放送局: CBS

プレミア放送日: 3/1/2001 (Thu) 22:00-23:00

製作: レッド・ボード・プロダクションズ、パラマウント・ネットワークTV

製作総指揮: デイヴィッド・ミルチ、アンソニー・ヤーコヴィッチ

製作: ナン・バーンスティン・フリード、マシュー・ペン

監督: チャールズ・ハイド

脚本: デイヴィッド・ミルチ、アンソニー・ヤーコヴィッチ

撮影: デイヴィッド・ボイド

編集: アンドリュー・ドーファー

美術: テッド・グラス

出演: エド・オニール (マイク・ムーニー)、ジェフリー・ピアース(ヴィンセント・トラウト)、デイヴィッド・ストラザーン(ウィル・プリーチャー)、タイタス・ウェリヴァー(ジミー・フリン)、マイケル・マドセン(テリー・マドック)、ドニー・ウォールバーグ(クリス・スコット)、グリン・ターマン(テディ・オルセン)、キム・ディケンス(サラ・デイ)


物語: パーク・アヴェニューの高層ビルの一室でストリップ・ダンサーが殺されているのが発見される。NYPDのムーニーとピアースは調査を始めるが、実は殺されたダンサーはFBIが別件で追っているロシアのギャングに関係していた。FBIのプリーチャーとフリンはNYPDにヤマを荒らされるよりは取り込んだ方がいいと判断、ムーニーとピアースに破格の待遇で一緒に働かないかと持ちかける。叩き上げのムーニーはまだ若いピアースの将来のことも考え招聘を受諾するが、自分たちにすべての情報を伝えることなく動き回るFBIにいい感情を持ってなく、ある時ついに堪忍袋の緒が切れてフリンを殴ってしまう。一方、ヘルズ・キッチンでバーを経営しながら、その実はFBIの情報屋であり、ギャングとも繋がりのあるマドックは、自分のしていることを隠しながら若いクリスに自分の知っていることを教えることに情熱を傾けていた。FBI、NYPD、情報屋の三者は、それぞれの思惑を胸にロシアン・ギャングに接近するのだった‥‥


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現在「サヴァイヴァー II」人気で上昇気流に乗るCBSが、NBCが圧倒的強さを誇る木曜夜の「マスト・シーTV (Must See TV)」番組群を潰すべく、「サヴァイヴァー」、「C.S.I.」と絶対の自信を持つ番組を裏番組に当ててきたということは、「サヴァイヴァー II」の欄に書いた。現時点ではCBSの目論見通り、「サヴァイヴァー」と「C.S.I.」は、「フレンズ」、「スティーヴン・ウェーバー・ショウ」、「ウィル&グレイス」、「ジャスト・シュート・ミー」と続く8時から10時までのNBCの最強シットコム群を撃破しているのだが、問題は10時からの「ER」である。


「ER」 は現在常時視聴率ナンバー1の、NBCが誇る最強のドラマ番組である。この「ER」を粉砕するという悲願をかけてCBSが編成したのが、「ビッグ・アップル」であった。本当は「ER」は、「ビッグ・アップル」のプレミアが予定されていた3月第1週の放送は、以前放送したエピソードの再放送が予定されていた。しかしCBSをこれ以上調子に乗せてはいけないと判断したNBCは、スケジュールを変更して数少ない「ER」の新エピソードを投入、逆CBS潰しに出たのであった。結果は当然そうなるだろうとは思ったが、「ER」は「ビッグ・アップル」を大差で粉砕、NBCはなんとか面目を保った。


ドラマ・シリーズは、プレミア・エピソードを見ていないことには登場人物の人間関係や舞台設定が極端にわかりづらくなる。そのためプレミア放送でできるだけ高い視聴率を上げておくということがこれからの番組の行く末を占う上で実に重要なのだが、「ER」のおかげでけちをつけられた「ビッグ・アップル」は、その後、CBSが木曜に大学バスケットボール選手権を中継するために一時的に水曜に移動して放送されても、結局やはり裏番組のNBCの「ウエスト・ウィング」にも及ばず、現時点では低空飛行を強いられている。


しかし、仮にも「ER」と対抗するべく編成された番組である。本当に自信があったかはともかく、それなりのレヴェルの番組であることは間違いない。製作総指揮はデイヴィッド・ミルチ。スティーヴン・ボチコと共にあの「NYPDブルー」を製作した人間である。「NYPDブルー」があれだけ評判になったのも、元NYPD (ニューヨーク市警) のミルチによる、実際の警察の内情や、実際に起こった意外な事件、警官の使用する生のスラングや言葉遣い等が、圧倒的にリアルな描写で映像化されたからに他ならない。私はたとえ「ビッグ・アップル」が「ER」相手に善戦しようがどうしようが、とにかく一度は見てみなくてはと思っていた。


