番組のニコロデオン、アニメーション専門 (とは必ずしも言えないが) のカートゥーン・ネットワーク等の、いかにもニッチと言えるチャンネルがそれなりの人気があったりする。

 

SF番組専門のSci-Fi (サイファイ) もその一角を担うと言っていいチャンネルだ。ニッチ・チャンネルらしく、SFに興味のない人間にはまるでアピールしないだろうと思えるが、好きな人間はとことん好きといった類いのチャンネルだ。「宇宙空母 (バトルスター) ギャラクティカ (Battlestar Galactica)」、「スターゲイト・アトランティス (Stargate Atlantice)」あたりになると、人気番組だから見たことはなくても誰でも番組名くらいは知っているだろう。

 

私は特にSFに強いわけではないが、それでも「バトルスター・ギャラクティカ」くらいなら知っているし、放送が始まった当初は、女性パイロット役のグレイス・パークが気に入ってわりと見ていた。番組を見ていた者ならわかるだろうが、パーク演じるシャロンは番組の中で最も意外なツイストを提供して話題になったので、洋の東西を問わず彼女のファンは結構多いんじゃないかと思う。とりたてて美人というわけではないが印象に残る顔立ちをしており、最近アメリカでもとみに目にする機会の増えてきた韓国系女優の中でも、私としては「ロスト」のユンジン・キムよりもパークの方を買っていたりする。こないだA&Eの新ドラマ「ザ・クリーナー (The Cleaner)」を見ていたら、パークが謎の美女的な役柄でレギュラーで出ていたから、「ギャラクティカ」以降も順調に仕事できているようだ。

 

ところでパークという名はパク (朴) さんのことで、要するに韓国では非常に多い名だ。朴をParkとして外人でも発音しやすい上に親しみやすい名前にしている者はアメリカには多い。その上、なぜだかグレイスという下の名も韓国系の子女には多い。LPGAゴルフのグレイス・パークとは同姓同名で、USオープンを制したセ・リ・パクも実は同じ朴さんだ。

 

話が逸れた。そのSci-Fi、SFドラマや、恒例となった感のある土曜夜のチープなTV映画ばかりが編成の主体というわけではない。同様に力を入れているのがSF色を絡めたリアリティ・ショウで、私の場合は最近はSci-Fiで何か見るとなると、TV映画でもない限り途中から見ても話がよくわからないということがないので、もっぱらこちらの方が視聴の主体だったりする。ほとんどクラシックの域に達するSF版どっきりカメラの「スケア・タクティクス (Scare Tactics)」、幽霊屋敷にお邪魔する「ゴースト・ハンターズ (Ghost Hunters)」、世界中の超常現象を追う「デスティネーション・トゥルース (Destination Truth)」等がその代表的な番組であり、そして今回新しく投入するリアリティ・ショウが、この「チェイス」だ。

 

「チェイス」は要するに、シューティング・ゲームをTV化したものと言えばわかりやすいかもしれない。あるいは大人版追いかけっこ、あるいはかくれんぼか。10人の参加者はランナーズと呼ばれ、ハンターズと呼ばれる追っ手から逃れながら、制限時間内にどこそこへ無事到達しなければならない。ランナーズはそれぞれ携帯を手渡され、ランナーズ同士で連絡をとり合ったりホストから逐次ゲームやルールの展開を指示されたりする。

 

ハンターズは黒スーツに黒眼鏡という出で立ちで、要するに「マトリックス」の黒スーツを思い出してもらえればいい。ハンターズは何人もいるが、最初2、3人、それがゲームが進行するに連れ一人二人と徐々に追加され、だんだん人数が増えて行く。ランナーズがハンターズに見つかって追いかけられ、追いつかれてタッチされた時点でそのランナーはアウトでゲーム終了となる。もちろんハンターズの追撃を振り切って最後まで逃げ切り、その回のミッションを達成した者の勝ちだ。

 

