放送局: PBS

プレミア放送日: 1/19/2004 (Mon) 6:30-7:00

製作: ラグドール

製作: アン・ウッド


内容: 子供向け教育番組


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子供向け教育番組と聞いてアメリカで一般の人々が真っ先に思い出すのは、まず間違いなく「セサミ・ストリート」であろう。公共放送のPBSが1969年から放送を開始、現在でも続いている長寿番組だ。♪Can you tell me how to get, How to get to Sesame Street...と歌う主題歌や、カーミット、エルモ、ビッグ・バードといったパペット・キャラクターに馴染まずに育った子供たちはいないと断言できる、教育番組の中の教育番組である。


アメリカにおいて「セサミ・ストリート」以外で人気や評価の高い教育番組という話はあまり聞かない。せいぜい、やはり同じPBSで放送されている「リーディング・レインボウ (Reading Rainbow)」くらいだろうか。ただし、こちらの方はパペットが出てくるわけでもなく、真面目一辺倒の教育番組であるだけに、親には好評でも、実際に見る子供たちにも人気があるかというと、首を傾げざるを得ない。


「セサミ・ストリート」以降、子供向け教育番組でそれなりに話題となった番組の出現は、97年の、英BBC発の「テレタビーズ (Teletubbies)」まで待たなければならない。ただしこれも、少なくともアメリカでは番組の質やオリジナリティの面で評判になったというよりも (もちろんその点で評価されてもいたが)、主人公のテレタビーズの一人がゲイであるため教育上よろしくない、と発言して全国民の笑い者になった、とある政治家のおかげで、一挙に話題性を獲得してメイジャー番組になったという印象はなきにしもあらずだった。


その「テレタビーズ」以降、少なくとも幼児向け教育番組では、ヒット番組 (教育番組のヒット番組というのは、なにやら矛盾しているような気もしないではないが) はこれまで出現していない。子供に人気のあるディズニー/ABC系列や、子供向け番組専門のニコロデオン等で、わりと教育的見地からも評価の高い番組というのもないわけではないが、教育的要素を持ったエンタテインメント番組ではなく、エンタテインメントの要素を持った教育番組となると、やはり、「セサミ・ストリート」、「テレタビーズ」以外の番組を考えることは難しい。


「ブーバー」は、「セサミ・ストリート」、「テレタビーズ」の系列に連なる、着ぐるみ/パペットを起用した新幼児向け教育番組だ。主人公のブーバーズは、5つのカラーに色分けされた「エネルギー原子 (Atoms of Energy)」(そういうものがこの世にあるのか。教育番組で子供に間違った事実を教えてしまってもいいのか) で、ハンバー (Humbah)、ザンバー (Zumbah)、ジン・ジン・ジンバー (Zing Zing Zingbah)、ジャンバー (Jumbah)、ジンバー (Jingbah) と名前がつけられている。どことなしに中国チックな名前だ。人間の登場人物にも中国系と思われる女性がいるところを見ても、アメリカにおいて中国系移民が一般社会に浸透してきたことが窺われる。


で、番組は、その5人のブーバーズを中心に構成されているのだが、このブーバーズ、「テレタビーズ」よろしくヘンな擬音効果は発するものの、基本的に一言も喋らない。ではブーバーズが何をするかというと、彼らが出てくる時は、屈伸したり回ったり転んだり踊ったりと、体操もどきのエクササイズをしてみせるだけなのだ。要するにこの番組、幼児どころか乳児まで視野に入れた番組であって、その子たちにただ、視覚的に楽しませ、身体を動かさせようと試みているだけのようだ。確かに身体が丸まったブーバーズのエクササイズはぶよんぶよんと弾むようで見てて面白く、乳幼児はこれを見て、きっと真似して身体を動かし始めるだろうなという気はする。


番組が子供たちにアルファベットを覚えさせようとすらしないのは、たぶん、読み書きを始める年齢にすら達していない幼児が相手だからだろう。できるだけ何かを説明するというようなことは避け、言葉も、ただ、ブーバーズがアーとかウーとか言うのが関の山だ。ブーバーズの代わりに人間が出てくるシークエンスでは、最初二人いた人間が一人で縄跳びをし、次に人間が二人増え、最初にいた二人がより長いロープを持って縄跳びをさせる。その後も二人ずつ人間が増えて、長い縄跳びになっていくのだが、要するにそこでポイントとなっているのは、縄跳びというエクササイズを勧めることの他に、最初はただ長い (Long) だけたったロープが、より長く (Longer) なっていくという、比較級を覚えさせるためであったようだ。この他、主題歌もブーバーブーバーブーバーブーバーと、ただブーバーを連発するだけで、滅茶苦茶覚えやすい。基本的に子供が番組を理解したり楽しんだりする上で、妨げになるようなものは極力排除しようとする姿勢が感じられる。


実は「ブーバー」製作総指揮のアン・ウッドは、「テレタビーズ」の産みの親でもある。「セサミ・ストリート」以来の幼児教育番組のヒットとなった「テレタビーズ」は、現在、世界111か国で、41の言語に訳されて放送されている (といっても「テレタビーズ」もほとんど言葉らしい言葉は喋らないが。) しかし「テレタビーズ」は放送開始当初、登場人物がほとんど意味のある言葉を喋らず、ただ同じことを何度も繰り返している点が、教育的見地から疑わしいと評する批評家も多々あった。それが人気番組として定着したのは、その同じことの繰り返しこそ、子供が好んで見る理由であるということが実地に証明されたからに他ならない。


そして「テレタビーズ」同様、「ブーバー」も、実は既に一部で批判にさらされている。「テレタビーズ」は、同じことの反復、無意味性、さらに上記に挙げたゲイ・バッシング等で槍玉に上げられたが、「ブーバー」では、そのブーバーズのまん丸お腹が、子供の肥満を増長させ、食生活に悪影響を与えると攻撃する批評家がいる。よくもまあそんな揚げ足とりの発言ができるものだと思うが、言っている者はわりと本気だったりする。こういう話を聞くと、やはり政府による検閲によって、こういう、まるで非建設的意見を吐く輩を取り締まってはどうかと思いたくもなる。






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Boohbah

ブーバー   ???  (子供がどう見るかわからないので判断不能)

 
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