Being John Daly   ビーイング・ジョン・デイリー

放送局: ゴルフ・チャンネル

プレミア放送日: 3/2/2010 (Tue) 21:00-21:30

製作: ゴルフ・チャンネル

出演: ジョン・デイリー


内容: 素行の悪さで鳴らす悪童ゴルファー、ジョン・デイリーに密着する。



Donald Tramp’s Fabulous World of Golf  ドナルド・トランプス・ファビュラス・ワールド・オブ・ゴルフ

放送局: ゴルフ・チャンネル

プレミア放送日: 4/12/2010 (Mon) 21:00-22:00

製作: ザ・ワークショップ、トランプ・プロダクションズ、

ホスト: ドナルド・トランプ


内容: ドナルド・トランプがホストとなってセレブリティ同士でマッチ・プレイをさせる。


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最近になって始まった、ゴルフ・チャンネルのゴルフ関係の番組タイトルを一応表題に掲げておいたが、もちろん本当に書きたいのは、昨年末からのタイガー・ウッズを中心とするゴルフ界の話題のことだ。それだけでなく、今年前半はオリンピックを含め、スポーツ界でわりと印象的な事件が連発した。歴史的に見ても事件性の高いと思われるこれらについて書き留めておくことは、意味のないことではなかろう。


アメリカで毎年最も注目されるスポーツ最大のイヴェントは、文句なしにNFLの優勝決定戦、スーパー・ボウル (Super Bowl) だ。この日はどこもこの中継を見ながら仲間内でわいわい飲んだり食ったりするのが恒例になっている。ニュー・オーリンズ・セインツがインディアナポリス・コルツを破った今年のスーパー・ボウルは、視聴者数が1億650万人という、それまで1983年に放送された「MASH」の最終回が持っていた1億600万視聴者という記録を僅かながら更新、アメリカTV 史上最も多くの視聴者を獲得した番組となった。


いずれにしても今回のスーパー・ボウルは、私にとってはデイヴィッド・レターマンとオプラ・ウィンフリーとジェイ・レノが一緒に登場した、「レイト・ショウ (Late Show)」の番宣によって印象に残ることになった。同じ2月にはヴァンクーヴァー冬季五輪があり、スーパー・ボウルほどではないにせよ、それでも多くの話題を提供した。そして2月19日に行われたタイガー・ウッズの釈明会見は、オリンピックに勝るとも劣らぬ注目を集めた。


この会見、基本的にウッズが現れて謝罪兼釈明を試みた15分程度のもので、昨年の事故の詳細に関してはプライヴェイトなものとして一切触れず、しかも2、30人ほどの列席者はほとんどが身内、記者からの質問は一切受け付けないという一方的なものだった。にもかかわらず、昨年末から人々の前から姿を隠していたウッズが初めて人前に姿を現すということで注目度は高く、朝11時からの会見を、全ネットワークが定時番組をうっちゃって生中継するという異例の事態になった。


因みにその時のネットワーク番組は、ABCが「ザ・ヴュウ (The View)」、CBSが「ザ・プライス・イズ・ライト (The Price Is Right)」、NBCが「マーサ・スチュワート・ショウ (Martha Stewart Show)」、FOXが「ドクター・オズ・ショウ (Dr. Oz Show)」、CWが「ジェリー・スプリンガー・ショウ (Jerry Springer Show)」で、それらがすべて一時的に差し置かれ、ウッズの会見中継後にそれぞれのチャンネルの解説やゲストが簡単なコメントを差し挟んだ後、既に始まっていた定時番組に途中から切り換わった。


まあ、ほとんどが特に最初から見る必要のないヴァラエティ系の番組だったとはいえ、ウッズの影響力というものを改めて思い知らされた。CBSなんて、チャンネルを代表するメイン・アンカーのケイティ・コーリックがわざわざ解説を行っていた。因みに全ネットワークが一斉に同じイヴェントを生中継したのは、昨年のマイケル・ジャクソンの追悼セレモニー以来ということになる。


