ボーン・イン・ザ・ワイルド Born in the Wild

放送局: ライフタイム

プレミア放送日: 3/3/2015 (Tue) 22:00-23:00

製作: マタドール

製作総指揮: ジェイ・ピーターソン、トッド・ルービン、ヨシ・ストーン


内容: 人里離れた奥地や山の中、砂漠、海辺等で、家族だけで出産を経験する。


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Born in the Wild


ボーン・イン・ザ・ワイルド  ★★1/2

この番組、タイトルを聞いただけで内容を当て切きれたらすごい。私は最初、自然に囲まれて育った人間に密着するリアリティ・ショウかなと思った。近年、登場人物を野生に置き去りにしてサヴァイヴァル技術を試させるタイプのリアリティ・ショウが多い。どんどん条件は過酷なものとなっている。その列に連なる新たなリアリティ・ショウか、さて今回の新機軸は何か、と思っていた。


ところがあに図らんや、この番組、リアリティ・ショウはリアリティ・ショウでも、サヴァイヴァル系とは違う。いや、登場人物が人里離れた場所で苦痛を強いられるという点である意味かなり厳しいリアリティ・ショウなのだが、しかし、生きるためのサヴァイヴァル技術を試される類いのリアリティ・ショウではない。この番組、実は家族以外他に誰もいない自然の中で、子を出産する様をとらえるリアリティ・ショウなのだ。


まあ、出産は必ずしも病院でするものとは限らない。つい数十年前までは、世界中どこでも、だいたい産婆さん等がついて自宅で出産するというのが普通だった。今でもそういうところはいっぱいあるし、自分から進んで自宅で出産する選択をする者も大勢いる。ただし、そういう場合でも経験のある助産婦さんについていてもらうのが普通だろう。さもなければいざという時にどうすればいいかわからない。


しかしそれすらも嫌で、本当に家族だけで子を産みたいと考えている者が増えているらしい。例えば番組第1回に出てくるオードリーと夫のピーター、それにまだ幼い女の子と男の子を含めた総勢4人のバード家は、アラスカに住んでいる。それもアンカレッジのような都会ではなく、家に帰るためにはセスナ機に乗って行くしかない辺境だ。


オードリーとピーターは、以前は都会も都会、サンディエゴに住んでいた。そこでまだ十代だったオードリーが生んだ最初の子は難産で、しかも病院でさんざん医者に脅されたようで、まったく喜ばしい経験ではなかったらしい。一方ピーターはシェリフだが、やはり彼もそこでさんざん都会の嫌な面ばかり目にして、二人して都会が嫌になったようだ。そこでアラスカに引っ越してきた。周辺には歩いて行ける距離に民家はまったくない、はっきり言って僻地で、自然は素晴らしいかもしれないが、なにもそこまで引きこもらなくても、とも思える。


その家で出産すると考えるだけでも難行だと思えるのに、オードリーはさらに家を出て、近くの海か湖だかの水際にテントを張り、そこで子を産もうと考える。既に二人の子を産んだ経験から、医者の手はいらないと判断したんだろう。さざ波のたてる音を聞きながらの出産、ロマンティックといえばロマンティックと言えるか。


一方アラスカの山奥にて、近くにはクマが出る。ピーターは外に出る時は常に猟銃を手放さない。もし出産時の血の匂いを嗅いでクマが出没したら、たとえ銃を持っていてもあまり芳しい結果にはならなそうな気がする。それとも出産祝いにクマ鍋か。


しかも予定日が迫ってくると、天候が崩れ始める。強い風が吹いて波が立ち、ピーターが砂浜に建てたテントは吹き飛ばされ、その場所まで水が押し寄せてきていた。水際で出産という案は却下され、ピーターは急遽、今度は内陸部に簡易小屋を建て始める。とはいってもピーターはそこそこハンディマンではあるようだが大工というわけではなく、最初、柱ごと土台が崩れたりして一からやり直しになる。これで本当に大丈夫か、せめて自分の家の中で産んだ方がいいんじゃないかと、他人事ながら気になる。


それでもピーターはなんとか独力で小屋を建て、本土からはオードリーの母と妹もヘルプを兼ねてやってくる。土産にいったいどこで調達したかわからないピザ持参で、既に冷めてるだろうが、オードリーの好物らしい。万全とは思えないが、どうやら環境は整った。


その時が来て、オードリーは小屋に移動、既に陣痛は始まっており、かなり苦しそうだ。しかも小屋の中に吊ってある蚊帳の中に蚊が飛んでおり、どうしても追い出せない。新生児共々マラリア感染ってことはないだろうな。結局オードリーの陣痛が激しくなり、蚊なんて構ってられなくなる。だからせめて家の中で産んだらどうだって言ってんのに。


日中放送のTLCの「バース・デイ (Birth Day)」も出産記録リアリティで、私はそこそこ出産のシーンは目にしているのだが、さすがに今回ばかりは勝手が違う。やはり病院じゃない、医者がいないとなるとそれだけでも不安なのに、その上蚊は飛んでいるし不衛生だし、もしかしてどうしても無理で帝王切開しか手段が残ってないってことになったら、いったいどうするつもりなんだ。


案の定オードリーは今回も難産で、なんで出てこないのーと叫びながらずっとあーうー苦しんでいるが、結局ピーターも母も本当に手助けすることなんかできない。オードリーはヘルプ・ミーと泣き出す始末だが、最終的にはオードリー一人でなんとかせざるを得ない。いったい何時間のたうち回ったか、オードリーの股の間でヘルプしているピーターが、この子は逆子なんだという。それって‥‥今さらわかったからってどうしろというんだ、だから病院で産めって言ってんのに! と思うが、それならそうと力み方があるようで、オードリーはそれを聞いてさらに力を込め‥‥ついに子供が現れる。


しかしあまりにも肌の色が白い、というか灰褐色で動きがなく、この子、本当に生きている? 死産じゃないだろうなと、赤ん坊の泣き声を聞くまでは不安になる。へその緒がまだ繋がっているが、あれってどうやって切るんだ、素人が下手に切ると出べそにならなくていいのか、などなど不安が後から後から頭をもたげ、とにかく気が休まらない。


この番組、女房と一緒に見ていたのだが、放送が終わると二人してほとんどテーブルの上に突っ伏して、疲れたー、とぜーはーしていた。こんなに見てて疲れる番組は初めてだ。これに較べるとCBSの「サバイバー (Survivor)」の忍耐力勝負なんて、屁の河童だ。


番組は第2回以降も、山奥や川辺、砂漠等の自然の中で出産するカップルをとらえる。ほとんどは初産ではなく、自分一人で産むことにほどほどの自信を持っているように見えることもあり、大自然の中で子を産もうと考えることには別に反対はしない。とはいえ、やはり万一を考えたフェイル・セイフ案は用意しておいた方がいいと思う。











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