近年、生の公演ではブロードウェイのミュージカルや舞台より、バレエやダンスの方が気にかかる。ミュージカル/舞台がつまらなくなってきたというよりも、バレエ/ダンスのシンプルな肉体美の方により惹かれるようになってきたからで、私の趣味からいうと、クラシックより断然モダンの方に惹かれる。今回、バレエNYを見に行こうと思ったのも、そういう嗜好をそそる写真が目についたからに他ならない。

元ニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパル、ジュディス・フガテとそのパートナー、メディ・バヒリ主宰のバレエNYの今回の演目は、ジョディ・ゲイツ振付けの「ナウ・アンド・アゲイン (Now and Again)」、アラン・ハインラインによる「カルテット2 (Quartet 2)」、ヘレン・ハイネマンによる「フック-アップ (Hook-Up)」、そしてデイヴィス・ロバートソンの「ロミオ&ジュリエット・イン・マンチュア (Romeo & Juliet in Mantua)」だ。

この中ではトリの「ロミオ&ジュリエット」が、その解釈の斬新さもあり、断然印象に残った。言わずと知れたシェイクスピア作の「ロミオ&ジュリエット」は、悲劇的な結末を迎える恋人同士を描いた古典だ。だが今回、そのロミオとジュリエットが二人ともうまく死んだ振りを演出することに成功、手に手をとって逃げ出すが、新しい町マンチュアで生活して行くのに苦労するというなかなかとんでもない展開を見せる。一方、残された両家でも、最初は和解するのだが、徐々にまたいがみ合って行くという、かなり人を食ったストーリーだ。

感心するのは、これはダンスであり、その物語をセリフを用いずに、身体の表現とセットだけで観客に知らしめていくことだ。私は別にプレイビルを読んでから見始めたわけではないので、どう見てもロミオとジュリエットが薬を飲んだ振りをして無事逃げ出したとしか思えない舞台を見て、オレ、なんか激しくカン違いしていないだろうかと不安になってしまった。

結局舞台はそういうシニカルな話のまま終わってしまう。主眼はダンスだから、こういう筋立てに対して特に不満があったとか逆に評価されたなんて話も聞かないが、私は面白かったし、ダンサーたちも頑張っていたと思う。特に小柄ながら愛嬌を振りまいていた彼は、会場からも大きな拍手をもらっていた。しかし、ジョイス・シアターはチェルシーの真ん中にあるそれほど大きくない、わりと地域に密着した劇場なので、この日もわりと家族連れが多く、子供たちも大勢見に来ていた。「ロミオ&ジュリエット」自体まだ知っているかどうかわからない子供たちが、今回の皮肉の利いた新ヴァージョンを見てどう思ったのか、その辺はちょっと訊いてみたい気もする。


Now and Again
Dancers: Melissa Morrissey, Anitra N. Nurnberger, Dorothy O'Shea Overbey, Bonnie Pickard...

Quartet 2
Dancers: Allyson Ashley, Lindsay Purrington, Stacie Williams...

Hook-Up
Dancers: Lindsay Purrington, Donald Williams

Romeo & Juliet in Mantua
Dancers: Melissa Morrissey, Matthew Prescott, Donald Williams, Riley Watts, Duncan Cooper, Bonnie Pickard...




 

Ballet NY    バレエNY

(2005年7月8日)
ジョイス・シアター

 
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