キャビン・トラッカーズ   Cabin Truckers

放送局: FYI

プレミア放送日: 8/8/2015 (Sat) 22:00-22:30-23:00

製作: ブルー・アント・メディア、レメディ・プロダクションズ

製作総指揮: トビー・ドーマー、ローラ・ガルシア


内容: 家そのものを引越しさせる。


_______________________________________________________________

Cabin Truckers


キャビン・トラッカーズ  ★★1/2

私たち夫婦はTVでは家ものに目がなく、家屋リノヴェイション関係で新番組があったりすると、二人して率先して見ている。たまに特にとりたてて見たい番組がなかった場合、その手の家もの関係番組が揃っているHGTV (Home and Garden Television) やDIY (Do It Yourself) にチャンネルを合わせて、ながら視聴する時が結構ある。だいたいどの番組も一話完結で、続きを気にする必要もない。


近年では、特に家もの専門というわけではないFYI (For Your Info) チャンネルなんかも、「タイニー・ハウス・ネイション (Tiny House Nation)」等の家もの番組を放送している。「キャビン・トラッカーズ」も、そのFYI番組だ。


とはいっても「キャビン・トラッカーズ」は、端的に言うと家もの番組というのとはちょっと違う。リノヴェイション、内装外装、裏庭やプールに手を入れるわけではまったくないからだ。そうではなく、引っ越し、それも単なる引っ越しではなく、家そのものの引っ越しをする機会に焦点を当てた番組が、「キャビン・トラッカーズ」だ。


通常、家というものは動くものではない。しかし鉄筋コンクリート作りの一軒家でなければ、基礎から浮かせて移動させることが可能だ。「劇的ビフォーアフター」で、そうやって家をいったん移動させて大掛かりな基礎改修を行っていたのを見たことがある。確か弘前城だったかの改修工事も、本丸を浮かせて移動させていた。要するに基礎から切り離すことができれば、その上の建築物は動かせる。


アメリカ中西部やカナダ内陸部は、ただただだだっ広い平坦な土地が、見渡す限り続いていたりする。周囲には遮るものは何もない。そういうところでは、実際に家自体の引っ越しが可能だ。家を基礎から切り離してトレイラーの上に載せ、トラックで牽引する。


また、引っ越しというとこちらからどっかに越していくというイメージがあるが、逆の場合もある。出物の安い家が見つかったので、それを買って今住んでいる場所に持ってくるという場合だ。だいたいどの世帯も土地自体は余るほどあったりするので、今の家に住みながら、庭に基礎を作って新しい家を持ってくるということが可能だ。日本ではこういう発想はまずないだろう。


実際問題として、この方法でどのくらいメリットがあるかというと、例えばプレミア・エピソードで運ぶ家は約1,700スクエア・フィート、だいたい160スクエア・メートルだ。卑近な話だが、私のアパートの3倍近い。重さにして58トン、コービール家はこの家を29万ドルで買い、2万3千ドルで移動させる。あの辺なら29万ドル出すなら新築で建たないかと思わなくもないが、確かに広いことは広い。


いずれにしてもめちゃくちゃ金の節約になるということではない。私の個人的な意見では、何十年も住んでガタが来始めていたりする家を移動させるくらいなら、少しくらい予算がかかっても新しい土地に新しい家を建てた方が気分的にもいいんじゃないかと思うが、その金額の差を出せなかったり、家が建つまで待っている時間がないとか、あるいは住み慣れた家に思い入れがあるとか、絶対この家じゃなければという気に入った家を見つけたりすると、もし家ごと引っ越せるというオプションがあるなら、それを選ぶこともあるということのようだ。


とはいえ、いくら家の引っ越しが可能とはいっても、そこには限界もある。まず、長距離は無理だ。一軒家を一般道を使って移動させるのだ。内陸部の道路は片側一車線が普通だから、家が対抗車線を走ってきたら、まずすれ違うのは不可能。そのため、移動の時は事前に当局に連絡して、一時的に交通を規制しなければならない。


交通規制だけではない。電力や電信電話会社も呼ぶ。何をするのかというと、途中でどうしても下を潜り抜けなければならない送電線や電話線に、家の屋根が引っかかってしまうのだ。それで会社の者がその時、長い物差し竿のようなのを使って電線を上に押し上げて、邪魔にならないようにする。


あるいは、橋の上を渡る場合、家の一部が欄干に引っかかりそうになったりする。道路標識が邪魔になるというのは日常茶飯事で、強引に標識をへし曲げたりしている。トラックのタイヤが路肩に落ちそうになったりすることもある。荷台が傾いてもし家が滑り落ちたらと、考えるだけでぞっとする。


もちろんスピードは出せない。見てる感じだと時速20kmからせいぜい30kmだ。日が暮れたから今日はここまで後は明日というのは、ないこともないようだが、あまり現実的ではない。多くの人が関係しているのだ。第一、どこに休める場所があるというのだ。というわけで、いったん動き始めると、その日のうちに目的地に達するにこしたことはない。夏場、日照時間が12時間あるとして、だいたい移動できる距離は一日最大300kmといったところだろう。


とにかく部外者の視点から見るとスリリングで面白いのは確かなんだが、当事者としては冷や冷やもんで、はっきり言って自分ならこんなことやりたかないなと思う。だいたい、移動によって家自体に本来なら予想していない負荷、振動がかかるのは間違いなく、見えないところにガタが来る可能性は高い。家本来の寿命は、縮まりこそすれ長くはならないだろう。よくも悪くも土地のあるところの発想だなと思うのだった。










< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system