第132回全英オープン

2003年7月17-20日   ★★★1/2

英国、ケント州サンドウィック、ロイヤル・セント・ジョージス・ゴルフ・クラブ

初日の第1打をタイガー・ウッズがラフに打ち込んでロスト・ボール、いきなりトリプル・ボギーの7を叩く。荒れやすい全英を象徴するような一打で、おいおい、大丈夫かよと不安になる。しかしロスト・ボールって、アメリカのツアーじゃメイジャーどころかごく普通のトーナメントですらまず聞かない。全英だなあ。


ところで私はこの全英開催中の土曜日から休暇で国外脱出を図っていた。まさかその時はその日が全英と重なるなんて考えてもいなかったのだが、しょうがない。土曜日の午後から出発だったので、時差の関係で土曜午前中のプレイまではなんとか見れたのだが、最終日は録画しておくしかない。VCRのタイマーをセットして出発、先に結果を知ることだけは嫌だから、旅先でもできるだけ新聞やTVのスポーツ・ニュースは見ないようにする。それでもTV画面に一瞬、全英のシーンが映ったりすると、慌ててチャンネルを切り替えてなんとか過ごす。ふう、見たいものを見ないようにするというのは、これでなかなか大変だ。それでなんとか一週間を過ごし、帰ってきてからいきなりTVで録画してあった全英を見る私を、そばで女房が呆れたように見ているが、ほっといてくれ。


さて、3日目を終わった時点では、首位のトマス・ビヨーンにデイヴィス・ラヴ3世、ウッズ、ヴィージェイ・シング、セルジオ・ガルシア等が絡み、最終日を期待させる。しかしその中をするすると抜け出てきたのは、ベン・カーティス。カーティスって誰だ。Qスクール出身という紹介が出るからにはアメリカンだろうが、私はこれまで見たことも聞いたこともないぞ。


全英は荒れやすいからノー・マークのゴルファーが勝ちやすいというのは確かにあるが、しかし、それでもまったく無名が勝つか。いや、99年のポール・ローリーだって、あまりアメリカには知られていないEPGAのゴルファーということを考えてもほぼ無名に近かったし、その前にもう少しで全英を制しそうだったジャスティン・ローズなんか、当時まだ確か16歳のアマチュアだった。これはひょっとするとひょっとするかも。


カーティスはアウトで順調にスコアを伸ばし、一時は5アンダーとなってビヨーンに2打差をつける。一世一代のゴルフをしているようだが、このままぶっちぎりか? しかし、案の定というかなんというか、カーティスはインのそのまた後半に入ってボギーが嵩みだす。結局、最後の7ホールで4ボギーを叩くも、それまでの貯金が効いてこの日2アンダー69、通算1アンダーでレギュレイションを終える。一方のビヨーンは淡々とクールにプレイ、14番パー5でバーディを奪った時点で4アンダーとなり、その直後に1アンダーまでスコアを落としたカーティスに3打差となる。ウッズ、シング、ラヴはチャージをかけることができず、このまま勝負あったかと思われた。


しかし勝負の最後の一ひねりは16番パー3でやって来た。その時点で3アンダーと一つスコアを落としていたとはいえ、あと3ホールを危なげなくプレイすれば勝ちのビヨーンは、ティ・ショットをグリーン右のポット・バンカーに入れ、第2打のサンド・ショットはスロープを転がって元の場所に戻ってしまう。さらに第3打までまたまたバンカーに戻ってしまい、このホール、ダブル・ボギーの5。カーティスと同じ1アンダーで並ぶ。その時ウッズ、シング、ラヴは3人ともイーヴン・パーで最後の数ホールをプレイ中であり、最後の最後になって、勝負はいきなりどう転ぶかまったくわからなくなった。さすが全英。4年前のカナースティを思い出させてくれる。


しかしウッズは17番パー4をボギーで、まず一人脱落。最終パーティでプレイするラヴも同じく17番でボギーを叩き、二人目が脱落。さらにラヴと一緒にプレイするビヨーンまでもがボギーでイーヴン・パーにスコアを落とし、これでカーティスが1アンダーでまた単独トップとなる。シングが18番パー4をパーで上がった時点で、勝負は果たしてビヨーンが最終ホールでバーディを奪うことができるかにかかるのみとなった。ダメならカーティスの優勝だ。


結局ビヨーンは18番をパーで上がり、意外性の全英らしく、PGAツアーすら一度も勝ったことのないカーティスが、メイジャー初出場初優勝を飾った。今年のツアーはヴェテランが活躍し、ツアー未勝利ゴルファーが勝つ可能性は小さいと思ったんだが、よりにもよって、か、まさしく、か、全英でツアー未勝利ゴルファーが勝った。なんでもメイジャー初出場初優勝は、1913年の全米で当時無名のフランシス・ウーメが勝って以来だそうで、なんともいやはや‥‥







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