3月のバスケットボール大学選手権も、個人的にかなり印象に残った。私は特にバスケットボールのファンというわけではないが、まあNBAなら、今年のように地元のニュージャージー・ネッツが史上最多敗戦記録を作るようなシーズンでもなければ、まあたいていはプレイオフ中心だがそこそこ見ている。とはいえ、大学バスケットボールまでは手が回らない。


しかし一発勝負が魅力のアマチュア・スポーツは、熱狂的なファンも多い。日本で高校野球が人気があるのと同じだ。アメリカでは大学バスケットボールは3月にその熱戦が繰り広げられるため、マーチ・マッドネスと呼ばれ、人々が一喜一憂する。今年はその決勝に、名門デュークと初耳のバトラーという学校が残った。強豪対無名校の対決という、いかにもという組み合わせが気になったので、それならということで第2ピリオドから見始めたのだが、これがまたハリウッド映画もかくやという接戦になった。


最後、30秒残してデュークが60-59と1点リード、逆転を期してバトラーの放ったシュートはリングにはじかれ、ファウルもとられる。デュークは最初のフリー・スロウを決め61-59。2本目は外し、バトラーがリバウンドをとったところで残り4秒。時計が0を刻む寸前にハーフ・コートから放たれたボールはボードに当たり、バウンスしてバスケットに入った、と思った瞬間にリングに蹴られて大きくはね返った。ゴール裏で見ていた観客が身を乗り出して椅子から転げ落ちたり、フロアの上にもんどりうって転がったのが何人もいたし、私も身を乗り出すあまり声を上げてカウチからずり落ちそうになった。


こんな幕切れ、映画じゃあるまいし、あるいは、映画だったらむしろ作り過ぎて陳腐と言いたくなるくらいの劇的な幕切れで、なに、これ、こんなんが本当に起きるわけ? と、ほとんど呆気にとられた。翌日のスポーツ・ニューズは、スポーツに「もし」はないが、しかし、それでも、もしあれが入っていたらという記事で埋め尽くされた。この試合がマンガだったとしたら、「スラムダンク」の井上雄彦が最後の1分間のクライマックスを描くのに3か月かかるくらいのドラマを提供していた。


そして4月のマスターズだ。ゴルフ界の今年の最初のメイジャー、マスターズは、渦中のウッズが今年初めてゴルフ・トーナメントに復帰するということで注目を浴びた他、中継のCBSはこれを新テクノロジーの3Dでも中継するなど、話題を提供した。因みにマスターズはHDTVが普及し始めた頃、画面の美しさを感得できるスポーツ・イヴェントとしても重用されており、この種の新テクノロジーを試されやすい。また、スポンサーを降りなかったナイキが、既に鬼籍に入っているウッズの父の生前の声を利用してタイガーを叱責するというコマーシャルは、気持ち悪いとして悪評が飛び交うなど、ここでも話題を提供した。


いずれにしても今年のマスターズは、さすがに私生活が大荒れでリハブ入りするなど満足に調整できていないと思えるウッズが本気で優勝を狙えるかという点については、疑問視するメディアが多かった。それでも、印象的なショットや運もあり、無事予選を通過するどころかちゃんと優勝に絡み、ファンを喜ばせた。


一方でこれは何、と思わせたのが、カメラが執拗に追っていたウッズの口から、ミス・ショットした時にスポーツマンらしからぬ悪態が何度も漏れ出たのを、集音マイクがはっきりと拾っていたことだ。FxxkとかSxxtとか、完全に放送禁止用語を発していたわけではないが、それでもGodxxmnとか、NBAで聞くことはあってもまずゴルフでは耳にすることのない間投詞を何度も耳にした時は、私も、これはあまり人にいい心証与えないだろうなと思った。今が大事な時なのに。あるいは、ウッズにとっては素の自分をさらけ出して、それを受け止めてもらえるならばという気持ちもあったかもしれない。


その判断が誤りだったのは、トーナメント後のマスコミの論評を見れば明らかだ。CBSでマスターズの実況を行ったのはジム・ナンツで、因みに上記のスーパー・ボウル、大学バスケットボール、マスターズは、たまたますべてCBSが中継しており、そのすべてにナンツが関わっていた。今年のこれまでのスポーツ界は非常に印象的な事件が満載だったので、マスターズでも何か起こるかも、端的に言って、本当にウッズが優勝絡んでまた劇的なドラマを演出するかもと期待していたのは、私だけではなかったはずだ。


