3日目を終わった時点で12アンダーのタイガー・ウッズが、セルジオ・ガルシアに1打差で首位に立つ。ウッズは首位で最終日を迎えた場合、これまで23勝4敗、勝率8割5分と抜群の逃げ切り率を誇る。昨年も同様に最終日最終組で危なげなく勝った。今年も勝負は既に決まったか。しかしウッズは今年10戦してまだ勝ち星がなく、先週もドバイ・クラシックで首位で最終日を迎えながら、最終ホール池ぽちゃのダブル・ボギーで珍しくも逃げ切りに失敗している。ここでまた負けたりしたら、ウッズ・スランプ説が真実味を帯びてしまう。さあてどうなるか。興味津々である。


最終日、ウッズはこれといって調子がいいわけではないが、要所要所で5、6、7フィート当たりのパー・セイヴのクラッチ・パットを何度も決める。ガルシアが6番パー4で池に打ち込んでトリプル・ボギーを叩き脱落したため、勝負はこれで決まったかと思われた。


そしたら集団から抜け出してウッズに絡んできたのは、誰あろうフィル・ミッケルソン。バック9に入り、ウッズが11番パー4でボギーを叩いた時点で12アンダーで二人はついに並び、ミッケルソンが15番のバーディでついにウッズを抜いて単独トップに立つ。ミッケルソン以外にも、今年PGA初出場のグレッグ・ノーマンが3連続バーディを会場を沸かし、ヴィージェイ・シングもまだわからない。今年初めての本当に興奮させる展開になってきた。


しかし最後の最後は、やはり世界ナンバー1のウッズとナンバー2のミッケルソンに絞られる。ウッズは14番パー3で40フィートのロング・バーディ・パットを決めて13アンダーのミッケルソンに追いつくが、ミッケルソンはリーチャブルの16番パー5でもバーディを奪って14アンダーとなり、また突き放す。


この日最初の山場は、ウッズが16番でドライヴァーを左に引っかけ、同じくミッケルソンも18番パー4で右に引っかけた時にやって来た。ウッズのボールは軽いラフに半分埋まっており、ホールまでは池越えの225ヤード。ウッズは昨日も同じホール、バンカーから池越えを狙って池ぽちゃのボギーを叩いており、流石にここは刻んでいくだろうと思った。そしたら6番アイアンで振り切ったボールは、2段グリーンの奥にピンの切ってあるグリーンの、その奥の段に乗り、ピンまで20フィートにつける。そこから2パットで、また二人は14アンダーで並ぶ。


一方、ミッケルソンのボールはマーシャルにデッドに当たって距離を20ヤード損した上に、跳ね返ったボールは完全にラフに埋まっており、いくらミッケルソンでもその位置から池越え207ヤードのフラッグは狙えない。第2打はなんとかグリーン近くまで持ってくるが、それでもまだ次はフラッグまで60ヤードの難しい池越えのショットが待っている。ミッケルソンはそれをあわやカップ・インするかと思われる絶妙のフロップ・ショットで、ピンそば2フィートにつける。大いに湧くギャラリー。ミッケルソンはパーで上がり、そして勝負はすべてウッズの肩に委ねられる。


ウッズの17番パー3のバーディ・パットは、カップの半インチ右に止まり、ウッズ14アンダーのまま18番へ。18番のティ・ショットを、ウッズはまた引っかけてしまう。ギャラリーの後ろに落ちたボールは、バウンス次第ではOBの可能性もあったが、ここでもまた天はウッズに味方し、フェアウェイ側にバウンド、しかもギャラリーの誰かに当たって落ちたボールを、何を思ったか一人の女性が拾い上げてしまった。はっと我に返って慌てて置き直したボールは、カート・パスに近かったためにウッズはボールをフリー・ドロップ。その位置から池越えでグリーンを狙う。


たとえラフに埋まってはいないとはいえ、今度はほとんど芝のない土の上からの190ヤードのショット。グリーンにぴたり乗せることは難しい。しかしウッズは安全策をとらず、池越えでピンをデッドに狙う。おいおい、大丈夫かよ、先週もそれで負けたんだろう、というこちらのドキドキなぞ関係なく、振り切ったウッズの第2打は奇麗な円弧を描いてピンの左15フィートでぴたりと止まる。すげえーっ。ここ一番という時のこの男のショットは本当にスペクタクルだ。いざという時の集中力は、まるで他のゴルファーとレヴェルが違う。その後のバーディ・パットも、全然外す気がしなかった。ミッケルソンも入れてくるだろうと思ったと言っていた。そしてその通り、右に軽くブレイクしたボールはカップに沈み、ウッズがトータル15アンダー、1打差でミッケルソンをうっちゃた。ウッズはこれでこのトーナメント2連勝。いやあ面白かった。久し振りに面白いゴルフを見たので、録画しておいたテープを巻き戻してまたダイジェストで見たくらいだ。今年のPGAはこれまでのところ盛り上がりに欠け、あまり面白くなかったが、マスターズを目前に控え、やっと面白くなってきた。やはり勝負はこうでなくっちゃ。







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ベイ・ヒル招待

2001年3月15-18日   ★★★★

フロリダ州オーランド、ベイ・ヒル・コース

 
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