Cash Cab Chicago   キャッシュ・キャブ・シカゴ

放送局: ディスカバリー

プレミア放送日: 2/14/2011 (Mon) 18:30-19:00

製作: ライオンTV

製作総指揮: トム・コーエン

ホスト: ベス・メレウスキ


内容: キャブに乗って目的に着くまでの間にクイズのやり取りをする「キャッシュ・キャブ」のシカゴ版。


Jeopardy   ジェパディ

放送局: ABC

プレミア放送日: 3/1/1964

IBMチャレンジ放送日: 2/14/2011 (Mon)-2/16/2011 (Wed) 19:00-19:30

製作: マーヴ・グリフィン・エンタテインメント、ジェパディ・プロダクションズ

製作総指揮: マーヴ・グリフィン、ハリー・フリードマン

ホスト: アレックス・トレベック

出演: ワトソン (コンピュータ)、ケン・ジェニングス、ブラッド・ラター


内容: クラシックのゲーム・ショウ「ジェパディ」において、過去の記録保持者とスーパーコンピュータ「ワトソン (Watson)」が対決するIBMチャレンジ編。


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ドキュメンタリー/リアリティ・ショウ専門のディスカバリー・チャンネルは、「ベーリング海の一攫千金 (Deadliest Catch)」や「アメリカン・チョッパー (American Chopper)」、「ザ・コロニー (The Colony)」などの人気番組を持つ。最近ではごたぶんに漏れず、流行りのお宝発掘系の「オークション・キングス (Auction Kings)」みたいな番組もある。他にも危険な仕事や動物に遭遇する非常事態遭遇系や、サヴァイヴァル系の番組にも力を入れている。とはいえ近年、最も注目を浴びたのはそれらの番組群ではなく、昨年の人質籠城事件の方だったりしたが。


いずれにしても、実は私がディスカバリーでよく見ているのはそれらの話題番組ではなく、実はゲーム・ショウの「キャッシュ・キャブ」だったりする。


「キャッシュ・キャブ」は2005年から始まっているクイズ・ショウで、ニューヨーク、マンハッタンでヴァン・タイプのイエロー・キャブを停めると、それはクイズを出題するキャブだったというものだ。客は目的地に着くまでドライヴァー兼ホストのベン・ベイリーから、連続でトリヴィアのクイズを出題される。最初は正答すると50ドル獲得し、出題が進むに連れ、だんだん獲得賞金が上がっていく。目的地に着くまで正答し続ければ、それまで獲得した賞金を全額もらえる。これまで見た限りでは、最大で1,000ドルくらい獲得した者もいた。しかしそれまでに3問間違えると、その場で降ろされ、キャブは去っていく。


もちろんその時に乗り込んだ客全員に対して出題されるから、客は一人の時もあるし、最大定員の6人いる場合もある。多ければ多いほど正解は得やすくなるだろう。もし間違えずに目的にたどり着いた場合、これまで獲得した賞金を倍額にして最後のクイズに挑戦させたりする。


他愛もないごくシンプルなクイズ・ショウだが、これが結構癖になる。客は目的地に行くまでクイズを出され続けるわけだから、目的地までの距離が長ければ長いほど出題数も多くなる。掛け金は上がっていくが、問題の難度も上がっていくので、間違えて降ろされる確率も高くなる。運が悪いと、降ろされた場所はほとんど次のキャブが拾えない所だったりする。諦めて歩いて行ったり、近くのサブウェイ・ステーションを探して歩き去ったりする。


客がキャブに乗り込んだ時に、どこから乗ってどこまで行くという地図が表示され、途中のマンハッタンの街の眺め等も随時挿入されるため、私の場合、その移動も空想しながら見る楽しみもある。見覚えのある道や街並みが現れると、ここからならあと何分くらいで目的地だ、うまく行けばあと3問くらい答えられるはず、なんて考えながら、感情移入して見てしまうのだが、そういってもこのクイズ、実は簡単ではない。


トリヴィアだからどんな問題が出るかはわからないが、見ている限りではアメリカ史や時事問題からの出題が多い。アメリカ人にとっては常識の範囲内かもしれないが、ネイティヴでないと知らなそうな問題も多々ある。時々、アメリカ人は歴代大統領の名と任期を全員覚えているのかと思ったりもする。レヴェルで言うと、「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア? (Who Wants to Be a Millionaire?)」の、1万ドルくらいのレヴェルの難しさ、といった感じだろうか。


私は現在、ニューヨークではなくて川向こうのニュージャージーに住んでいるのだが、一度クルマを運転して家に帰る時に、途中のホボケンという街でキャッシュ・キャブらしきクルマに遭遇したことがある。クルマの内部の天井が碁盤目状にきらきら点滅するという派手なことをしていたからまず間違いないと思う。わざわざマンハッタンからトンネルをくぐってここまで来たのかと思ったが、目撃したところが、現在TLCの一番人気番組である「ケーキ・ボス (Cake Boss)」の舞台であるカーロス・ベイカリー (Carlo’s Bakery) のすぐそばだったので、そこが目的地だったのだろうと思う。このくらいまでならマンハッタンからキャブで行こうと思っても不思議はないし、TLCとディスカバリーは姉妹チャンネルだ。両番組の宣伝にもなる。


このように「キャッシュ・キャブ」は、特に評判になっているという話は聞かないが、それでもキャンセルされずにまだ続いているところを見ると、そこそこの人気はあるんだろうなと思っていた。そしたら昨年、日中のソープ・オペラ等が対象だからまず普段は注意を払うことのないデイタイム・エミー賞をチェックしていて、この「キャッシュ・キャブ」が3年連続でゲーム・ショウ部門を受賞していたことを発見して驚いた。なんだ、既にもう評価されていたのか。