賭けてもいいがナンツも絶対何かしら起こることを考えていたに違いない。それが、確かに週末までコマを進め、一時は本気ですわ優勝かと思わせといて、Godxxmnだ。ナンツが心底がっかりしたのは想像するに余りある。普段は紳士的で友好的な態度を崩さないナンツが、マスターズ後、私がもし中継中にマイクを前にGodxxmnなんて言葉を発したら、即クビだ、とウッズに対して苦情を述べていた。本気でウッズに対して怒ったんだろう。結局ウッズは優勝には絡めず、マスターズはそういう意味ではアンチ・クライマックスに終わった。とはいっても中継がちゃんと例年以上の視聴率を稼ぎ出したのは、ウッズ効果以外の何ものでもない。ウッズは、今年ツアーで勝つだけでなく、残り3つのメイジャーのうちどれか一つでも勝たないと、絶対ぼろくそ言われるだろう。


さらに4月は、MLBのメッツ-カージナルス戦で、延長20回で決着がつくというゲームをやっていた。0−0で迎えた19回の表で1点を挙げたメッツは、これで勝ったと思ったろうがその裏に追いつかれ、20回の表にまた1点を挙げてやっと勝った。再試合でもなんでもなく、プロなんだからとにかく決着がつくまでやるという姿勢はまったく正しい。本当はサッカーもそうあってもらいたいが、サッカーって、時に無理矢理白黒つけると本気で暴動や戦争が起こるからな。ここは大目に見るか。


とまあ今年前半のアメリカのスポーツ界、特に球技は、印象的な事件が連続して起こった。特にウッズ・スキャンダルのおかげで、いつもよりゴルフが注目されていた。そういう中、ゴルフ専門のゴルフ・チャンネルが放送を始めたのが、標記の「ビーイング・ジョン・デイリー」と、「ファビュラス・ワールド・オブ・ゴルフ」だ。


「ジョン・デイリー」の方は、ゴルフ界では知らぬ者のない、悪童ジョン・デイリーに密着するリアリティ・ショウだ。かつてゴルフ界に彗星の如く登場したデイリーは、補欠枠で出場したメイジャーのPGAチャンピオンシップで優勝して一躍注目を浴び、さらにメイジャーもメイジャー、最も歴史ある、しかもセント・アンドリュース開催の最も権威と箔のある、ジ・オープンこと全英も優勝して世界をあっと言わせた。常にドライヴァーを振り回す、ティ・ショット350ヤード超の攻めオンリーのゴルフは、シンプルかつ爽快で、見る者を魅了した。


しかしデイリーが人気のある理由はそれだけではない。デイリーが特にアメリカで人気があるのは、周囲におもねることなく常に自分であり続けるプレイ・スタイルに人々が共感するからだ。「悪童 (Bad boy)」という代名詞が常につきまとうように、デイリーはタバコや葉巻をぷかぷかふかしながらプレイするし、プライヴェイトやエキシビション的なゴルフだと、がぶがぶビールを飲んだりホット・ドッグをぱくつきながらプレイする。我々一般人がすることと同じことをデイリーもしている。インタヴュウしても飾らないし正直だ。プライヴェイトでも離婚したりアル中でリハブ入りしたり、妻を殴ってDV報道されたりと色々あった。どう見てもオーヴァーウェイトだが、筋トレやエクササイズしているようにも見えない。それが逆に共感を呼ぶ。


そのデイリーが久方ぶりにツアーで勝った2004年のビュイック・インヴィテイショナルは、デイリーに向かってギャラリーがデイリー、デイリーと唱和して歓声を上げるシーンが非常に印象に残った。ウッズも、世界ナンバー2のフィル・ミッケルソンも、ギャラリーを沸かすし人気も高いが、デイリーのようにギャラリー全員が一致団結してサポートするという感じではない。要するにデイリーは、仲間だと思われている。


