ブロックマイヤ   Brockmire 

放送局: IFC 

プレミア放送日: 4/5/2017 (Wed) 22:00-22:30 

製作: ファニー・オア・ダイ、ハウ・ツー・ピクチャーズ 

製作総指揮: ハンク・アゼリア、ティム・カークビー、ジョエル・チャーチ-クーパー 

出演: ハンク・アゼリア (ジム・ブロックマイヤ)、アマンダ・ピート (ジュールズ・ジェイムズ)、タイラー・ジャクソン・ウィリアムズ (チャールズ)、ポール・レイ (デイル) 

 

物語: ジム・ブロックマイヤはメイジャー・リーグ・ベイスボールのアナウンサーだったが、妻の浮気を目撃し、ショックで酒を飲みながらゲームを実況して中継中に壊れてしまい、解雇されていた。10年後、フィラデルフィアの弱小マイナー・リーグ球団モリスタウン・フラッカーズのオーナー、ジュールズ・ジェイムズが、球団のアナウンサーとして契約したいとブロックマイヤにコンタクトしてくる。現場に足を運んだブロックマイヤは、あまりの町の寂れ具合、球団のいい加減さに愕然とするが‥‥


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Brockmire


ブロックマイヤ  ★★1/2

「ブロックマイヤ」は、元々はウィル・フェレルらが主宰するコメディ集団ファニー・オア・ダイ (Funny or Die) のウェブ・シリーズから誕生した番組だ。ファニー・オア・ダイといえば、私の場合、最も記憶に残っているのは3年前のIFCの「ザ・スポイルズ・オブ・バビロン (The Spoils of Babylon)」だ。他にも現在ファニー・オア・ダイが製作しているTV番組というと、フューズ/トゥルーTVの「ビリー・オン・ザ・ストリート (Billy on the Street)」やコメディ・セントラルの「ドランク・ヒストリー (Drunk History)」等がある。 

 

「ブロックマイヤ」の主人公ジム・ブロックマイヤは、2010年、「ゲームチェンジャーズ (Gamechangers)」という作品に登場した。ブロックマイヤを演じたハンク・アゼリアは、尾羽打ち枯らしたMLBの元実況アナウンサーというこのキャラクターが大層気に入ったと見えて、映画化もしくはTVシリーズ化を考えていたらしい。 

 

ブロックマイヤは、ある時自分の妻の浮気現場に遭遇する。しかもSM仕立てで、妻が見たこともない男と考えたこともないプレイをしていたことを目撃したブロックマイヤは、ショックを受け、酒を飲みながら仕事し、実況中に妻の浮気現場の様子まで放送禁止用語を交えながら詳しく再現、そのままメルトダウンして人格崩壊し、業界から去る。 

 

その後10年間、どうやら東南アジアでアルコールとドラッグとセックスに溺れていたところを、マイナー・リーグ球団のオーナー、ジュールズ・ジェイムズから声がかかる。ペンシルヴァニアのモリスタウン・フラッカーズはマイナー球団もいいとこで、チームはほとんど素人に毛が生えたくらいのレヴェルでしかない。しかしベイスボールを愛するジュールズは、ブロックマイヤもやはりベイスボールなしでは生きられないだろうと、声をかけたのだ。 

 

舞台となるペンシルヴァニア州モリスタウンとは架空の地名だが、私は最初モリスタウンと聞いて、ニュージャージー州のモリスタウンかと思った。「ニューヨーク・シティ・ドローン・フィルム・フェスティヴァル2016 (New York City Drone Film Festival 2016)」において、巨大精神病院施設グレイストーンのあったモリスタウンだ。なるほど、ここかと思ったのだ。しかしペンシルヴァニアには、ノリスタウンとかモリスヴィルとかいう町はあっても、モリスタウンはない。 

 

また、チーム名がフラッカーズというのも人を食っている。フラッカー (Fracker) はフxxカー (Fxxker) というのと韻を踏んでいるし、近年公害の元として各地で禁止が相次いでいるフラッキングというガス資源採掘法にも通じる。実際、寂れたラスト・ベルト地帯にしか見えないモリスタウンの産業は、せいぜい炭坑や砕石事業、

後は実際にフラッキングくらいしかないように見える。仕事がそれしかないから手を出し、それで結局自分で自分の首を絞める。衰退していく地方を絵に描いたようなところだ。 

 

当然チームも万全とは言い難い。どう見てもメタボが並ぶと思えば、今度は瘦せぎすもいるし背も低かったり、マイナー・リーグというよりも高校野球にも勝てそうもない。実況中継アナウンサーを読んで盛り上げるより先に、他にやることがあるんじゃないかという感じだ。当然ブロックマイヤもそう思う。しかし生まれ育った町とベイスボールを愛する女性オーナーのジュールズは、そんな意見には耳を貸さない。 

 

ジュールズはどうやってチームを経営しているかというと、どうやら誰も来ない球場のチケット代やTV放送権などではなく、大半はジュールズが経営するバー・レストランの利益から経費が出ているようだ。逆に言えば、バーの利益だけで運営されているチームに見どころがあるわけがない。ほとんどプロというよりは素人の手すさびに近い。それでもジュールズはやる気だけは満々なのだった。 

 

主人公ブロックマイヤを演じるアゼリアは、何はともあれFOXのアニメーション「ザ・シンプソンズ (The Simpsons)」の吹き替えで知られている。アメリカでのプライムタイムにおける最長寿番組記録を日々更新する「シンプソンズ」は、今秋放送開始28年目を迎える。28年前も今も主人公が歳をとらないのは、アニメーションだからできることだ。おかげでアゼリアも吹き替えるキャラクターの数が増え、一人で30以上のキャラクターの声を吹き替えている。 

 

共演でアマンダ・ピートが出ているのを見て、HBOで共同主演していた「トゥゲザネス (Togetherness)」はキャンセルされてしまったのだなと知った。「トゥゲザネス」は超面白いというわけではないが、そこそこ話題になっていたし、視聴率に左右されないペイTVのオリジナル番組は評価が高ければ続いていったりするので、まだあと数シーズンは続くものだとばかり思っていた。さて、「ブロックマイヤ」は、「メジャーリーグ (Major League)」になれるか? 











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