ベイ・ヒル招待

2002年3月14-17日   ★★★1/2

フロリダ州オーランド、ベイ・ヒル・コース

タイガー・ウッズが初日からずっと首位をキープ、2日目を終わった時点で12アンダー、既に2位のスコット・マッカロンに4打差と、今年初優勝はほぼ手中に収めたか。ウッズはこれに勝てばベイ・ヒル3連勝で、既に99年から2001年まで3連勝しているメモリアルとNEC招待を合わせ、3連勝したトーナメントが3つあるという、PGA記録を作ることになる。


しかしウッズの3日目は、最近こんなに調子の悪いウッズは見たことがなかったという荒れ模様で、スコアを伸ばすどころか逆に二つも落としてしまう。4打差あったマッカロンに一時的にせよ並ばれてしまい、予想していたような楽勝ムードとはまったく異なる展開。マッカロンも後半もたついたおかげで、かろうじて一人10アンダーで単独首位を守るが、どうした、タイガー。しかし、おかげで今年好調のアーニー・エルスも射程距離にいるなど、 勝負としては接戦になるこちらの方が面白いのは事実ではある。


そして最終日、まだ調子に乗れないウッズをつかまえたのは、誰あろうフィル・ミッケルソン。ミッケルソンはフロント9絶好調で、8番パー4でバーディを奪い、その直後にウッズが6番パー5でまさかのボギーを叩いた時点で、ウッズ9アンダー、ミッケルソン10アンダーと、ついにウッズが初めて首位を譲る。これは昨年の息詰まる接戦の再現か。近年のベイ・ヒルは面白いなあ。


ウッズのターニング・ポイントは8番パー4でやって来た。第2打をグリーン奥のバンカーに入れたウッズは、第3打のバンカー・ショットもピンに寄せ切れず、下りの9フィートの難しいパー・パットを残す。ここが勝負どころだということを本能的に察知したのだろう、この辺りからいきなりウッズの顔が変わる。本当に顔が変わるのだ。それまではシリアスじゃないとは言わないが、まだなんとなく余裕でプレイしているように見えたのが、いきなり集中モードに入る。まるで自分のボール以外周りが目に入らなくなったかのようで、こうなった時のウッズはすごい。この9フィートのクラッチ・パットを沈め、それから、それまでぶれていたティ・ショットが決まりだす。


ミッケルソンは、10番パー4でもバーディを奪って11アンダーと突き放しにかかるが、 ウッズは9番パー4、10番パー4で続け様にバーディを奪って、二人は11アンダーで並ぶ。ミッケルソンは12番パー5でバーディを奪って12アンダーとするが、ウッズもやはりこのホールをバーディで続き、どちらも譲らない。しかしミッケルソンはこの日最初のミスを14番パー3で犯してしまう。グリーン奥のラフにボールを入れてしまったミッケルソンは、そこからのアップ・アンド・ダウンに失敗し、ボギー。ミッケルソン11アンダーとなって、12アンダーのウッズが再び首位に立つ。


首位から滑り落ちて焦るミッケルソンの致命的なミスは、16番パー5でやって来た。ティ・ショットを右に曲げてしまったミッケルソンは、16番ティ横に掲げられたリーダー・ボードで首位を奪われたことを知っているので、無謀とは知りつつも木の間からスライスで池越えの2オン狙いに行く。しかし結局ボールは池ぽちゃとなり、ボギー。この瞬間、多分勝負は決した。ミッケルソンはこの16番に次いで、17番パー3、18番パー4と3連続ボギーを叩いてしまい、結局8アンダーとなり、ジョン・ヒューストン、ロッコ・メディエイト、レン・マティースと並び、3位タイまで後退した。


一方ウッズは16番でもバーディを取って13アンダーとし、優勝を確実なものとする。ウッズの続く17番でのティ・ショットは、花道に沿ってスライスをかけるはずが、逆にフックさせてしまい、大きく左にそれたボールは、グリーン左に設けられた仮設テントの屋根に当たり、跳ね返って戻ってラフに落ちる。ツキも完全に味方しているようだ。あと数フィート左ならば、テントの逆側の屋根に当たり、OBは免れ得なかったところである。ウッズのそこからの第2打も直接ピンに当たり、あわや入ったかと思われた。ウッズはパー・セイヴを拾い、続く18番もパーで上がって通算13アンダーでレギュレイションを終え、ツアー史上初の3つのトーナメントの3連覇の3つ目をこのベイ・ヒルで飾ったのであった。


単独2位には、最終18番で難しいチップ・ショットを直接カップ・インさせてバーディを取ったマイケル・キャンベルが9アンダーとなって入った。終わってみればウッズは2位に4打差つけていたのだが、そう開いていた感じはまったくしなかった。これでウッズは単独か同率首位で最終日を迎えた場合、25戦23勝。この逃げ切り率は他に類を見ない記録である。見る方とすれば、逃げ切るウッズより追いかけるウッズを見る方が燃えるのだが、ま、勝負が面白ければいいです。


優勝に関係ないところで印象に残ったのは、最終日のデイヴィッド・デュヴォールの16番パー5で、池越え第3打を池ぽちゃさせてしまったデュヴォールは、ドロップした第5打を是非ともピンそばに寄せたいところだったが、それが完璧であり過ぎ、フラッグに当たって跳ね返ったボールは、またも転がって池に落ちてしまった。フラッグに当たってさえいなければピンそば1、2フィートで止まったベスト・ショットだったのに。結局デュヴォールはこのホール、クアドラプル・ボギーで、可哀想といえば実に可哀想だった。







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