ウッズのスポンサーはナイキだが、デイリーのスポンサーは84ランバーだ。木材会社だ。クラブを振ってボールをかっ飛ばすデイリーを映すカメラが後ろに引くと、デイリーが手にしていたのはゴルフ・クラブではなく木材だったというTVコマーシャルは、もういかにもデイリーという感じで、木材会社がゴルフのスポンサーをしているのは、ひとえにそれがデイリーだからだろう。


「ビーイング・ジョン・デイリー」は、そのデイリーのプライヴェイトな生活に密着するわけだが、意外なのが結構デイリーが歌えることで、CDもリリースすると聞いてびっくりだ。私があまり得意でないカントリー系なのだが、ギターを弾いて歌う。うまいというよりも、これもいかにもデイリーらしい率直なシンプルな歌い方なのだが、これまた人柄が出て悪くない。意外な才能だ。それでも、よくも悪くもデイリーは我々と等身大だ。プロだから当然ゴルフはうまいしギターも弾いて歌も歌うが、それでも、ファンはデイリーを家族のように思っている。番組を見るとそのことがよくわかる。


「ファビュラス・ワールド・オブ・ゴルフ」は、正式番組名が「ドナルド・J・トランプス・ファビュラス・ワールド・オブ・ゴルフ」となっているのを見てもわかる通り、不動産王トランプが主宰となって、セレブリティによるマッチ・プレイ・ゴルフを企画する番組だ。セレブリティであってプロ・ゴルファーではない、どっちかっつうと色物企画であるが、時々セレブリティにもプロはだしのゴルファーがいたりするし、そうではなくても他に見所があったりする。


基本的に私は、セレブリティ・ゴルフにはほとんど興味がない。プロとセレブリティがペアを組むことで知られるPGAツアーのぺブル・ビーチのプロ-アマだとか、ボブ・ホープ・クラシックなんてのは、生中継では見ずに録画しておいて、セレブリティの部分はすべて早送りで飛ばす。まったくつまらないとしか思えない。だから「ファビュラス・ワールド・オブ・ゴルフ」にも実はあまり期待してなかったのだが、番組が最初から一級のゴルフという点に焦点を絞っているわけではない場合、スポーツとしてではなく、単にエンタテインメント番組として見ると、それなりに面白くないわけでもないのだった。


例えば番組第1回のマッチ・プレイは、元NFLプレイヤーのジェリー・ライスとローレンス・テイラーとの勝負で、二人共ゴルフはそこそこだが、それよりもプレイの合い間のトラッシュ・トークで相手を動揺させようとするところなんかが面白かったりする。番組第2回は元ボクシング・チャンプのオスカー・デ・ラ・ホヤとコメディアンのジョージ・ロペスで、二人共ラテン系で元々親交があったものと思われる。これも冗談を交えつつ勝負はエキストラのサドン・デスに行っちゃったりして、勝負としても接戦だ。デ・ラ・ホヤなんかさすがアスリートというか、フォームはかなり無茶なのにちゃんとバック・スピンをかけたボールがピンに絡む、なんてショットを打ったりして、感心する。


また、プロも時には、上述のデイリーが、一昨年、トリー・バインズでの全米でウッズと優勝を争ったロッコ・メディエイトと勝負したりもしていた。こういうのにデイリーが選ばれるのは納得だ。ただし、プロなら、今ならワールド・カップの一環であるマッチ・プレイ・チャンピオンシップが存在しており、本気でプロの技術や勝負の駆け引きを堪能するという意味でのマッチ・プレイを見るなら、そちらの方が断然面白い。つまり、「ファビュラス・ワールド」はやはり、エンタテインメントとしての方の比重が高い。そしてそれはそれで面白いと思えたりするのは、私がゴルフ好きだからか。うまい部類だとはいえ、それでも素人の域を出ないセレブリティのゴルフを楽しんでちゃいかんと思いながら、ついついTV画面を見ていたりするのだった。








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ビーイング・ジョン・デイリー   ★★1/2

Donald J. Trump’s Fabulous World of Golf         

ドナルド・J・トランプス・ファビュラス・ワールド・オブ・ゴルフ   ★★1/2

 
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