放送局: TNT

プレミア放送日: 8/15/2000 (Tue) 22:00-23:00

製作: ヌーチ・カンパニー、ワーナー・ブラザースTV

製作総指揮: マイケル・チャーナチン、ケン・ホートン、エリック・ラノーヴィル

製作: ダグ・パラウ

監督: スティーヴン・サージク

脚本: マイケル・チャーナチン

撮影: ローン・シュミット

編集: ロン・スパング

音楽: マーク・スノウ

美術: トーマス・フィクター

出演: ジョージ・ニューバーン(ロバート・(ディトー)・ロバーツ3世)、マリク・ヨバ(コーリー・グランヴィル)、イアン・カーン(マーティ・デッカー)、クリストファー・ヴィール(カーソン・ボイド)、アリシア・コッポラ(マリッサ・ルフォ)、エリザベス・ローム(アリソン・ジェファース)、スタンリー・トゥッチ(ハンター・ラスキー)、ドナルド・モフェット・(ロバート・(ザ・カイザー)・ロバーツ)


物語: ウォール街に本拠を置く証券会社メリウェザー・マックスで働くディトーことロバート・ロバーツ3世は、会社設立者であり祖父でもある、カイザーと呼ばれるロバート・ロバーツに帝王学を叩き込まれて育った。20代の身で既にそのビジネス哲学とノウ・ハウは同僚から一目置かれており、将来は社を背負って立つことに疑いを挟む者はなかった。


しかしディトーは本心では祖父の庇護を離れて自分の実力を試してみたいと思っており、カイザーの目の届かないところで新しい会社を設立するための人材を社内から集めていた。有能な黒人のコーリー、M&Aの専門家マーティ、謎めいた美女のアリソンを口説いたディトーは、叩き上げで実力をつけたマリッサも誘うが、彼女はうんと言わない。新入社員のカーソンも、たまたま仕事をさぼって昼寝していた工事中の空き室で、ディトーらの計画に気づき、自分もなんとか仲間に入れてもらえないかどうか思案する。


しかしゆっくりながら着実に準備を進めていたディトーの独立案が、ある日業界紙にすっぱ抜かれる。怒ったカイザーは自分の孫を相手に業務背信で訴訟を起こすことを通達し、ディトーらは準備を完璧なものにする余裕もなく、いきなり翌日から街角の安アパートで業務を開始せざるを得なくなる。実は業界紙にその情報を流したのはアリソンの秘密の恋人でもある、ウォール街をサメのように泳ぎ回って金のあるところに出没するネゴシエイターのハンターだった。アリソンはハンターが裏切ったことを確信しているが、ディトーたちはアリソンがハンターと繋がっていることは知らず、その上ハンターを仲間に加えようとしていた‥‥


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質の高いオリジナル映画製作で知られるTNTが放送する、初の1時間ドラマ・シリーズ。え、TNTってこれまでドラマって製作していなかったっけ? と思って調べたら、本当にこれが初めてのドラマ・シリーズ。これまで何度となくオリジナル映画を見てきたから、当然オリジナル・シリーズも製作していたものと思い込んでいた。オリジナル映画製作ではTNTとよく比較されるペイTVのHBOが、昨年来「ソプラノス」、「Sex and the City」とヒット作を立て続けに連発しているのを見て、自分たちもドラマ・シリーズを製作しないとやばいと思ったものらしい。


そのTNTの初のドラマ・シリーズとして選ばれたのが、この「ブル ウォール街への挑戦」だ。エリート証券マンたちの愛と野望、挫折、裏切りを描くドラマ‥‥と書くと、何やらアーロン・スペリングやダレン・スターの製作するプライムタイム・ソープかと勘繰りたくもなるが、製作総指揮のマイケル・チャーナチンはNBCの硬派の社会派ドラマ「ロウ&オーダー (Law & Order)」出身で、本人はこの番組は「ER」や「NYPDブルー」の系譜に連なるもの、と説明している。


実はダレン・スターが製作するウォール街を舞台とするプライムタイム・ソープというのは、今秋、FOXが編成するのが決定していて、タイトルを「ストリート (The Street)」という。硬派ウォール街ドラマの「ブル」と、軟派ウォール街ドラマの「ストリート」、硬軟2本のウォール街ドラマが競う今秋のアメリカのTV界は、このちょっとしたウォール街対決が話題になっている。題材から言えば硬軟どちらでも処理次第で面白くなれるだろうから、どちらがより視聴者を獲得するか、予測は難しい。本心を言えば、プライムタイム・ソープなんて見飽きた、もう要らないと私は思っているのだが、そこはそれ、どうなるかは結構興味ある。


因みに番組タイトルの「ブル」は、業界用語の「ブル (牡牛)・マーケット」から来ている。強気の市場という意味だそうで、逆に弱気の市場のことを「ベア (熊)・マーケット」というのだそうだ。ブルが強気市場というのは何となく想像つくけど、ベアが弱気を意味するのは合点が行かない。なぜ? と思っていたら、熊は戦う時に上から下へと向かうことから来ているのだそうだ。へえ、そうですか。私にはほとんど関係のない世界だからどうでもいいけど (それでもちょっぴりは投資はしてます)。


