Blackhat


ブラックハット  (2015年1月)

いや、慌ててしまった。巷ではオスカー戦線絡みの映画がしのぎを削っており、私も、ではどれから見ようかと考えていたところだった。もちろんマイケル・マンの新作「ブラックハット」も見るつもりではいたが、始まったばっかしだし、もうちょっとはやっているだろう、先週先々週とアクションものが続いたし、オーソドックスなドラマを見てみたい気もするかなと思っていた。


そしたら、今週末の公開情報をチェックしていて驚いた。先週全米公開が始まった「ブラックハット」が、今週、ほとんどの映画館から消えている。あまり批評家受けはよくないようだなとは思っていたが、ここまで一般観客からも総スカンされていたとは知らなかった。あまりもの興行成績の悪さに、公開翌週には全米のほとんどの劇場から引き上げざるを得なかったようだ。


主演のクリス・ヘムズワースは人気シリーズの「マイティ・ソー (Thor)」の主人公でもあり、彼自身が特に人気がないわけではない。私のようにマン作品ならなんであろうと見ると考えているファンもそこそこいると思う。しかしそれ以外の一般客には、まったくと言っていいほどアピールしなかったみたいだ。実際の話、IMDBを見てみると、製作費7,000万ドル、公開初週の興行成績はたったの440万ドルで、これではペイする見込みはほとんどない。誰もまさかマン作品がここまでぽしゃるとは思ってなかったに違いない。


これはやばい。先週全米拡大公開、約2,500館以上で公開されたと「ブラックハット」が、翌週には数える程度でしかやっていない。しかもよく見ると夜最後の一回だけ上映だったりする。これでは来週にはもう完全に劇場から消えているだろう。見るなら今しかない。というわけで、いつもより遠目のマルチプレックスにクルマを出して行ってきたのだった。


たぶん、この時期に公開した理由は、先週見た「96時間: レクエイム (Taken 3)」同様、アカデミー賞なんかどうでもいいから、気分がスカッとするアクションを見たいというファンを見こしてのスケジューリングだったと思う。この手法自体は間違っていない。間違ったのは、これが一般的なアクション・ファンにアピールする、肩の凝らないアクションであるかどうかという点の判断だ。「レクイエム」はいい、しかし「ブラックハット」はストーリーを理解するには頭を使い過ぎる。


また、ヘムズワースはともかく、そのラヴ・インテレストとなるウェイ・タン、パートナー役のリーホム・ワンが、正直言ってアメリカではまったく無名の中国人俳優というのも痛かった。同じ中国人女優でも、これがチャン・ツィイーとかなら話はまた違ってきたんじゃないかと思う。


それにどう見ても肉体派にしか見えないヘムズワース自身だって、ハンマーぶん回してばかりのソーならともかく、天才ハッカーというのも、彼自身の守備範囲から外れてないかという気は確かにする。ヒュー・ジャックマンも肉体派ウルヴァリン、「ソードフィッシュ (Swordfish)」での天才ハッカーと、ヘムズワースと似たようなキャラクターを演じているが、ジャックマンの場合はガタイがヘムズワース並みにでかくはないため、頭脳派でもそこそこ絵になる。しかしヘムズワースのハッカーは、説得力に欠ける気がするのは如何ともし難い。要するにこれらの気になるキャスティングを無視してまで、人に見ようという気にさせるまでのものがなかったということだろう。


とはいってもマン作品だ。なにはともあれアクションだ。実際の話、やっぱりマンのアクションの演出は癖になる。マン作品と「レクイエム」の最大の違いは、マン作品では、「レクイエム」にようにマシンガン撃って主人公に一発も当たらない、みたいな描写がないことにある。むろんマン作品だ、「ブラックハット」だってマシンガン並みに銃を撃つが、近距離で主人公に対してマシンガン撃っているのにかすり傷一つ負わないというのをスロウ・モーションで撮る、なんて描き方はさすがにしない。時にリアリティより絵を重視するという得意のマン演出もあることはあるが、それでもやはりマン・アクションは手に汗握る。これだよ、これ。ストーリーが破綻していようがわかり難かろうが、これを見るためにわざわざ劇場まで来ているのだ。


ヘムズワースはともかく、中国保安部のダワイとリエンに扮するリーホム・ワンとウェイ・タンは、なんか見覚えがあるような気もするが覚えてないと思ったら、二人ともアン・リーの「ラスト、コーション (Lust, Caution)」に出ていた。そうか、あの主人公の女の子が、今頃になってマン作品で主演か。マンも「ラスト、コーション」見てたんだな。











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香港の原子力プラントが何者かによってハッキングされ、原子炉が暴走を始める。シカゴでも株式取引所がハックされ、大豆の先物取引の価格が天井知らずに上昇する。FBIのバレット (ヴィオラ・デイヴィス) は中国の保安部のダワイ (リーホム・ワン) と協力して犯人を特定しようとするが、相手もなかなか尻尾をつかませない。ダワイは現在サイバー犯罪で服役中のアメリカ留学中の友人だった天才ハッカーのニック (クリス・ヘムズワース) と、自分の妹のリエン (ウェイ・タン) を仲間に引き入れ、事態の進捗を図る。彼らは香港でテロリストとして怖れられているカザール (リッチー・コスター) が関係していることを突き止める一方、より深い情報を得るために国家安全保障局のコンピュータをハッキングし、それがばれてニックはアメリカに呼び戻されようとする。しかしまた、テロリスト一味もニックたちの後を追っていた‥‥


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