PGAツアー公式戦7連勝のかかったタイガー・ウッズを追い、マスコミが加熱する中、ビュイック招待は始まった。コースの外ではクールさを崩さないウッズだが、しかし、なんてったって先週到底信じられない奇跡的な勝ち方をした直後でもあり、マスコミの報道は過熱気味。ウッズも結構参っているのだろう、初日、2日目、共に精彩がない。まあ、後半追い上げるのが彼の醍醐味だとはいえ、それでも疲れているのは間違いないようだ。2日目なんて、バック9のバーディ・ラッシュがなかったら予選通過も危なかったのだ。ディフェンディング・チャンプっぽいところなんてまったくない。しかもパットが決まらない。結局は最後はこのパッティングが勝負の行方を決することになる。


一方、首位を走るフィル・ミッケルソンの出来はいい。実は2週間前のフェニックス・オープンで、トップに立ちながら最終日ずるずると崩れていったのを見ているので、3日目終了時点でウッズに5打差(また!)をつけて首位に立ってはいても、ウッズの最終日の出来次第ではまたもしかしたら、という期待は捨てきれない。なんというか、だからウッズって凄いんだと思う。どんなに調子が悪くても、この男ならやってくれるかもと思わせるところが彼にはあるのだ。だからこそスーパースターなんだろう。


それに今回は意外というか、丸山茂樹がミッケルソンの後ろにぴたりとつけている。彼は昔マスターズや全米プロで最初首位に絡んだ実績があり、こちらではPGAツアーで最初に優勝するかも知れない日本人の筆頭と目されているだけあって、ギャラリーもよく知っている。なんてったって一昨年のプレジデント・カップは5戦全勝だったしな。楽しみな展開である。しかもウッズの周りにはデイヴィス・ラヴ3世、フレッド・カップルズといったメイジャーの覇者が隙あらばと虎視眈々と状況を窺っている。カップルスなんて、おれたちが皆して力を合わせればウッズ打倒も夢じゃないと冗談を飛ばしていたが、あれは半分以上はマジだと見た。ウッズ頑張れ、丸山も粘れ、ミッケルソンも盛り立ててくれよ、と一人で盛り上がるのだった。


そして最終日、またまたペブル・ビーチよろしく、フロント9でバーディ・ラッシュのミッケルソンが、6番を終わった時点でウッズに7打差!をつける。これまた先週とまったく同じ展開ではないか。しかしミッケルソンはルーキーのゴーゲルとは器が違うからな。いくらなんでも簡単には崩れまい、いや、でも、2週間前の例もあるし、もしかしたら‥‥と、私の思いは千々に乱れる。と思っていたら、7番ホール、ミッケルソンがダブル・ボギー、一方ウッズはパットに苦しみながらも着実にスコアを伸ばして4打差。丸山も我慢のしどころで二人に絡む。何とミッケルソンは11番パー3でもラフに入れたボールを出し切れずにまたまたダブル・ボギー!ウッズは12番でバーディをとり、あっという間に二人の差はたったの一つ!そして最終日のクライマックスはミッケルソンの1つ前のパーティにいるウッズが13番パー5でバーディを奪った時にやってくる。この瞬間、ミッケルソンがまだ13番を終えてないとはいえ、二人は15アンダーで同率トップに立つ!これぞ我々が求めていた展開!凄いぞタイガー!!!!


‥‥と思っていたら流石のウッズもこれが限界だった。やはり、いくらなんでもパットの調子が悪すぎたよ。せっかくミッケルソンに並んでも、その後14、16番と、バーディ・ラッシュどころかボギーが続いて2つスコアを落とす。このあたり、パットだけでなくスイングの調子もよくないのがありありで、片手フィニッシュやったり、ほとんどティ・ショットがフェアウェイをキープしない。一方のミッケルソンは、ここから建て直す。13番で彼もバーディをとった後は、残り5ホールを3バーディ1ボギーで周り、ウッズが18番ティに立った時、既に勝負は決していた。13番以降は典型的なアンチ・クライマックスだったなあ。


でもウッズはよくやった。一時は世界中の誰もが絶対破れないと確信していたバイロン・ネルソンの11連勝という途轍もない記録に、もしかしたらという思いを抱かせただけでも大したものだ。もちろんそれに待ったをかけたミッケルソンも称賛に値する。彼はウッズの連勝記録を止めたゴルファーとして、長く人々の記憶に残るだろう。丸山もよくやった。終わってみればウッズと同じ同率2位だからな。丸山ここに在りを充分世界にアピールした。


ところで、トーナメントが明けて翌日、ケーブル局のESPNが主催する、昨年活躍したアスリートを表彰するエスピィ (ESPY) 賞の発表があった。ゴルフ界からは昨年ライダー・カップで最後にヨーロッパの息の根を止めたジャスティン・レナードと共にもちろんタイガー・ウッズの姿もあったのだが(録画でペイン・スチュワートが映し出されたのがまた哀しみを新たにしていた)、いやあウッズの蝶ネクタイって似合わない!慣れないもの着て全然動きがぎこちないし、彼って、帽子を取るとやっぱり若いんだな、まだまだ小僧じゃないかと思ってしまった。いえ、だから別にそれがどうこういうわけじゃあないんですけれども。


ついでにこの日、2週間後に迫ったワールド・マッチ・プレイの組み合わせも発表になった。ランキング1位のウッズは、ランキング65位のニュージーランドのマイケル・キャンベルと対戦する。彼は台湾でのジョニー・ウォーカー・クラシックで、この半年で昨日を含め3敗しかしていないウッズに、その数少ない敗戦を味わわせた一人なのだ。しかも彼は最近絶好調で、ヨーロッパPGAで過去4戦3勝と、ウッズ並みの勝率を誇る。たとえ相手がウッズでも負ける気がしないだろう。しかも、ワールド・ランキングで64位までしか出場資格を得ることができないワールド・マッチ・プレイで65位のキャンベルが出場できるのは、36位にいるジャンボ尾崎が出場を辞退したからである。そんなこんなで1回戦で最も楽しみな勝負を演出してしまうところに、ウッズが世界で最も注目されるスーパースターであり、勝負師である所以がある。そういう星の下に生まれついているんだろうなあ。たとえ本人が好むと好むまいと。







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ビュイック招待

2000年2月10-13日   ★★★

カリフォルニア州ラ・ホヤ、トリー・パインズ・ゴルフ・コース

 
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