全英オープンは毎年意外なことが起こりやすいが、今年はそれに輪がかかっていた。「ジ・オープン」特有の風やラフに加え、カナースティは距離が長く、その上フェアウェイが異常に狭い。落下地点がたったの数ヤードの違いで天国と地獄を見ることもある。左のラフに落ちたボールが右のラフで止まったり、同じラフでもあるところは膝から下が見えないほど密集しているのに、あるところはほとんどフェアウェイと変わらないなんてことは、運のあるなしと言うより、はっきりとアンフェアである。特にデイヴィッド・デュヴォールはそのことを公言していたが、私もまったく同感である。全米オープンでは、「誰にとっても難しい」ため、最後に勝つゴルファーは本当にうまいゴルファーだと納得できた。今回は勝つのは一世一代のゴルフをしたゴルファーではなくて、一生に一度のつきに恵まれたゴルファーという感じで、見ていてあまり面白くなかった。


話は変わるが、それでも3日目のラウンドを見ようとVCRをセットして映画を観に行き(時間の節約のため、ゴルフ中継は録画しておいて後で飛ばしながら見ることにしている。因みに全英オープンはアメリカでは朝の10時から3時まで放送)、帰ってからVCRをチェックしてみて驚いた。3日目のラウンドの代わりに、前日自家用機でニュージャージーから発ったジョン・F・ケネディJr.が消息を絶ったというニュースが延々と録画されていたからだ。朝10時から午後3時まですべてそのニュースなのである。しかもその後TVを点けてみて驚いたが、まだやっていた。本当に一日中そのニュースだけで持ちきりだったのだ。


JFKJr.がそんなに大物か? たかだか前大統領の息子というだけではないか。それは事故に遭った人には気の毒だとは思うが、自分の操縦する飛行機で自分で誤って墜落した‥‥それがこれだけ大きな扱いを受けることが全然理解できない。ケネディ家というものはアメリカではほとんど天皇家に匹敵するような扱いを受ける。これが前ブッシュ大統領の息子だとかレーガン大統領の息子だということだったら、ここまで大きな事件としては扱われなかっただろう。いずれにしても、少なくともニューヨークではもっと目を向けるべき事件があると私は思うのだが‥‥


全英オープンの方は、最後の最後にドラマが待ち構えていて、それなりに楽しんだ。しかし3ストロークもリードしていて最終18ホールでヴァン・デ・ヴェルデが打ったティー・ショットが右に流れた時は、まだまだわからないと一瞬思ったものの、それがクリークを越えて隣りのフェアウェイ横に鎮座ましました時は、アナウンサーも「彼にはゴルフの神様がついている」と言って、もう勝負は決したように見えたんだがなあ。彼もきっと勝ったと思っただろう。誰がその後のフェンス→石垣→ラフという軌道を描いた第2打や、続くクリークポチャを想像できただろうか。ああ、彼はきっと今夜は眠れないに違いない。それにしても3人でのプレイオフになった瞬間には、勝つのはジャスティン・レナードと思ったのだが、それも覆されてしまった。結局勝ったのはやっぱりそれまでは聞いたこともないポール・ローリーだった。いくら史上最多の10打差を挽回しての逆転だと言われてもね、プレイオフになるまでほとんど画面に映ってなかったんだから誰だかわからんよ。







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128回全英オープン

1999年7月15日-18日   ★★★

英国カナースティ

 
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