面白いのは、ランナーズはハンターズから身を守るためにいくつかの武器、もしくは防御機構を用意されている点だ。これらは現実の武器というわけではなく、単にお約束だ。そのうちの一つデフレクターを用いると、ハンターはデフレクト (屈折) され、ランナーを一定時間追えなくなる。フリーズ光線はハンターを1分間フリーズさせ、透明人間グラスをかけるとハンターにはランナーが見えなくなる。ソニック・スタナーを使えば何人ものハンターズをいっぺんにフリーズさせることができるなど、これらを利用してランナーズは執拗なハンターズの追撃から逃れなければならない。

 

笑っちゃうのはこれらの武器はすべてお約束で、実際に光線銃といっても光線が発射されたりとかするわけではなく、透明グラスをかけたからといって本当に見えなくなるわけではまったくないことだ。それをハンターズはお約束に従って、それらの武器が使用されたとたん、いかにも目の前のランナーズが消えたり見えなくなったりしたのと同様のリアクションをとる。子供の頃、追いかけっこやかくれんぼをした時、ローカル・ルールで今オレは鬼には見えないことになってるんだとか、これこれの武器を使ったから鬼はいいって言うまで動いちゃダメだなんてのを決めて遊んだりしたが、結局「チェイス」でやっているのもそれだ。

 

それを大の大人がマジでやって、走って来る黒スーツの男女たちに向かって見えない光線中を発射してデフレクトしたりフリーズさせたり、いきなり眼鏡をかけてオレ私は彼らに見えないんだとほっとしたりするのを見るのは、そこはかとなしにおかしい。最もおかしいのは、武器の使用は一回限りで、それらを全部駆使して逃げ回った挙げ句、結局やはり最後にはハンターに追い詰められ、しまった、武器は全部使っちまった後だったと追い詰められたランナーが焦ることで、思わず、いったい現実に何の武器があったんだと茶々を入れたくなる。武器を使う時に変な効果音を使うのも、見ている方が恥ずかしくなる。あんたらいい歳した大人なんだろ。

 

プレミア・エピソードでチェイスが行われる場所として選ばれたのはLAのどこぞの人気のない桟橋/港で、その後番組は植物園、テーマ・パークや映画スタジオ、倉庫街といったところで収録される。因みに第1回で優勝したビルが獲得した賞金は約25,000ドルだった。途中で3,000ドルあげるから降りる人はいないかという賄賂作戦もあったりして、これなんかはNBCの「ディール・オア・ノー・ディール (Deal or No Deal)」みたいだ。

 

要するに「チェイス」の印象は、いい大人が見えないものに本気でリアクションしてちょっと恥ずかしいかなというものだが、しかし本当のところを言うと、私も実はやってみたいというものだったりする。しかし番組に応募して参加して一番最初にアウトになったりしたらやっぱり本当に恥ずかしいかもと、結構本気で考えたりしているのだった。

 

実は「チェイス」は、流行りの日本のリアリティ・ショウのリメイクだ。正直言うと、最近この手の日本のリアリティ・ショウのリメイクが多いので、この番組に関しては完全にとりこぼしていた。事前にほとんど何の前知識もなしに見始め、番組がフジの「Run for Money 逃走中」のリメイクということを知ったのは、既にプレミア・エピソードを見た後だった。こういう内容だったら日本で製作してキッチュな味付けを施した方がよほど面白くなりそうだなと思っていたところ、オリジナルがメイド・イン・ジャパンだったことを知った。

 

現在、アメリカの主要番組はほとんどインターネット経由でコンピュータ上で見ることができる。むろん「チェイス」だってSci-FiのHPにアクセスすると、フル・エピソード視聴可能だ。それで「逃走中」もなんとか見れないかと思ってフジのHPにアクセスしてみたんだが、ストリーミングの提供どころか画像すらないお寒い番組HPだった。不定期特番として始まった手前、特にHP製作には力を入れてなかったものと見える。しかし世界中に番組フォーマットを輸出するくらいの番組なら海外からもアクセスしようとする潜在的視聴者はかなりいるんじゃないかと思うし、そのくらいサーヴィスでストリーミングしてくれても別にバチは当たらないと思うが。日本の番組視聴はいつもYouTubeで海賊版ばかりってのはもう飽きた。








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Chase


チェイス   ★★

 
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