話は変わるがニューヨークのイエロー・キャブが舞台というと、実はもう一つ、こちらはクイズ番組ではないが、HBOの「タクシーキャブ・コンフェッションズ (Taxicab Confessions)」という番組もある。こちらは、深夜キャブに乗り込んできたいわくあり気の乗客を隠し撮りするドキュメンタリー・シリーズで、ヤバかったり卑猥だったり感動したりと、ニューヨークって本当に色々な人間がいるんだなということを実感できる番組だ。


しかしイエロー・キャブというと、正直言ってだいたい運転が荒く、自分が乗客の時でもない限り、あんまり近寄りたくないクルマだ。多少の接触くらい全然気にしないという感じで平気で人のクルマの鼻先に割り込んでくる奴らばかりで、特にその密度が高いチャイナタウン近辺では、イエロー・キャブとだけは並びたくはない。


一度、それほど混んでいたわけでもない天下の5番街で、イエロー・キャブと事故ったこともある。右端に停まっていたキャブを追い越して右折しようとしたら、そのキャブが発進してきて私の車の右側にぶつかった。一瞬、完全に死角に入った位置から出てきたので、よけきれなかった。そしたら黒人のこの運ちゃん、おまえのせいだとわめき立てて毒づく。


しかし降りて検分してみると、こちらの横っ面に向こうの鼻先が当たっている。私が無理に右折しようとしたというよりも、向こうが周りを確認せずに発車したためにぶつかったのがありありだ。大きくボディがへこんだというのでもないが、私が念のためにこんな時のために車載してある使い捨てカメラで写真を撮ろうとすると、向こうも状況は有利ではないと気づいたのだろう、この運ちゃん、打って変わったようにオー・ブラザー、お互い大したこともなくてよかったね、なんて態度を豹変させて、仕舞いには握手を求めて去っていった。ニューヨークでは本当に新車はもったいなくて買えないなと思う。


脱線したが、この「キャッシュ・キャブ」のスピンオフが、「キャッシュ・キャブ・シカゴ」だ。今度はニューヨークではなくシカゴで、同様に乗客に対してクイズを出題する。ドライヴァー兼出題者はベス・メレウスキで、土地勘のない私が見ると、ニューヨーク版ほど熱中できなかった。こういうのって、やはり感情移入できる設定かどうかというのは、重要なんだなと思う。


さて、実はアメリカのクイズ界において、「キャッシュ・キャブ・シカゴ」が始まったその日、もう一つ重要な出来事があった。それがシンジケーションにおける長寿クイズ・ショウ「ジェパディ」での、人間対コンピュータ対決だ。


1964年より続いている「ジェパディ」は、同様に抱き合わせで放送されている長寿クイズ・ショウ「ホイール・オブ・フォーチュン (Wheel of Fortune)」と並んで、アメリカでは知らぬ者のないクラシックのクイズ・ショウだ。日本でも「クイズ・グランプリ」という番組名で、フジTVがリメイク版を放送していた。 たーらーらーらー、らーらーらーらー、たーらーらーらー、たったたらたらというかなり脱力のテーマ音楽は、アメリカでは知らぬ者はないと断言できる国民的テーマ・ソングだ。NBCの「ロウ&オーダー (Law & Order)」と並び、アメリカ2大脱力テーマである。


コンピュータが人間に勝負を挑むという図式ですぐに思い浮かぶのは、1990年代にチェスのチャンピオンにIBM製コンピュータが挑戦した一連の勝負で、これは大筋痛み分けという形で終わっている。今回、再度IBMのコンピュータ、ワトソンが挑むのは、「ジェパディ」で連勝記録を持つケン・ジェニングス、および最多獲得賞金記録を持つブラッド・ラターの二人だ。しかし、ボタン早押しクイズの「ジェパディ」において、どうやれば単に直方体でしかないワトソンがボタンを押せるのかという疑問も湧くが、まあそれは置いておこう。


さてこのIBMチャレンジ、3日連続で行われた。初日はほぼワトソンの性能説明に終始し、基本的に勝負は翌日から。2日目、ワトソン5,000ドル、ラター5,000ドル、ジェニングス2,000ドルの持ち金から始まり、ワトソンが躍進、ワトソン35,734ドル、ラター10,400ドル、ジェニングス4,800ドルと、大きく差をつける。


当然だがワトソンにも知らない事実は山のようにある。面白いのは、そうするとワトソン、自分が掛け金を設定できる最後の設問に対し、いやに細かい数字を掛け金として出してくることで、30,000ドルも稼いでいながら、自信がない問題だと、947ドル、なんて金額を賭けてくる。どういう理由だからそういう半端な金額を賭けてくるのかよくわからず、思わずスタジオ内の観客から失笑が漏れたりする。ワトソンって天然だったのだ。


最終3日目は獲得賞金をリセットして全員ゼロからのスタート。最初ワトソンがリード、ジェニングスが追いついて巻き返すも再度ワトソンにリードを許し、そのままワトソンが逃げ切った。最終獲得賞金はワトソン77,147ドル、ジェニングス24,000ドル、ラター21,600ドルだった。もうコンピュータの頭脳は人間に近いところまで来ているようだ。因みに最後の問題は、「ウィリアム・ウィルキンソンの「An Account of the Principalities of Wallachia and Moldavia」がこの著者の最も有名な著作を触発した」というもので、答えはブラム・ストーカー (とは誰?)、因みにその著作とは「ドラキュラ」の由。3人とも正解。私はもちろんまったく知らなかった。








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Cash Cab Chicago

キャッシュ・キャブ・シカゴ   ★★1/2

Jeopardy  

ジェパディ   ★★1/2

 
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