番組を見て思ったのは、これがプレミア放送で視聴率を稼げなかったのは痛いということであった。FBIとNYPDと情報屋という3つの主要な登場人物が入れ替わり立ち替わり登場するこの番組では、プレミアを見て人間関係を把握しておくことが重要なポイントになる。プレミアを見ないで「ER」にチャンネルを合わせた視聴者が次の回から「ビッグ・アップル」を見ようと思っても、ほとんどわけがわからなかったであろう。「NYPDブルー」みたいにまだ話が一話完結になっているならまだしも、「ビッグ・アップル」は少なくとも当分は一つの話が続いていくように見える。プレミアを見なかった視聴者が2回目から「ビッグ・アップル」にチャンネルを合わせても、興味を持続させることができるとは到底思えない。


案の定、プレミアで出鼻をくじかれた「ビッグ・アップル」は、その後視聴率はじり貧となっている。「ER」の新エピソードを投入して、とにかく視聴者を「ビッグ・アップル」のプレミアから遠ざけようとしたNBCの目論見は、見事に当たったようだ。残念ながら「ビッグ・アップル」が今後挽回して視聴者を獲得するというのは、もはやほとんど不可能だろう。


「ビッグ・アップル」の主要人物は何人もいるが、一応主演と言える叩き上げの刑事マイク・ムーニーに扮するのが、エド・オニール。私はFOXで8年も続いたシットコムの「メアリード... ウィズ・チルドレン (Married... with Children)」でしか彼のことを知らなかったので、こういう渋い役ができることにびっくりした。「メアリード...」を見たものならわかると思うが、この番組は、一時「低俗」と陰口を叩かれたFOXのシットコムの中でもずば抜けて低俗という定評の高かった番組で、笑いをとるほとんどは下ネタだったという代物だ。あまりにも下品なので時々確かに大いに笑わせてくれたが、その主人公がこういう演技もできるとは‥‥アメリカの役者層の厚みを実感する瞬間である。


FBIのウィル・プリーチャーに扮するデイヴィッド・ストラザーンも、「激流」の情なかったおっさん役からは打って変わった変貌ぶりで、皆さん本当に役者だなあと思わせてくれる。ストラザーンの下で働くジミー・フリン役のタイタス・ウェリヴァーも悪くない。ウェリヴァーは「NYPDブルー」出身で、昨年CBSが放送した「フェイク」のTV版「ファルコン (Falcon)」でも似たような役を演じていた。ストラザーンとウェリヴァーがいつもきちんとスーツを着ているキャリア組なのに較べ、NYPDのオニールとヴィンセント・トラウト役のジェフリー・ピアースはノン・キャリアでいつも私服に近い恰好であり、両方とも取り締まる側にいるとはいうものの伝統的に反目しあっている。その辺の葛藤の描写も面白い。


クラブの経営者を装いながら実は裏の社会に足を突っ込んでおり、その上にFBIの情報屋でもあるテリー・マドックに扮するのは、「レザボア・ドッグス」で囮刑事の耳を音楽に合わせて切り落とすという、あのサディスティックなミスター・ゴールドで強烈に印象を残したマイケル・マドセン。しかし最近は「ゲッタウェイ」、「狼たちの街」等、出演作品のほとんどがなぜだかヒットしない。多分「ビッグ・アップル」も遅からずキャンセルの憂き目に遭うと思われるから、TVでもやはり運に恵まれないようだ。そのマドックが面倒を見ている若いギャングのクリス・スコットに扮するのが、元キッズ・オン・ザ・ブロックのアイドル、ドニー・ウォールバーグ。TNTの西部劇「パーガトリー (Purgatory)」にも出演しており、兄のマーク・ウォールバーグと同じく俳優路線を堅実に歩んでいる。


悪くない番組なんだが、とにかくこの番組が生き延びる可能性は多分もうないだろう。CBSが辛抱して来シーズンまで更新し、そこで木曜夜でない時間帯に編成するなら話は別だが。個人的な意見を言わせてもらえれば、「ビッグ・アップル」という何やら観光客向けのような番組タイトルが、一番最初の失敗のように思われる。このタイトルで面白そうだと思う視聴者がいるとは私には到底思えない。番組の冒頭、ヘリコプターに乗ってFBIの面々がニューヨークの摩天楼を見下ろしながらマンハッタンに降りるという件りは、確かに観光案内っぽかったけど。ギャングが取り引きをするブルックリンの桟橋やマドセンとウェリヴァーが密会するロウアー・マンハッタンも、いかにもという感じで使われている。


ところで、そのマドセンとウェリヴァーが密会するいくつかの場面を含めた屋外シーンでは、本当に皆寒そうで、吐く息が白いだけでなく、ウェリヴァーの鼻の頭なんて真っ赤になっている。多分収録は昨年末か年明け早々だろうが、確かに今年のニューヨークの冬は寒かった。いつもより冷え込んだだけでなく、雪も多く、その上春が来るのも遅い。3月も末だというのにいっこうに暖かくならない。番組関係者は寒空の下、皆頑張ったんだろうに。



追記 (2001年4月):

予想されたことではあるが、視聴率の低迷が続いた「ビッグ・アップル」のキャンセルの発表が4月頭にあった。結局放送されたのはたったの5回だけか。遅かれ早かれ発表があるだろうとは思っていたが、正味一月しか持たなかった。ま、しょうがないね。これでNBCのマスト・シーTVもしばらくは安泰だな。








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Big Apple

ビッグ・アップル   ★★★

 
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