主人公のディトーを演じるのはジョージ・ニューバーン。「花嫁のパパ」シリーズで知られている。因みにディトーというニックネームは、「〃」という記号の呼び名である。つまり本名がロバート・ロバーツ3世と上下ほとんど同じ名が2度続き、また、祖父と同じ名でもあることから、繰り返しを意味するこの記号がニックネームになったわけだ。黒人ながらハーバードを出た切れ者コーリーに扮するのは、マリク・ヨバ。以前FOXが放送していた「ニューヨーク・アンダーカヴァー (New York Undercover)」に出演していた。チャーナチンの「ロウ&オーダー」にもゲスト出演したところ、痛く気に入られての抜擢となっている。


M&Aのスペシャリスト、マーティには、「ガラスの動物園」等舞台出演の多いイアン・カーン。新会社に忠誠を誓っているように見えながら、実は裏で別の動きをしているアリソンに、WBの「エンジェル」で知名度を得たエリザベス・ローム、最初は話を断るが、会社に裏切られて後に仲間に加わるメリッサにソープ「アナザー・ワールド (Another World)」出身のアリシア・コッポラが扮している。珍しい名前からしてフランシス・コッポラ一族であるのは確かだと思うんだが、裏はとれなかった。本人がコッポラの親族ということでコネで役をとったと思われるのを嫌っているのかも知れない。「ゴッド・ファーザー Part 3」の時のソフィア・コッポラの叩かれ方って凄かったからなあ。メリウェザー・マックスを首になった後、ディトーのチームに加わるカーソンに扮するのは、「ER」にゲスト出演していたクリストファー・ヴィール。ここでは学校を出たてのケツの青い新人という役どころだが、「ER」が始まった頃のノア・ワイリを彷彿とさせる顔立ちで、さもありなんという配役である。


準レギュラーのアリソンの恋人ハンターに扮するのは、スタンリー・トゥッチ。「リストランテの夜」のウェイター兼共同経営者という朴訥な役が最も本人自身に近い印象を受けるが、こういうハイエナのような役も悪くない。和食通としても知られており、「料理の鉄人」の和の鉄人、森本正治がニューヨークで開いている「ノブ」の常連で、できるものなら毎日「ノブ」で食事がしたいが、でも財布の中身が続かないとどこかのインタヴューで答えていた。ディトーの祖父、ロバート・ロバーツことカイザーに扮するのが、米映画/TV界の重鎮ドナルド・モファット。あまりにも色んなところで目にするので、どこで何の役をやったかこんぐらがって覚えていないくらい。カイザーの息子、つまりディトーの父は、心が優しく、この仕事に向いてなかったためアル中でキャリアを失敗したということになっているが、そのロバート・ロバーツ2世としてライアン・オニールが今後出演することも発表になっている。


さて、実際の「ブル」の中身であるが、いかにも忙しいという感じのノリのいい音楽、眠る暇もない仕事の様をとんとんと描くオープニングは、結構期待させてくれる。とりわけ私が感心したのが、ディトーを演じる主人公のジョージ・ニューバーン。「花嫁のパパ」なんて見てるわけないから、多分これがニューバーンを目にした初めての機会だと思うが、血も涙もない証券会社の御曹司らしい冷血さと、自分で自分の道を切り拓いていきたい血気にはやる若者という二つの側面を両方ともうまくブレンドして持っており、こういう立場に置かれた若者がいたら、多分本当にこんな顔しているんじゃないかと思わせてくれる。


しかし硬派ドラマのはずの「ブル」に、実はソープっぽい設定が随所に見られるのが、私は結構気になった。その極め付けが、アリソンの隠れた交際を初めて明らかにするシーン。夜、アリソンが自宅のアパートで男とベッドを共にしている。男の顔は見えない。これはディトーかマーティか、それとも新キャラ? と思っていたら、窓際に佇むアリソンを後ろから抱き抱えたのはネゴシエイターのハンターで、私は見ていて、うわあ、なーにこのソープソープした設定といいカメラ・ワークといい、こんなのスペリングやスターの製作した番組で数え切れないくらい見ていると思った。これは硬派ドラマじゃなかったわけ? ソープにするなら蛇の道はヘビで、スターの製作する「ストリート」に「ブル」が勝てるとは到底思えない。その上ネットワークのFOXと、ベイシック・チャンネル最大手とはいえたかだか1ケーブル・チャンネルに過ぎないTNTとでは、元々絶対的視聴者数が違うのだ。同じ土俵で勝負しては勝ち目はない。早く軌道を修正しないと、「ストリート」が始まって対決する前に視聴者から飽きられてキャンセルされちゃうよ。



追記(2000年12月):

上記で言及されているスターがFOXで製作した「ストリート」であるが、放送開始後一と月で、低視聴率を理由にキャンセルされた。私はまだ録画してあったプレミアすら見てなかったが、これで嫌々ながらも見なければならない理由がなくなって一安心である。ほっ。






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Bull

ブル ウォール街への挑戦   ★★1/2

 
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