バーニング・ラヴ   Burning Love 

放送局: E! 

プレミア放送日: 2/25/2013 (Mon) 22:00-22:30 

製作: アボミナブル・ピクチャーズ、レッド・アワー・フィルムズ 

製作総指揮: ベン・スティラー 

出演: ケン・マリノ (マーク・オーランド)、マイケル・イアン・ブラック (ホスト)、クリスティン・ベル (マンディ)、アビゲイル・スペンサー (アニー)、ジェニファー・アニストン (デイナ)、ディアナ・ルッソ (タマラ・G)、ケン・ジョング (バレリーナ) 

 

物語: 消防士のマークに16人の恋人候補が立候補してくる。しかし彼女らは一癖も二癖もある人物ばかりだった‥‥


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Burning Love


バーニング・ラヴ   ★★1/2

現代アメリカTV界7不思議の一つ‥‥と言うほど大袈裟なものではないが、少なくとも私が個人的にまるで理解できないものの一つに、ABCの恋人獲得勝ち抜きリアリティ・ショウの「ザ・バチェラー (The Bachelor)」、および「ザ・バチェロレッテ (The Bachelorette)」人気がある。 

 

要するに、ある人物の恋人に立候補した者たちによる勝ち抜きリアリティで、私に言わせてもらえれば、本当に他愛のない、子供騙しのクズ番組の一つでしかな い。ごく普通の常識を持ってさえいれば、こんな番組、そもそもの番組の土台からして間違っていると誰でもすぐ気づくと思う。 

 

10人かそこらの妙齢の女性 (男性) の前に、シングルの異性が現れる。もしかしたら多少は美形で金も持っているかもしれない。しかし、一目見て、その場の人間全員がその人物の恋人になりたいという可能性が、果たしてどれだけあるか。 

 

そりゃあ、誰からも好かれる人間というのはいるだろうが、しかし、10人人がいて、本気で10人ともある特定の人間の恋人に同時になりたいと思うか。その時点までは、見たことも聞いたこともない相手にだ。断言するが、可能性は0%だ。万に一つもないと断言できる。 

 

それなのに、そういうお膳立てで事が運んでいく「バチェラー」が、なぜそこそこ人気があって、シーズンを重ねているかが、私にはまったく理解できない。そのバチェラー、バチェロレッテとして選ばれた人間だって、その時点まではまったく無名の一般人に過ぎないのだ。 

 

もちろん参加者は最初からそれらを理解した上で、ゲーム・ショウと割り切って番組に参加しているかもしれない。参加者の本当の狙いは恋人獲得ではなく、番組に出て有名人となり、芸能界で自分のキャリアを築くための第一歩と考えているかもしれない。しかしそうすると、だからこそ参加者が本気でない番組自体に見る価値はなくなってしまう。 

 

それに、こんな擬似恋愛リアリティを見るくらいなら、実生活で恋人を探す方が何倍もエキサイティングであるのは、私が保証する。それとも、そんなに異性からもてないのか。あるいは、自分の今の恋人、配偶者にそんなに満足できないのか。それとも現実の恋愛関係には、怖くて足を踏み出せないのか。 

 

「バチェラー」、「バチェロレッテ」に較べれば、同様にくだらない勝ち抜きコンペティション・リアリティの一つであるABCの「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ (Dancing with the Stars)」がまだましなのは、少なくとも参加者は下手なりに本気で、あちこちに青タン作りながら精一杯努力しているからだ。それでも、これですらダンスとして見るとまったく見れたものではない。参加者が特になんらかの芸をするわけでもない「バチェラー」に至ってはなおさらだ。 

 

こないだ、その「バチェラー」ファンの一人の話を聞く機会があったのだが、その女性は毎回番組を録画ではなく、ちゃんと放送時に見ているそうだ。あんなくだらない番組を、早送りすることもできず、毎回コマーシャル入りで全部見ている。その方が臨場感があるのだそうだ。正直言って、どこかアタマのネジがゆるんでいるんじゃないかと思った。こんな番組見るより、自分の人生を見つめ直す方が先決だ。 

 

