第136回全英オープン

2007年7月19日-7月22日   ★★★★

英国、スコットランド、カヌースティ・ゴルフ・クラブ

タイガー・ウッズが近代ゴルフでは誰も成し遂げたことのない同一メイジャーの3連覇に挑む今年のジ・オープン、初日は2アンダー69で、6アンダーのリーダー、セルジオ・ガルシアに4打差、しかしウッズは2日目、1番のティ・ショットを左に引っかけてクリークに入れてしまい、いきなりダブル・ボギー、これは今年はウッズの出番はないかと思う。いずれにしても今年のカヌースティは前回の99年よりかなり簡単になったそうで、実際、65、66なんてスコアがわりとよく出ていた。

さて、ジャン・ヴァン・デ・ヴェルデが最終ホールで最も印象的な崩れ方を見せ、10打差をひっくり返してポール・ローリーが勝った前回のカヌースティは、今でもよく覚えている。当然アメリカのメディアも、史上最大の逆転劇、みたいな感じで、ヴァン・デ・ヴェルデにまた焦点を当て、塞がったと思える傷口をまた開くのに余念がない。しかもヴァン・デ・ヴェルデは今、原因不明の奇病で身体が痛くて苦しんでおり、ゴルフどころじゃないというニューズを聞いた。なんとまあ‥‥

勝負の方は3日目を終わって9アンダーで首位はガルシア。6アンダー2位にスティーヴ・ストリッカーが続き、その下は3アンダーにポール・マッギンリー、パドレイグ・ハリントン、アーニー・エルス、K. J. チョイら7人が並ぶ。ヴィージェイ・シングは2アンダー、ウッズは1アンダーと、たぶん今回はダメだろう。

最終日は最初の4ホールを見る限りガルシアが崩れそうな素振りは微塵もなく、3番パー4でバーディを奪って10アンダーとなった時点で、これはこのままなんのドラマもなくガルシアの初メイジャー制覇で終わりそうだな、ま、それはそれでおめでたいが、しかしもうちょっとなんかドラマを演出してもバチは当たらないだろうにと思っていた。ところがそこからガルシアがいきなり続く4ホールで3つのボギーを叩き、気がつけばガルシア、ハリントン、それに最終日好調のアルゼンチンのアンドレス・ロメロがいつの間にか7アンダーで首位に並び、1打差6アンダーにはエルスがいる。ガルシアには悪いが勝負としてはこちらの方が断然面白い。

特に中盤勝負を面白くしたのがロメロで、ロメロは11番パー4で難しい位置からのバンカー・ショットの第3打を直接カップ・インさせるバーディ等で、その時8アンダーのガルシアに1打差の7アンダーに詰め寄っておきながら、続く12番パー4では第2打をプッシュしてブッシュ入りのダブル・ボギーで5アンダーに後退。これで力尽きたかと思わせといてまた挽回に転じ、続く4ホールを連続バーディ、16番パー3でバーディを奪って8アンダーとなった時点で、2日目以降初めてガルシア以外で単独首位に立つ。全米のカブレラに続いてアルゼンチン勢のメイジャー制覇という筋書きか。しかしロメロは続く17番パー4でティ・ショットをクリークに入れてダブル・ボギー、18番パー4でもボギーで、結局この日4アンダー67、通算6アンダーで優勝スコアの7アンダーに1打及ばなかった。ロメロはバック・ナインはすべてバーディかボギー、ダブル・ボギーで、パーが一つもない出入りの激しいゴルフで、まるで独り相撲をとっている時のフィル・ミッケルソンを見ているみたいだった。因みにミッケルソンは今回は予選落ちだった。

ロメロの脱落で勝負はガルシアとハリントンの一騎打ちとなる。ガルシアが15番パー4でまたボギーを叩いて8アンダーとなったことで、14番パー5でイーグルを奪って9アンダーとなっていたハリントンが単独首位になるが、ハリントンは18番のティ・ショットが右に曲がり、クリークに落ちるかと思われたところ、うまくボールが橋の上を転がって向こう側にわたったかと思わせといて、最後の最後にクリークに落ちた。さらにハリントンはドロップしての第3打をダフって今度はグリーン手前のクリークに落とす。なんだなんだ9年前の再現をするのはハリントンだったのか。

結局ハリントンは18番をダブル・ボギーで上がり、通算7アンダーでガルシアを待つ。またまた8アンダーで首位に立ったガルシアだが、18番で第2打をグリーン左バンカーに入れ、サンド・ショットはカップまで6フィート。下りの右曲がりの速めのパットは、入ったと思った瞬間カップの左縁に蹴られ、ボギー。勝負は7アンダーのハリントンとガルシアのプレイオフになった。

1番パー4、16番、17番、18番の4ホールで争われたプレイオフは、1番でバーディを奪ったハリントンに対し、ガルシアはボギーといきなり2打差つく。しかし次の15番パー3ではガルシアのティ・ショットはピンを直撃、あわやホール・イン・ワンというショットで、あと数インチでまたまた勝負は大きくどう転ぶかわからなかった。結局16番、17番と二人ともパー・プレイで、迎えた18番、2打リードのハリントンは499ヤードを最初から刻んで3オン狙い。パーでまず間違いなく優勝だし、ボギーでもかなりの確率で優勝できる。

3打目でグリーンに乗せたハリントンがまず最初に30フィートのパットをし、4フィート・オーヴァーして外し頃のボギー・パットを残す。一方、是非25フィートのバーディ・パットを沈め、ハリントンのパット次第では再度の逆転の可能性も残していたガルシアのパットは、カップの左側をかすめた。結局ガルシアはパー、ハリントンは慎重に4フィートを沈め、メイジャー初優勝を飾った。6アンダー3位にロメロ、5アンダー4位にエルスとリチャード・グリーン、4アンダー6位にスチュワート・シンクとハンター・メイハンが入った。ウッズは2アンダーで12位タイだった。ガルシアはなあ、さすがに今夜は寝られないだろうなあ。

ところで同じ日程で行われたミルウォーキー、ブラウン・ディア・パークのUSバンク・チャンピオンシップでは、16番パー4で第2打を直接カップ・インさせてイーグルを奪ったジョー・オグルヴィが14アンダーでツアー初優勝した。それにしても一時は全英で毎回優勝に絡んでいた印象のあるジャスパー・パーナヴィクが、この時期に他のトーナメントに出ているのを見るのは寂しい。一方、今節はマッチ・プレイのLPGAでは、宮里藍が決勝まで進んだが、韓国のション・フヮ・リーに2&1で破れた。惜しかったが、やっぱりツアーで最初の優勝はくじ運に大きく左右されるマッチ・プレイでなく、通常のストローク・プレイで勝ってもらいたいという気はしないでもない。



 
 
inserted by FC2 system