そういや、「バチェラー」も「スターズ」も、どっちもABC番組だ。最近ABCは、朝のニューズ/トークの「グッド・モーニング・アメリカ (Good Morning America)」もどんどんヴァラエティ化して、なんか首を傾げざるを得ない。その癖して日中はネットワークで唯一4時から7時まで3時間にわたってニューズを編成しているし、いったいABCが何考えているか、さっぱりわからん。 

 

さて、長々と「バチェラー」をくさしてきたが、むろんそういう風に思っているのは私だけではない。バカみたいと思っているのは業界にだって大勢いる。その筆頭であるベン・スティラーが製作した「バチェラー」のパロディが、「バーニング・ラヴ」だ。 

 

とはいえ「バーニング・ラヴ」は、本当にはTV番組ではない。昨夏、Yahooで提供されたウェブ・シリーズだ。だいたい7分くらいを1本として定期的に提供されていた。そこそこ話題になり、現在では既に第3シーズンが始まっている。今回のTV番組としての「バーニング・ラヴ」は、それを1回30分番組に編集し直して、エンタテインメント専門のE!が放送するものだ。 

 

プレミア・エピソードのオープニングは、前シーズンのおさらいとして、前バチェラーのジョーと、彼が選んだ女性のシンフォニーが登場する。むろん前シーズンなんかなく、単にジョー役のスティラーの特別出演だ。ホスト役は、数年前にCBSの深夜トークの「レイト・レイト・ショウ (Late Late Show)」のホストの座を最後までクレイグ・ファーガソンと争って負けたマイケル・イアン・ブラック。最終的につかんだのが「バチェラー」のパロディのホストというのは、ちょっと痛いような気がする。 

 

バチェラー役のマークは消防士で、そのことはともかく、その恋人に立候補する女性たちのキャラクターがすごい。現在ホームレスもいれば妊娠中の女性もいる。色情狂でいつも下半身を露出している者もいれば、84歳の女性もいる。盲目の女性もいれば極端に信心深い者もいる。性倒錯者もいるしなぜだかいつもパンダの縫いぐるみを着ている者もいる。ある女性はラリッているのか、マンションに到着した途端、盛大に吐きまくってセキュリティにリモに押し込まれてそのまま退場になった。 

 

あっと言わされるはそのキャスティングで、狂信的と言えるほど信心深いキリスト教徒のマンディを演じているのは、クリスティン・ベルだ。性倒錯のバレリーナを演じているのは、現在アメリカにおいてアジア系コメディアンとして最も知られているケン・ジョングで、彼 (女) は第1回途中で、参加者の投票によって番組で最初に追放されるという役回り。 

 

そして始終パンダの縫いぐるみを着ているために顔が見えず、当然番組第1回で追放され、リモの中で縫いぐるみをとって素顔を見せた女性デイナは、ジェニファー・アニストンだ。マークは何も知らずにアニストンを第1回で追放してしまった。正直言うと、友情出演のジョングとアニストンはたぶん義理で特別出演しただけだろうから、なんとか第1回で追放せざるを得ず、ああいう展開になったのだろうと思う。ベルも第2回でいなくなった。 

 

番組第2シーズンは、今度は第1シーズンで優勝できなかったジュリー役のジューン・ダイアン・ラファエルをバチェロレッテ役として展開する。恋人候補の男性陣の中には、ジェリー・オコネル、アダム・スコット、アダム・ブロディ、マイケル・セラ、コリン・ハンクスという、これまたそこそこの名前を揃えており、本当にギャラを払ったら、総製作費よりギャラの方が高くなるだろう。そして現在進行中の第3シーズンは、第1シーズンと第2シーズンから寄せ集めたキャラクターを用いて、「バチェラー」というよりもCBSの「サバイバー (Survivor)」みたいな展開になっているそうだ。 

 

そこそこ笑わせ、あっと言わせてもくれる「バーニング・ラヴ」であるが、もしできるなら、実際に「バチェラー」、「バチェロレッテ」に出た参加者を使ってパロディを作れるなら、それこそ究極のパロディができるだろうと思う。しかし、そうすると自分たちがやってきたことがただのクソだったことを自分で証明してしまうことになるので、さすがに元出演者に「バーニング・ラヴ」の出演オファーを出しても、うんとは言わないだろうなあ。 










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